「昌ちゃんの演劇だより」カテゴリーアーカイブ

H29 大田市波根で現代劇『ちゃんぽん』上演(観劇記)

5/14、波根町で『ちゃんぽん』(ユン・ジョンファン作、津川泉訳、演出・金築秀幸)が上演されました。チラシに「ニルソンカフェ」で上演とありましたが、旧石原旅館の舞台付き広間でした。カフェは同じ屋敷内にあります。旧旅館は、以前何回か行ったことのある懐かしい場所ですが、久しぶりに行ったので行きすぎて迷い、引き返して人に尋ねて、やっとたどり着きました。波根駅のすぐ近くでした。

なんといっても嬉しかったのは、劇場やホールではなく、普通の広間で現代劇を上演されたことです。会場を貸し出されたヒラタさん、上演を決意された劇団フレンズ装置の皆さんの心意気に感銘を受けました。ホールなどで上演すれば大金が必要です。前売り券も何千円になり、事務的な仕事や苦労も倍増。長続きしません。気軽に発表出来る場が必要です。「飲み物や食べ物は厳禁です」ではなく、「ビールでも飲みながら観劇してください」と、入口で飲み物や菓子類も販売されていました。いいですね。本来日本の地芝居は石見神楽と同じです。観客と共に楽しむ場です。うまく演じれば自ずと観客は静かになります。

脚本は韓国戯曲作家協会戯曲部門新人文学賞を受賞した作品で、多数の死傷者がでた1980年5月の光州事件を素材にした劇ですが、政治的な大事件を、「春来園」という小さな料理店で働く庶民の立場で、うまく絡ませて描いていました。店主ジャンノと恋人ミラン、ジャンノの妹で店員ジナ、その恋人マンシク。ケンカもしながら、みな普通のささやかな夢を持って生きていますが、次々と大事件に巻き込まれていきます。突拍子もないマンガチックな場面も多いのですが、それを重ねて、「普通の夢が失われていく悲しさ」を舞台にあぶり出していきます。三人を失った店主のジャンノが回想するラストシーンは感動的でした。ジャンノの目にも涙があふれていました。好演でした!

劇というものは、あくまでフィクションで作り物で嘘ですが、その「嘘」から「真実」(うそからまこと)を創り出すのも劇です。おもしろおかしく奇想天外なフィクションを積み重ねてお客さんを楽しませて引っ張り、その中から一つの真実を紡ぎ出し突きつける ー そのうまさを見た気がしました。

劇では、劇への切り換えがなんとなく進んだことや、出だしの演技やセリフにも日常性がありすぎて、普通の人が劇じみたことをしている感じがしましたが、ストーリーが展開しテーマとのからみが見えてくるにつれて、だんだん迫真力が出てきて、それぞれの人物にも血の通った人間性が見えてきて、展開とともにそれが統合され、最後は感動的でした。発声や滑舌にはちょっと個人差がありましたが、スピーデーにセリフ喋り、言葉がわかる点ではかなり練習を積み重ねておられると思いました。

出雲や雲南では、最近特に、若い人たちの演劇活動が活発になりましたね。その余波が津波のように波根まできたのでしょう。大田よ!どがするだ。

帰るときに、ヒラタさんが、「ここで朗読をやりませんか」と声をかけられました。そのうちニルソンカフェへ行ってゆっくりコヒーでもビールでも味わいながら話してみましょう。

みなさん、おつかれさまでした。いろいろな意味でとても刺激になりました。ありがとうございました。
(ブログ 詩の散歩道 観劇記 すはま)

H29,3/26 出雲高演劇部OB現代劇公演(お知らせ)

3月26日、ビッグハート出雲で意欲的な現代劇が上演されます。題は『青のフィラメント』(いとうけいすけ作・演出)です。上演するのは「パルメザンチーム」。出雲高校演劇部で全国大会にも出場した3人の大学生が結成した演劇集団です。14時~、18時~、2回上演されます。大人1000円。
青のフィラメント 裏
前回の『僕たちは、劇の中で』を観劇にいきましたが、若者の意識の世界を舞台化した抽象的な会話劇でしたが、とても新鮮でした。島根でこのような現代劇を観る機会はほとんどありませんし、演劇を専攻している大学生が、どんな意識で劇を創ろうとしているかに触れて学ぶところが多々ありました。
昨年春の公演をブログで紹介していました。興味があれば、どうぞ。
http://stagebox.sakura.ne.jp/blog/2016/03/16/h28318-ビッグハート出雲で若者3人舞台創作劇/

山陰中央新報でも紹介していました。この前は松江地区、出雲地区の高校演劇発表会も取り上げています。ありがたいことですね。今年になって文化欄でも郷土の出版詩誌を紹介しています。長い間無かったことです。要望もしていましたが、何十年振りの復活です。PRとしても記録としても、とても貴重です。うれしいことです。

DSC07752問い合わせは、パルメザンチーム 090-5261-9395(いとう)です。

H29,3 高校演劇松江、出雲地区合同公演(案内)

島根高校演劇事務局から案内がきました。松江地区合同公演は3月19日しいのみシアターで、出雲地区合同公演は25日ビッグハート出雲で開催されます。チラシをどうぞ。松江地区は22回、出雲地区は15回。貴重な歴史を重ねてきました。この合同公演で切磋琢磨しレベルを上げてきたのでしょう。
H28出雲合同公演チラシ

演出、演技、感動、面白さなど中国地区でもハイレベルな舞台はきっと観客を飽きさせないことでしょう。プロにはない新鮮な舞台を楽しんでください。今日の山陰中央新報でも写真入りで詳しく紹介しています。(オマエサンイクノダロウナ。ソレガ、ヤマタノオロチとカサナッテ。ゴメン)

H28松江地区合同公演チラシ

H28 岡山明誠学院 全国大会へ (高校演劇中国大会)

高校演劇中国ブロック大会は11月27,28日、総社市で開催されました。島根からは松江工業、三刀屋高校が出場しました。岡山の明誠学院はいつも緻密で斬新な演劇を上演していましたが、最優秀賞を受賞、来年の全国大会へ出場します。山口県の光高校も常に魅力的な劇創りで定評がある伝統校です。

島根県大会で上演した松江工業、三刀屋高校も大変いい舞台でしたので、それを抑えて代表になったということは、レベルの高い大会だったことが想像されます。劇研「空」の公演があって行けませんでしたが、以前観劇した螺子頭漸蔵先生の舞台装置、演出、演技など強烈に印象に残っています。久しぶりに観たかったな。(ネジアタマさんは大田と深い関係があるのだ)全国大会での活躍、楽しみにしています。
dsc07508

最優秀賞 文部科学大臣賞 総社市長賞
岡山県
明誠学院『警備員 林安男の夏』 作: 螺子頭斬蔵

優秀賞 全国高等学校演劇協議会会長賞 山陽新聞社賞
山口県光丘高校『みえない、いと』 作: 緋岡 篝

岡山県教育委員会教育長賞
   島根県  松江工業高校『僕と先生(仮)』 作:伊藤 靖之

総社市教育委員会教育長賞
三刀屋高校『笛男~フエオトコ~』 作:亀尾佳宏

創作脚本賞
    有末 ナツキ 『僕の紅茶に入れるもの』
岡山の末安先生が作られた大会結果をPDFで紹介します。
taro-%e7%ac%ac%ef%bc%98%e5%8f%b7%e3%83%bb%e5%af%a9%e6%9f%bb%e7%b5%90%e6%9e%9c

島根県代表、松江工業と三刀屋高校の劇の紹介です。
taro-%e7%ac%ac%ef%bc%95%e5%8f%b7%e3%83%bb%e6%94%b9-%e5%b3%b6%e6%a0%b9%e7%9c%8c%e4%bb%a3%e8%a1%a8%e7%b4%b9%e4%bb%8b

【ブログ 詩の散歩道 高校演劇 すはま)

H28 松江工業 三刀屋高 中国大会へ(高校演劇県大会)

第40回高校演劇島根県大会は9校が参加して加茂町のラメールで行われ、松江工業と三刀屋高校が最優秀賞を受賞し、中国大会への出場が決まりました。充実したレベル高い大会でした。中国大会は11月26,27日、総社市総合文化センターで開かれます。
dsc07549%e3%83%a9%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%83%ab(ラメールです。童話に出てくるような夢のあるおもしろい建物ですね)

島根県大会 雲南市加茂文化ホール ラメール
 横田『眠れる森の少女』(作:伊藤靖之)奨励賞
松江農林『めろん』(作:高橋幸雄)、
松江商業『Canon~大きな桜の樹の下で~』(作:伊藤靖之)
三刀屋『笛男~フエオトコ~』(亀尾佳宏) 県代表
松江北『桶屋はどうなる』(作:三輪忍)
松江工業『僕と先生』(作:伊藤靖之) 県代表
情報科学『トシドンの放課後』(作:上田美和)、
明誠『修学旅行』(作:畑澤聖悟)、
出雲『カケル』(作:出雲高演劇部)創作脚本賞

1-%e6%a8%aa%e7%94%b0%e9%ab%98 2%ef%bc%8e%e6%9d%be%e6%b1%9f%e8%be%b2%e6%9e%97

横田高は一年の松田さんの一人芝居。大健闘です。顧問の伊藤先生が出雲から転任した最初の創作で参加。どうなるかと思っていましたが、さすがですね。情熱があれば一人でも参加できる!見本です。発音もきれい。単調になりがちな一人舞台をうまく照明や音楽を生かしていました。松江農林高は、「笑って泣かせる劇」を皆さん達者に演じとても楽しい舞台でした。発声もよく言葉もよく分かりました。装置も手を抜かず工夫してありました。登場しない父の扱いが重要な影の役をしていますが、その扱いに工夫が欲しかった。松江商業高校の部員は36名!すばらしい。きっと部活動に惹き付ける楽しさや魅力があるのでしょう。舞台にも多くの人が出て転換も多いのですが隙間のない処理や展開はみごとでした。脚本は入れ子構造になっていて複雑。部分ごとの面白さはうまく演じて美事なのですが、全体を貫く太い骨がほしい気がしました。
4%ef%bc%8e%e4%b8%89%e5%88%80%e5%b1%8b

三刀屋高は亀尾先生の旧作『笛男~フエオトコ~』。平成15年27回大会で松江工業が上演したのを観ていますが、とても素敵な劇でした。このところ三刀屋は脚本選択に苦心していましたが、男性も入って選択の巾が広がり、部員の力量が生かせる脚本に出会うことができました。音響、照明、演技、演出など総合的に完成度の高いとてもいい舞台でした。子どもって残酷なんですね。それを意識していないだけ。なつかしい世界がほろ苦く蘇ってきます。人間関係が少しぼかしてあるのは意図的かそれとも観客の理解不足か、そんなところも議論になりました。

5%ef%bc%8e%e6%9d%be%e6%b1%9f%e5%8c%97松江北高の劇は舞台にゴミの山。劇はとても抽象的で分かりにくいのですが、ゴミという具体がリアルで生きていました。衣裳なども工夫してあり、少ない部員でよく頑張ったという声がありました。
dsc07512松江工業は3年連続中国大会出場。舞台装置や演技、演出など総合芸術として完成度の高い舞台でした。よく上演される有名な既成の脚本ではなく、あまり知られていなかった伊藤作品を美事に舞台化して新鮮な劇にして見せてくれました。発声や演技も安定し、さらに意表を突く舞台装置が劇を新たな世界へ展開し深化させるという美事な舞台でした。男性が多いので無理のない自然な発声が抵抗なく届きます。「批評とユーモアは裏腹の関係」と詩を書く時、よく思うのですが、この劇でもそのことを何度も思いました。単なる笑いではない。伊藤作品には批評眼が裏打ちされているのです。
dsc07517
情報科学高は全国でよく上演される『トシドンの放課後』おとなしい不登校生と問題の多い女性徒を同じ部屋に居らせることによって起こる心理的な変化を劇にしたものですが、真反対の正確の男女が親近感や共感を持つようになる微妙な過程がうまく演じられないと感動は薄くなる。二人の位置、先生の言葉など細かい演出が必要だと思った。一般の人たちには感動があったかと思う。
石見部から唯一出場した益田市の明誠高校。演劇同好会が生まれ(高校演劇で活躍した村上彩音さんが先生になって着任し同好会が生まれた、いや、ウンダ)演劇部になって多分一年。そんな短期間にここまでの舞台を創りあげるとは美事!いや、感動的!です。10人以上舞台へ出るのですが、みんな堂々と演じ声もよく通りました。先生を戯画化し過ぎて笑いの対象として演じたところに違和感がありましたが、その男性も堂々と演じていて楽しかった。今後が楽しみです。

9%ef%bc%8e%e5%87%ba%e9%9b%b2%e9%ab%98

伝統のある出雲高は顧問の伊藤先生が横田へ転任。どうなるだろう、と思っていましたが、部員の皆さんが力を出し合って新鮮な創作脚本を創り、舞台でも自信をもって堂々と演じました。出雲高の舞台はいつも役者の足が地に着いている(ヘンダナ?床に着いている?コレモヘンダナ)ので安心して観ておれます。この劇も照明、音響、演出を含め、しっかりした舞台でした。劇がはじまって36分過ぎたごろからストリーが動きはじめ展開する。そんなまどろっこしさがあった。Ⅰ時間の劇では10分以内にテーマが展開しはじめないと、結局、遊びに付き合わされることになる。理想的には、ストリーと遊びは同時に展開したいものです。創作ではどうしても別々になりがちですね。(おもしろい場面はつい調子に乗って書きすぎてしまうので)演出の観点から、ちょっと第三者の目が入れば、不確かなところが明確になったり、展開に関連性が生まれたり、完成度が高まったかと思いますが、皆さんが知恵を寄せ合ってつくりあげた新鮮な舞台だったことは確かです。

九校の劇を簡単に紹介しました。今回の講師は昨年につづき、大島宏美、洲浜昌三、審査員は木村文明、勝部加緒里、神山正博先生でした。審査ではあまり意見が異なることはなく代表校を決定しました。中国大会を大いに楽しみにしています。

みなさん、おつかれさまでした。

H28 第40回島根県高校演劇大会ラメールで(10/29,30)

開会式が終わって、10時からはじまります。今年は9校が上演。石見部からは益田の明誠高校が出ます。今年も大島先生とすはまくんは講師ということで参加します。中国地区大会を突破できるような劇が出てくるかどうか、楽しみです。参加校を上演順に紹介します。(写真は演劇と無関係です。淋しいので入れただけ。関係あるとすればラメールへ行く途中の農村風景と劇のような素晴らしい夕陽)
dsc07367
10/29日 横田高『眠れる森の少女』、松江農林『めろん』、松江商業『Canon~大きな桜の樹の下で~』、三刀屋高『笛男~フエオトコ~』、松江北高『桶屋はどうなる』
10/30    松江工業『僕と先生』、情報科学高『トシドンの放課後』、明誠高校『修学旅行』、出雲高『カケル』(9:40~開始です。)

伊藤作品が横田、松商、松工と3校、亀尾作品が三刀屋です。『トシドン』と『修学旅行』は平成17年八戸市で行われた全国大会で上演され『修学旅行』は最優秀賞を受賞しました。おもしろくしかも素晴らしい舞台でした。審査員で参加したのですが圧倒的でした。その後もあちこちで上演され、青年劇場も手を入れて上演しています。作者の畑澤聖悟さんは今年の広島県大会でも素晴らしい劇を上演されました。
さて、今度の大会はどうでしょう。楽しみです。入場無料です。気楽に観劇にきてください。

29日には大田三中が文化祭で全校生参加劇『ヌチドチカラ』を上演します。劇研「空」のメンバーで2回指導に出かけました。生徒さんたちは大変がんばっています。応援してください。沖縄の戦争を描いた意欲的な劇です。

 

H28 全国高校演劇 広島大会の観劇と・結果

第62回高校演劇全国大会は広島のアステールプラザで、8月1日~3日開催されます。全国高演協事務局から案内が来ましたのでお知らせします。

広島は近いのでぜひ行きたい!という人も多いことでしょう。でもそのまま行っても入場できません。観劇希望者が多いので、申し込みが必要です。往復葉書で6月24日が必着〆切になっています。詳細は「2016ひろしま総文Webサイト(hiroshima-soubun.jp)で調べてみてください。往復葉書の書き方が説明してあります。
DSC07278すはまくんは申し込みをする予定です。中国地区からは開催県代表として沼田高校の『そらふね』(黒瀬貴之作)と中国ブロック代表で舟入高校の『八月の青い蝶』(周防柳 作、須崎幸彦 潤色)が上演します。共に高校演劇伝統高です。期待しています。

高校演劇も以前と少し違ってきている印象を受けます。それを確かめてみたいと思っています。話しはトンデ、今年の島根県大会は10月29、30、ラメールです。

・・・・・・大会がおわりました。それぞれすばらしい舞台でした・・・・・

(夜の原爆資料館です。長い間座っていました)

DSC07359
久しぶりに全国大会を観劇しました。1日目の夜には劇作研究会の総会・懇親会があり、これまた久しぶりに参加し懐かしい方々にお会いしました。

                               第62回 全国高等学校演劇大会審査結果 
(優良賞以下は上演順です)

最優秀賞:『Is(あいす)』 岐阜農林高校演劇部/作 岐阜農林高校
優 秀 賞: 『アメイジング・グレイス』 畑澤聖悟/作 青森中央高校
『幕が上がらない』 伊東高校演劇部・加藤剛史/作 静岡県立伊東高校                            『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』
オノマリコ/作 埼玉県立芸術総合高校

優 良 賞: 『そらふね』 黒瀬貴之/作 広島市立沼田高校
『常呂からTOKORO culer 』演劇部・新井繁/作 北見北斗高校
『八月の青い蝶』 周防柳/作 須﨑幸彦/脚色 広島市立舟入高校
『その時を』 演劇部/作 北海道清水高校
『ボクの宿題 』いやどみ・こ〜せい・演劇部/作 県立佐賀東高校
『2016』 よしだあきひろ/作 徳島県立阿波高校
『扉はひらく』 出口耕士朗・藤井良平/作 和歌山県立串本古座高校
『双 眼 鏡」 河野豊仁/作 山梨県立白根高校

舞台美術賞 :『八月の青い蝶』 広島市立舟入高校
創作脚本賞 :出口耕士朗・藤井良平 『扉はひらく』
内木文英賞 :広島市立沼田高校

DSC07350

浜田の岩町先生(全国高演協顧問)も来ておられましたが、「久しぶりに高校演劇を観たけど以前とは随分違うね」と言っておられました。確かにそうですね。

部屋の中でじっくり親子の葛藤を見せる ー というような劇は少数です。身体訓練や演技力はもちろんですが、舞台空間の使い方がとてもうまく、演出に工夫があり多彩で観客を惹き付けます。舞台に多数のキャストが登場しても、その動きがダイナミックで迫力があります。スポーツ感覚が生かされ、音楽や音響の使い方も的を射て洗練されています。しかも劇のテーマもしっかり押さえて演出されているので、拡散感覚と同時に凝集力もあり、感動があります。ひとことでいえば、総合力に優れています。岐阜農林、青森中央の劇を観ながら圧倒されました。

DSC07375
舟入高校の劇には舞台美術賞が贈られました。光の当て方や装置の転換に職人的な技巧を感じました。ちょっと真似ができませんね。沼田高校は内木文英賞。原爆を継続して追求してきた意義を評価されたものです。

全国大会の運営は大変です。それをスムーズに運営された広島の顧問や演劇部員のみなさん、おつかれさまでした。とってもいい大会でした。(ブログ 詩の散歩道、高校演劇 すはま)

 

 

 

H28, 8/1~3 広島で全国高校演劇大会

平成28年度の全国高校演劇大会は広島のアステールプラザで開催されます。中国地区の代表校は舟入高校で「8月の青い蝶」を上演します。この作品は周防 柳氏の原作を顧問の須崎幸彦先生が脚色されたものです。

H28 全国大会 広島
開催県代表として沼田高校が「そらふね」を上演します。顧問の黒瀬貴之先生の創作です。全国高校演劇協議会事務局長の阿部 順先生から案内がきましたので、そのチラシから各地区の代表校を紹介しました。(見えにくいね!)

アステールプラザは平成3年に大田高校演劇部が「星空の卒業式」(洲浜作)を上演したホールです。広島で原爆劇を上演する怖さを味わいました。一瞬のうちに街が崩壊し多くの命が失われたという厳粛な現実に、劇は絵空事に思えて、「この町では告発ではなく鎮魂しかない」と思った記憶があります。

3月19~21日には北海道の伊達市で第10回春季全国高校演劇研究大会が開催され、中国地区から市立福山中学・高等学校が出場します。愛DSC07123知県立蒲郡東高校は「ぽっくりさん」を上演します。この作品は平成15年に松江工業高校が全国大会に行った時の作品で、亀尾佳宏先生の創作です。

いい作品は残っていきます。うれしいことです。黒瀬先生の創作も最近ではあちこちでよく上演されます。須崎先生は原作をうまく生かして緻密な劇に仕立て上げる力量を持っておられます。どんな舞台になるか楽しみですね。

中村 学著『笑う門にはいい介護』紹介

大田市の中村 学さんがタイムリーな本を出版されました。出版された時に贈呈を受け、その夜にすぐ読了してお礼の手紙を書いて届けました。自分を飾ることなく事実や思いが率直に語り口調で書かれていて、とても読みやすく、しかも胸を打ち参考になる言葉にあちこちで出会います。
表紙 中村学「笑う門には~}

刊行されたのは2013年11月ですが、先日大田の本屋さんへ行くと、『笑う門にはいい介護』がたくさん展示してあり、うれしくなりました。一時的なブームに乗った一過性の本ではなく、介護について基本的な心構えを書いた本ですから、本屋に長い間、置いてある価値や意味が大いにあります。

本の中でも書いてありますが、宮根誠司さんとは小学校時代からの兄弟のような友達。二人とも人を笑わせることが大好きだったとか。大田高校を卒業して学さんは演劇やお笑いの道に進みました。1994年に東京吉本興業のオーデションに合格し芸人としての道を歩き始めたとき、母親の介護のために帰省。そこから介護地獄がはじまりました。

それを克服したのが、地域で介護の話を頼まれて話したことがきっかけでした。8年間イライラを母親へぶつけてきた「反応」から一拍置いて「対応」する客観性を取り戻すことができるようになったのです。ここには学さんが、お笑い芸人として如何にして独自の種を見つけそれを表現して観客を笑わせるかという苦労と努力が、栄養を蓄えた竹の根のように生きてきた!と僕は思い感動しました。芸術である演劇が持っている「自己客観視」や「遊びの精神」です。

学さんは1913年には大森で劇研「空」の創作民話劇『出口がない』に出演していただきましたし、2014ねんにはサンレディで講演した創作劇『サクラさんんの故郷』にも出て退職した先生役を見事に好演していただきました。学さんがいると練習の雰囲気が明るくなるのがとても嬉しかった。姿勢が前向きだからです。

その後も出演をお願いしましたが、多忙を極める毎日で実現しませんでした。現在は仕事も多忙ですが、県内、県外から講演の依頼を受けて飛び回っています。笑いの絶えない楽しい講演の中で、大切なことを自然に学べるところが学さんでなければできないところです。素敵です。これからますます活躍されることでしょう。

H27 松江工業、松江南高演劇部中国大会へ

2015年11月2,3日、雲南市のラメールで第39回島根県校校演劇発表大会が行われ、松江工業高校、松江南高校演劇部が最優秀を受賞、今月21,22日に広島のアステールプラザで開催される中国大会へ出場します。

DSC06963

工業は成井豊・真柴あずさ作品『すべての風景の中にあなたがいます』をテンポ良く演じ劇つくりでは一歩抜きんでていました。発声もよく言葉もよくわかり、うまくつくられた舞台でたくさんある場面を流れるようにうまく処理して展開しました。

松江南は『サチとヒカリ』(越智 優作)を熱演しました。卒業できるかできないか分からない不良少女2人をどのように演じるか、簡単なようで難しい。不良を演じたら不良にならない、とぼくは言いましたが、何になるかといえば不良の戯画化、漫画化になり、面白く笑える対象の不良になります。実際に何度も笑いが起きました。面白くて笑えるというのは現在は主流でもありますし、恐ろしさはでてきませんが、それはそれで一つの演出の仕方です。講評でそのことをいいましたが、面白く見せることが評価されたのでしょう。心を閉じて言葉が通じず行動だけが先走る不良が、生徒相談員にならされたらどういうことになるか、ぼくはそんなことを考えていました。

その他の劇についてはそのうち感想を書くかもしれませんが、忙しいのでここでは簡単な報告だけにしておきます。写真が1枚ありましたので紹介します。出雲校の『桃田廊下を走る』実にエネルギッシュなパワーのある面白い舞台でした。題からしてとても面白い。役者も達者でした。観客の意表をつく場面が次々展開され楽しい舞台でした。分かりにくい、乱雑、という批評が多く代表にはなれませんでしたが、なっていたら中国大会でパワーを爆発させ存在感を発揮したことでしょう。一定のレベル以上の劇になると順序をつけるというのは残酷ですね。

DSC06959
パンフレットに書いた文章を紹介します。

「小説のことば 詩のことば 劇のことば」

全国(中国、島根)高校演劇協議会顧問
研「空」代表、日本劇作家協会会員
洲 浜 昌 三
「なぜ飽きもせず40年以上も演劇や文学に関わりつづけきたのだろう?」と、ふと考えることがあります。一つは「表現の楽しさ」にあるのかもしれません。
最愛の人を失って、「泣くこと」だけが悲しみの表現ではありません。場合によっては、「高笑い」が最高に悲しみの表現にもなり得ます。一つのことを表現する方法は実に多様です。「バカ!」は、叱責や軽蔑だけでなく、愛情表現にもなります。新鮮で最も適した表現を見つけたときの喜び。それがぼくに演劇や文学をつづけさせているのかもしれません。

先日、改めて「ことば」について考える貴重な機会がありました。9月に「しまね文芸フェスタ2015」を県民会館で開催しました。今年は悲願だった 詩人の谷川俊太郎さんを講師に招き、「わたしのことばさがし」というタイトルで1時間半舞台で対談しました。ぼくが代表になっている劇研「空」の6人も谷川さんの詩を10数編朗読しました。

対談の冒頭で、「自己紹介」という谷川さんの詩を谷川さん本人に朗読していただきました。谷川さん自身を自分でリアルに紹介した詩ですが、その中に「こうして書くとどこか嘘っぽい」とありますので、「なぜ嘘っぽいのですか」と聞きました。 要約すると答えは次の通りです。

「ことばの背後にある実態には宇宙の始まりからの長い歴史があります。しかしことばはそのほんの一部しか表現できません。自分のことを正直に書いているようでも、それはほんの一部だけです。だから嘘っぽいのです」

確かに「ことば」は実態の説明です。小説は説明(描写)が基本です。しかし詩や演劇では説明は敵です。最愛の人を失った悲しみを「ことば」で説明すればするほど、悲しみの実態から遠くなります。「ことば」の限界と宿命です。しかし詩は「ことば」で表現しなければ成立しません。谷川さんの詩の中に「詩に近づこうとしてはいけない 詩に飛び込びこまねば!」という詩句があり、とても示唆に富んだ象徴的な「ことば」です。

これを飛躍して演劇に当てはめてぼくのことばで翻訳すれば、こうなります。「ドラマに近づこうとしてドラマを説明しようとしてはいけない ドラマに跳び込まねば!」 演劇は「ことば」以外でも多彩な表現ができるところに魅力と可能性があります。それが如何に充実しているか。
今年もみなさんの創意工夫に富んだ舞台を楽しみにしています」

今回の劇は、なぜか上記のような視点から各校の劇を見ていました。そうすると今までにないものが見えてきました。特に台本についてそれを思いました。

DSC06960

ちょっと重い心を抱えて、ラメールから斐伊川土手を運転して帰りながら、きれいな夕景に出会いました。車を止めてパチリ!いい風景に出会うと、心が和みます。