「高校演劇」カテゴリーアーカイブ

H25 出雲校演劇部全国大会前に浜田で上演

出雲高校演劇部が創作劇「ガッコの階段」(伊藤靖之作)で、8月上旬に長崎で開催される全国大会で上演することはこのブログでも紹介しました。今年度は特別枠があり、沼田高校も中国地区代表として参加します。

8月13日に第8回島根県高校文化フェステバル(高文連主催)が浜田の石央文化ホールで開催され、出雲高の劇も上演されると聞き、楽しみに出かけました。前日には季刊「高校演劇」でじっくりと伊藤さんの脚本を読みました。2時過ぎから上演だと聞いたので、12時半に出発。1時間10分あれば十分、と余裕綽々、風景を楽しみながらゆっくり運転し、途中でも道草を食ったり、到着してもゆっくりと絵画や写真などの展示を鑑賞しました。2時過ぎになったのでホールへ入ろうとしたとき・・・

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キムラさんとばったり。「出雲高は何時から?」と聞いたら、「1時半から始まっていますよ」!!!なんというこっちゃ・・・

終わりの20分ばかり見ました。舞台中央に高い階段があり、それをのぼるかどうか、のぼってどこへいくのか、のぼれば何が見えるのか、のぼりたかったにのぼれなかった大勢の人たち・・・・

のぼろうとして波に流されていった大勢の人たち・・・劇はその場面でした。なかなか工夫し象徴的な舞台から訴えてくるものがありました。(いつものことながら高校生が声を張り上げると、キンキン声になり、言葉が聞き取りにくく、キンキンが耳に響くのが難点でしたが・・・)

「高校演劇 長崎大会上演特集号」から出雲高の舞台写真が載っているページを紹介させていただきます。
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poetic でsuggestiveな舞台でした。イメージをどう表現するかということは詩や演劇の基本的な要素です。しかし劇は人間や舞台など具体を通して表現しますから、抽象的なイメージだけでは観客の心に届かないことがあります。そこが難しいところです。脚本の前半にも、「階段を必死でのぼろうとして登れなかった人たち」のイメージを布石として置いておけば、各場面のイメージがバラバラにならずもっと統一されるかもしれません。(終わり20分しか見てないのに勝手なことをいうな!そうでした。すみません)

同じく、広島県立沼田高校の写真を紹介します。顧問の黒瀬貴之先生が翻案された脚本です。沼田高校も久しぶりの全国大会ですね。

H25 長崎大会沼田高校写真

 

H25 長崎全国大会

出雲高の劇が終わって、ロビーで亀尾先生と出会い、いろいろ話しました。

亀尾先生の劇や脚本のことはこのブログで何回も取り上げていますが、「脚本「三月記」』を読む」はコンスタントに検索して読まれ、グラフの上位を占めています。なんでかな、なんでだろう、といつも思います。「創作について」もよく読まれています。役に立てば、このブログも喜んでいることでしょう。(グラフは毎日ごとにでるようになっています。普通は全体で毎日40から80くらいアクセスがあります)

長崎大会の時には劇作研究会の総会や、高校演劇研究協議会の総会もあり、案内がきましたが、残念ながら欠席通知をだしました。島根の顧問の先生方からじっくり聞くことにしましょう。

出雲高校演劇部のみなさん、沼田高校演劇部のみなさん、「肩の力を抜いて伸び伸びと」がんばってください。イトウさん、電話ありがとうございました。観客や講師の先生方の感想を楽しみにしています。

劇作家協会会報で亀尾さん紹介

日本劇作家協会は会報として「ト書き」を発行しています。その50号に島根の亀尾佳宏先生が「高校演劇の創り手たち」として4ページにわたって紹介されています。インタビユーは工藤千夏さん。

 

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亀尾先生が松江工業高校の演劇部顧問になってからのことはだいたい知っていますが、それ以前のことはぼんやりとしか知りませんでした。大学時代に演劇をやっていたことが大きな財産になっているようです。大変おもしろく読みました。

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このブログでコンスタントに高率でよまれているのは、亀尾さんが書いた創作劇・「三月記を読む」です。いつもグラフで上位に頭を出しています。また「創作劇について」もよくグラフで頭をだします。高校演劇の脚本選定時期になると余計、検索する人が多いようです。何かの役に立てば幸せです。

日本劇作家協会は現在会員が500名ばかりです。僕も会員の一人ですが、会員は「自らを劇作家と認めた人」です。その条件さえ満たせば、誰でも入会できます。劇作家集団らしいく自由でいいですね。入会金は3千円、年会費はⅠ万2千円です。

中国地区の支部もあり、以前鳥取市でシンポジュームを開いたことがあります。東京は遠いので総会や新人戯曲賞授賞式、リーディングなど様々な催しに参加していませんが、会報やインターネットなどで情報を得られるのが目下の特典です。あなたもどうぞ。

H24 出雲高演劇部最優秀賞 全国大会へ!

速報です!号外でーす!またまた快挙でーす!
11月23,24日、山口県の周南市文化会館で開催された中国地区高校演劇発表大会で出雲高校演劇部の創作劇「ガッコの階段物語」(伊藤靖之作)が最優秀賞に選ばれました。今年は2校全国大会へ行ける枠があり、広島の沼田高校とともに来年夏に長崎県で開催される全国大会に出場するそうです。

松江工業高校の「贋作マクベス」(中屋敷法仁作)は三位に相当する賞を受け、来年春に福島で開催される春の全国大会へ出場することに決まったとか。これまたスゴイ快挙です。この春には安来高校が出場し、富山で行われた夏の全国大会には三刀屋高校が出場しました。

以上のニュースは先程大会を終えた出雲高校の伊藤先生が電話で知らせてくださったものです。今年の県大会は石見演劇フェスタとピタリと重なり、残念無念、観劇することができませんでしたが、出雲高校の脚本の概要を浜田で聞いたとき、今日の予感がありました(アトズケダ!チョウシニノルナ!イヤイヤ ノンノン ホントウデス)。今までの出雲高校のみなさんの洗練された演技や舞台を知っていますし、伊藤さんの脚本の魅力も昔から知っていました。今回はその脚本がさらに工夫され、誰もができない東北大震災を暗示させる舞台だったとか。昨年の劇に今回の劇の萌芽がありました。

中国地区事務局長・沼田高校の黒瀬先生や島根の事務局長・伊藤先生から丁寧な中国大会の案内がありましたが、これまた日にちが重なり大分県へ6人の中学の同窓生と行くことになっていて、残念無念、中国大会には行けませんでした。

みなさん、おめでとうございます。おつかれさまでした。

 

末安 哲著 『わたしの高校演劇』刊行

2011年1月、岡山県の末安哲先生が『わたしの高校演劇』を出版されました。327ページというボリュウムのある濃密で充実した本です。

上演記録や部長のたちの回想、その時の部員たちの様子を再現し、舞台写真もたくさん載せ、その時の様々な出来事や思いなどが綿密に書かれています。記録としても貴重ですが、一人の演劇部顧問がどのように演劇と格闘してきたか。その熱い思いが伝わってきます。

(舞台写真や関連記事ががたくさん載っているのも大きな特徴です。長期にわたって意識的に記録や資料を集めていないとできない本です。)

先生の顧問歴は次の通りです。昭和38年~笠岡商業高校、昭和41年~岡山工業、昭和49年~岡山朝日高校、昭和57年~岡山一宮高校。

最後に、あるページをちょっと紹介しましょう。若き日のはつらつとした先生の姿が蘇ってきます。

貴重な本をお贈りくださり、ありがとうございました。

2013/1/10追加します。2012年12月12日、「演劇に燃えた高校生たち〜岡山朝日高校演劇部史 1948〜2012」が刊行されました。末安先生の編集です。厚さがなんと416ページ!写真もふんだんにあり、上演記録、卒業生や関係者の回想、対談など満載です。これだけの本を作られたらエネルギーを吸い取られるのではないかと心配になりますが、普通人の3倍のエネルギーがあるからできる業ともいえます。

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朝日高校の演劇の記録だけではなく、岡山の高校演劇の記録にもなっています。こういう人たちがあちこちにおられたから戦後の高校演劇も燃えるような勢いがあったのですね。それは島根も同じです。貴重な本を贈っていただき、ありがとうございました。

H24 島根高校演劇大会 松江工、出雲 最優秀

2012年10月27,28日、第36回島根県高校演劇発表大会が出雲市加茂町の加茂文化ホール・ラメールで開かれました。8校が出場し松江工業高校、出雲高校が最優秀賞を受賞し、中国地区大会へ出場します。第50回中国地区高校演劇発表会は11月23,24日、山口県の周南市民文化会館で開催されます。

大会当日は浜田で「石見演劇フェス」があり、劇研空は「石見銀山旅日記」で参加しましたので、県大会はみられませんでした。いままでほとんど欠かさず行っていたのですが、残念ながら写真も資料もありませぬ。

しかし、11月3日のこのブログの閲覧グラフを見ると、高校演劇関係でvisitされる人も大変多い。「35回島根県高校演劇県大会」や、「H23高校演劇広島県大会」「亀尾佳宏脚本『三月記』を読む」等々です。そこで今年度の県大会の結果だけでも紹介しておくことにしました。

まず石見演劇フェスタで上演した浜田高校の舞台写真です。劇の題は「ホット・チョコレート」(曽我部マコト作・浜田高校演劇部潤色)。


出雲高校は顧問の伊藤先生の創作だったと、浜田で木村先生から聞きました。東北大震災のことを組み込んだ意表をつく劇だったそうです。昨年の出雲高校も東北大震災を覗わせる意欲作でした。

伊藤先生は亀尾先生と並ぶ島根の誇る書き手です。二人の作品の傾向は違いますが、伊藤作品には劇の本質みたいなものがあります。東北大震災を素材に舞台化したことも貴重です。東北大震災のような大きなテーマはそのまま真正面から舞台化するのは無理です。伊藤さんの舞台は文学・芸術の本質的な要素を活かした視点からの舞台化ですあえて言葉でいえば「象徴化」とでもいうのかな)。高校演劇を越えた普遍性を持つ可能性も秘めています。中国地区大会での上演と評価が楽しみです。

松江工業高校は男子が多く、劇が生き生きとして躍動感があったそうです。昨年もそうでしたね。舞台装置も工夫されていたし、男性のしっかりした演技も魅力的でした。少し荒削りなところがあちこちにあり、それがざんねんでしたけど。

残念ながら、浜田高校しか上演題目はわかりませぬ。だれかパンフレットを送ってくれないかなぁ。(Don’t depennd on others! )  過去数十年のパンフレットをファイルで保存しているので・・・。(「ソウリョウハダスカ」「モチロンデス」「アテニセズマッテオレ」「ハイマチマセヌ」)

H24 三刀屋高演劇部 全国大会(富山)で上演

2012年度の高校演劇全国大会は富山市で開催されます。中国地区からは三刀屋高校が代表に選ばれて出演します。顧問の亀尾先生の創作で「ヤマタノオロチ外伝」。神話をもとにした異色作です。昨年の島根県大会で講師として審査に関わりましたが、劇作りのうまさは圧倒的でした。観客を巻き込んでいく力とでもいうのでしょう。富山大会でもきっと観客を惹きつけることでしょう。

全国高校演劇協議会(事務局長・吉田美彦 大阪府立北摂つばさ高校内)が発行している新聞・「演劇創造」124号から紹介させていただきました。

高校演劇劇作研究会(事務局長・柳本博、獨協高校内)が発行している季刊「高校演劇」も富山大会上演作品特集号を発行しています。各校の脚本を読むことができます。定期購読すれば一年分で6千円、大会 特集号だけ購入する場合は1500円です。毎年大会会場で販売しています。高校演劇に関わる人はこれを読まないと全国の様子が分かりません。

そこでPRもかねてパチリ!310ページもあります。劇作研究会は元顧問や現役の先生が中心です。モトコモはほとんど脚本を書いて載せることはありませんが、15000円の年会費を払って発行を支えています。編集委員や事務局の人たちは錚錚たる脚本家たちばかりですが、まったくボランティアでこの本の発行に献身しつづけておられます。高校演劇への愛着が為せる奉仕でしょう。継続的な雑誌の編集は時間や労力などとても大変なことです。よくやられるなぁ、と遠くにいて何もしないぼくはだだ敬服し届かない感謝の言葉をいつもつぶやくのみです。せめてPRだけでも、とコウカのない文字を打っています。

その本には上演校の地区大会での写真も掲載されています。三刀屋高校の劇が載っているページをちょっと紹介させていただきます。
各校とも独創的でおもしろそうですね。

劇作研究会の総会と懇親会も毎年開催されますし、三刀屋が上演するのではるばる富山まで行くつもりでいましたが、盆前後は俗人には世俗のつきあいもあり遠いしトマルトコモナイシ残念ながらあきらめました。現役の時のように6月頃から参加者を募り宿泊の申し込みも一任して車で一緒に行く、などという大昔の話しは遠くなりました。シカタナイカ、トシダシヒトリダシトオイイシ。はるか石見の地から健闘を祈ることにしましょう。そして例年8月末ごろNHKで放映される東京公演の4校の劇を寝転んで見ることにしましょう。

8/7 関西外語大で三刀屋高「ヤマタノオロチ」公演

2012年8月7日(火)13時30分から関西外国語大学谷本記念講堂(大阪府枚方市中宮東之町16-1)で三刀屋高校演劇部が「ヤマタノオロチ外伝」を上演します。富山で高校演劇全国大会が10,11,12日行われ、それに参加する途中、大阪で公演することになりました。考古学者・佐古和枝先生の講演や落語家・桂 九雀さんの「異伝 ヤマタノオロチ」の朗読もあります。

大阪に住んでいるみなさーん!ぜひこの劇を観に行ってください。島根から大阪に出て働いているみなさーん。あの素朴な島根の高校生がこんな本格的な劇を公演するとは!!!と島根への誇りが積乱雲のようにむくむくと湧き上がってきますよ。ぜひ友達と、家族と、恋人と、いない人は一人で出かけてくださーい。きと満足されるはずです。新鮮な感動があるはずです。


顧問の亀尾先生の手紙によると、「平日の昼間、高校生による有料公演・・・。お客さんが来ない条件はそろいますが、自分たちの主催でこんなイベントをやる恐ろしさと楽しさが同居しています。こんな無茶な演劇部があると紹介していただければ幸せです」とあります。確かに無茶!No,No。大冒険、大挑戦です。雲南大阪支部も後援していますから大丈夫!このブログを見て行く人たちもたくさん!!イルかイナイカ!イナイトオモッテイルナ!

(ところがどっこい、亀尾佳宏、三刀屋高校演劇部、ヤマタノオロチ、高校演劇、神話などで検索に引っかかりグラフがキューンと高くなるのはいつものこと。亀尾さんの創作「三月記」のブログは当初から常に読む人がいる。おもしろい現象。)

希望者は上記のところへ申し込んでください。もちろん当日不意に来られても大歓迎!!山陰中央新報は次のように報道しています。ちょっと紹介させていただきます。

ありがとうございました。きちんと大切なことを押さえて書いてあるので新聞は便利がいいですね。大いに新聞を読みましょう。

三刀屋高校演劇部のみなさーん!カメオさーん!いつもの堂々とした演技と素晴らしい舞台で浪速人の度肝を抜き、2000人の大講堂(大きい!)の屋根が吹っ飛ぶような感動と拍手を楽しみにしています。

富山の全国大会は11日の13時からが三刀屋高校の上演。がんばってください。

 

高校演劇の創作について

昨年(平成23年)は二つの高校演劇の県大会を観劇しました。35回島根県高校演劇と51回広島県高等学校総合演劇大会です。講師として参加しましたのでパンフレットに原稿を頼まれ、字数は限られていますので箇条書きに創作劇について書いてみました。参考になればと思い紹介します。

創作劇を書いて学んだことなど

全国(中国、島根)高校演劇協議会顧問
劇研「空」代表、日本劇作家協会会員
洲浜昌三

部員や顧問が書く創作脚本の上演が主流になっている。昨年の広島県大会では13本中8本が顧問や部員の創作か潤色である。参考までに創作についてぼくの考えを書いてみる。

創作脚本の利点として次のようなことが考えられる:
1.部員の人数や一人一人の個性や特徴を活かして役をつくることができる。
1.地域性を活かしたり、その学校の問題やテーマを取り上げることができる。
1.書き上げたら部員で批評したり、いろいろな人に読んでもらって感想を聞き修正できる。
1.練習に入っても議論しながら台本を手直しできる。
1.身近なテーマだから理解や共感も深く統一意識を持って劇を仕上げていくことができる。

弱点も考えられる:
1.部員の人数や現状に合わせて書くので世界が狭くなる。
1.自己満足から抜け出せない場合がある。
1.客観的評価や批評を経ていないので上演したときの成果は未知数。
1.学校の現場は生徒も先生も忙しく、ぎりぎりになってでっちあげることが多い。
1.脚本執筆者に依存して部員は脚本を広く読まなくなる。

ぼくは新任の時は文芸部、次ぎに柔道部、転任したら演劇部顧問がついていた。劇は分からなかったので部員と一緒に汗を流すことにした。3年くらい既成の脚本を上演したが、文化祭では、観客は私語か安眠の時間。生徒の意識から遠い既成の脚本を上演しても意味はないことを実感した。次の年、地元の伝説を素材にして劇を書いた。好評でその年には5回上演した。以降退職するまで毎年書く羽目になった。
(島根県大会では松江工業、三刀屋、松江商業、松江農林、大社、出雲、安来高校が上演し、三刀屋の「ヤマタノオロチ外伝」(亀尾佳宏作)と大社の「生徒総会」(畑澤聖悟作)が代表に選ばれ、中国大会へ参加、中国大会では三刀屋が最優秀賞、安来が2位に相当する優秀賞を受賞しました。三刀屋は8月10~12日に富山県民会館で行われる全国大会に出ます。安来は春の全国高校演劇祭に出ました。)

創作劇を書きながらつぎのようなことを学んでいった。
①1時間の劇では言いたいことは一つ。
②劇がはじまって10分以内にテーマ(その劇で最も観客へ伝えたいこと)を立ち上げる。③自分のために書くのではく、観客のために書く
④観客は贅沢。5分も同じ状態が続けば退屈する。
⑤観客の層を考えて書くが、目の肥えた演劇人もいることも忘れない。
⑥執筆は剣道の試合の如し。相手(観客)の呼吸を計りながら打ち込む。
⑦芸術に説明は大敵。説明するようなセリフは使わない。
⑧小説のように書かない。舞台では言葉より行動や表現がはるかに効果を発揮する。
⑨書くときテーマを横へ拡げ過ぎない。深く井戸を掘ればいろいろな地層や水脈に出会う。
⑩観客の期待を裏切り揺さぶりながら展開していく。観客に先が見える劇はつまらない。⑪劇は激。山場では二つの潮流が激突し、予期せぬものが生まれたら最高。
⑫暗転が多いほど書くのは楽。上演したらプチプチ切れて観客の集中力もその度に切れる。
⑬ラストは難しいけど、急に道徳劇や予定調和劇にならないように。(以下略)

実際に皆さんの劇を観る時には、こんなことは忘れて、大いに楽しませていただきます。

季刊 『高校演劇』214号紹介します

「高校演劇劇作研究会」は130人くらいの同人からなる季刊の高校演劇脚本誌です。全国で創作を手がける有力な高校演劇の顧問や like me  のようにモトコもなどが同人です。全国大会前には分厚い全国大会号が出て同人の創作脚本が掲載されます。今年(平成24年)は同人である島根の亀尾佳宏先生の『異伝 ヤマタノオロチ』も載るはずです。今までの高校演劇で例のない出雲神話を素材にした意欲的な作品です。楽しみです。

読みたい人はこの『高校演劇』を買って読むしか手がありません。定期購読は1年分で6000円。色々な脚本が掲載されるのでとても勉強になります。1冊は700円、全国大会号は1500円。送料は別です。

2月のある日、事務局長の柳本博さんからメールがあり、213号の読後感を書いてほしいとのこと。了承したものの、書棚から取り出してみればベテランの脚本が並んでいる。恐れ多かったけど何度も読んで感想を書きました。字数が少ないので十分意を尽くせないところもありましたが、メールで原稿を送りました。先日214号が届きました。この本を読む人は限られていますので、本のPRを兼ねて、写真などとともに紹介させて戴きます。

『『高校演劇』213号 読後感                                   洲浜 昌三

『無心駅』                           宮島 宏幸  
無人駅で三人の女学生ギャルが体を売って稼いだ金を計算している。会話も露骨。真面目な奈美を仲間に誘う。父との不和で投げやりになっていた奈美は誘惑に負け、男と関係する寸前に逃げてくる。ヴォランティァで駅を守っている老女が、むかし家が貧しく売春をしていたと語り奈美を慰める。改心したかに見えたが…。場の設定もいいし方言も生き劇の組み立てもいい。売春問題に突っ込んだ勇気も買いたい。だがあちこちで人物が作者に都合よく動かされている印象が残る。他人に売春の経験を語るには血を吐くような必然性を仕組まないと「激」が額縁の風景になる。独創的な切り口がほしい。


『ビミョー』                         若林 一男
   「一秒先は闇」。そんな舞台を創ってみたい。それは無理でも作者はそれに近づこうとしているかのようだ。そのためにはあらゆる方法で観客のイマジネーションを搔き立て掻き乱し揺さぶる。異化、変化、落差、笑いは最大の武器。行動を先行させ台詞は説明臭抜きで短く即物的。複眼どころかこの作者は超複眼。脚本を読んでいるだけでも面白い。作者が演出すれば更に面白い舞台になることは過去に見た劇で立証済み。不登校の娘が吉川レンタルのバイトで家族を演じ、担任に語る言葉や祖父の言葉には深い真理が覗く。十一の場面から成る劇だが、観客にバラバラの印象を残す可能性はある。インパクトのある一つの宇宙を舞台に現出するためには各ピースを貫く透明な太い棒が欲しい気がする。

『ソフトなんか大嫌い』        市村 益宏  
脚本だけでは特に面白いとは思わなかったが、舞台で元気な高校生が演じるのを見たら間違いなく楽しいだろう。力強い合唱が何度もある。打順紹介も歌形式。ソフトボールの試合場面もある。きびきびしたリアルタイムの動きやテンポのいい会話の交錯。ダイナミックな動と静。幽霊になった三人の昔のソフトボール部員がいつも出てきてちょっかいを出し昔の部のことを語り単調になる流れを止め劇に奥行き出す。淡い恋もある。演じる者も楽しいだろう。最後の顧問の台詞は劇を平板化したかもしれない。幽霊さんを生かして劇を立体化できなかったか。(言うのはいつも簡単だ)


『みんなでロミオとジュリエット』   淺田 太郎  
名作の枠を利用して創作するのは面白い試みだけど難しい。枠を越える肉盛りに力量がいる。この劇はよく健闘していると思う。モンタギュー家とキャビュレット家の対立を、富丘高校演劇部と聖キャビュレット高校演劇部の対立に置き換え、台詞も重要場面ではシェイクスピアの台詞を再現して面白おかしく劇を展開する。枠の中に巧みに両校演劇部の対立や人物を融合させている。意外なストリー展開も面白く楽しい。高校演劇とは何か。それがテーマだが、大会にこだわり過ぎたり審査をやり玉にあげるなどは面白いが通俗に流れる気がする。

 

4つの舞台写真は『高校演劇』のグラビアから紹介させていただきました。最近はこのようにカラー写真が掲載されるので舞台のイメージが具体化されていいですね。

ホームページもありますので検索してください。本を注文したり問い合わせをされる場合は次のFaxでどうぞ。03-3930-8477  高校演劇劇作研究会事務局 柳本博

『高森 章 脚本集』紹介

2011年11月11日、岡山県の高森 章先生が脚本集を出版されました。高森先生は長い間、高校演劇の顧問として活躍され、特に創作脚本を退職までに29本書かれました。その中から6本が掲載されています。また高校の演劇部時代から顧問になってからの各校での思い出や記録も載っています。貴重な本を拝受しましたので紹介します。

高森先生は昭和40年、岡山県立津山高校の1年の時から演劇部員だったそうです。最初の8ページには高校時代や顧問になってからの各高校での写真がカラーで掲載されています。津山工業高校と津山東高校勤務が長かったのですね。風景として紹介します。

参考までに各高校で創作された脚本を紹介してみます。ぼくは中国大会へ出場されたときの劇を何本か観ています。その土地の風土が滲み出てくる舞台でした。流行に乗らず、自分たちの分を心得て地道にそして素朴に劇を創っていくという印象が当初から残っています。いつも落ち着いて話され重厚さや風格もあり、ぼくより先輩だとずーっと思っていました。

 本には次の脚本が掲載されています。「黒土にうたう」「冴えかえりつつ」「高原の花嫁」「夢の中で」「麻衣子へ」「まゆみのマーチ」(津山東高校が全国大会へ出場したときの作品)

「最後に」という欄で、創作劇について書かれています。参考になるのでポイントを書いてみます。

・反省の40年:「振り返ってみると、ただ反省、反省、ばかり」ではじまり、「プロットの作成や組み立ては2ヶ月くらい頭の中で行う」とあります。「大きな幹を立て、枝葉を切り取って行く作業。話し言葉で書くこと」「伝えたいテーマを一本に絞り込む。書きたいことはいろいろあっても、それを残しておくと、本当に伝えたいテーマがぼやけてしまう」「読み返してみてはずかしくなった。今多ったら絶対に書かない、書けないといクサイ台詞が各所に見える」「満足のいく脚本は29本のうち4本くらいか」

同じくらいの本数の脚本を書いてきた者として、まったく同じ思いです。年月や経験の篩い(ふるい)を経なければ見えて来ないものがあるんですね。その時は見えているつもりなんだけど・・・・。本物を見るためには、見ている自分を見る第三者の目が必要なのでしょう。

中国地区の高校演劇で脚本集が出ているのは広島の伊藤隆弘先生(門土社)島根の洲浜昌三くん、広島の(門土社)藤田 卓先生、岡山の高森 章先生(私家版)。現在中国地区5県で有力な書き手が活躍していますので何らかの形にして記録として残し、必要に応じて読めるようになればいいですね。高森先生、おつかれさまでした。