「昌ちゃんの詩の散歩道」カテゴリーアーカイブ

R3,短詩 「桜の老木」

桜の老木

庭の桜が今年も満開になった
あたたかい春の陽射を浴びて
真珠のように輝いている

近づくと
根もとの樹皮は朽ち
幹には大きな空洞が巣くっている

年と共に傾き
いま50度の姿勢を維持しながら
いつ急に土の角度になるか桜も知らない

それでも毎年無数の新芽を出し
若枝を空に伸ばして
純白のきれいな花を咲かせる

根もとは朽ち
空洞は広がっても
強靭な意志が満開を支えている

桜の季節も終わりました。この老木は、毎年きれいな花を咲かせます。入学式がおわると、毎年この桜の木の下で子供たちの写真を撮ったものです。
(ブログ 詩の散歩道 詩作品紹介 劇研「空」 短詩20210403すはま)

R3,母思う一筆、全国大賞に 福田さん(大田出身)

「手紙を読むのが楽しみと、笑顔を見せて言うてくれたけ、切手十枚また買うた。途中で逝くなや。」
福井県の丸岡文化財団主催の第28回「一筆啓上賞」は今年度「笑顔」がテーマで、全国から52805通の応募があり、福田さんの作品が大賞5作品に選ばれたました。1993年に始まったこの企画は「日本一短い手紙」(40字以内)として評判になりました。
福田栄紀さんは現在、盛岡在住ですが大田市久利町出身、大田高、京大を経て海外勤務、大田の中国農業試験場での勤務もあり、牧草地や土壌などの調査研究で博士号を取得。インターネットで検索すると、たくさんの論文が掲載されている研究者です。
岩手日報が大きく取り上げていましたので、紹介させていただきます。手紙を書いた人も、笑顔で読んだ人も、良く知っていますので、温かい心の交流が目に浮かびます。エイキチャン、連続ホームラン、おめでとう!!(リュウチャンの許可あり)
(ブログ:詩の散歩道 昌ちゃんの詩の散歩道 詩作品紹介 地域情報 20210215 すはま)

5月になって、母の日に山陰中央新報や朝日の「天声人語」にも取り上げられ話題になりました。読んだ人も多いと思いますが、紹介します。

R3,昭和初期の貴重な詩集・中島雷太郎詩集『磯松』復刻

昭和10年(1935)に大田市(当時は邇摩郡静間村)で出版された中島雷太郎詩集『磯松』が復刻されました。探してもどこにもなかった詩集ですが、たまたま国会図書館に保存されていて、ご子息の中島康夫さん(東京在住)が「旧漢字と老眼に苦戦しながら打ち直し」自ら一冊づつ表紙に出雲和紙を張り付けて装丁されたものです。
雷太郎さんは、3年間シベリアへ抑留され、その「シベリア抑留記」も新たに掲載されています。また雷太郎さんが昭和8年ころ発行された『山陰詩脈詩歌集』(古本屋では1万5千円近い値段)の中からも和歌など追加掲載されています。
序は安部宙之介、大島庸夫、更に跋として、山田久壽郎、岡より子、中島資喜など当時一線で活躍していた県内の文人が寄稿しておられます。

中島資喜さんは雷太郎さんの友人で、一緒に「静窟詩社」を結成し、『静窟』という同人誌を発行、小説や脚本も書き青年団活動も活発にされました。国鉄職員で不当弾圧なども受けながら本格的に文学を目指して上京、生田春月の家にも下宿していましたが、結核で帰郷、満鉄に入り現地で招集、終戦と共にシベリヤへ抑留されました。明治45年生まれ、昭和25年7月に他界されました。日記も残っているとか、いつでも閲覧OKを頂いています。
ご長男の鐵也さん(滋賀県在住)が父親の作品や記録を実に丁寧にまとめ、PDFにして送っていただきました。二人の作品や記録は昭和初期の島根の文学運動を考察するとき貴重な記録になります。昭和初期日本の地方文学運動としても貴重です。
復刻が実現するまでには不思議な出会いがありました。山陰中央新報で「人物しまね文学館」連載のために資料を捜したとき田村のり子さんの著作が貴重な手掛かりになり、経過をこのホームページに掲載していたら康信さんから、それは私の父です、とメールがあり、『径ずれ』のコピーが届き、数年後に静間町文化協会の依頼で、「朗読を楽しむin静間」を公演。地元の雷太郎さんの詩やシベリア抑留記も、劇研「空」で朗読しました。それが東京の康夫さんの耳へ届き、いろいろやり取りが始まり、今回の復刻に至ったという次第です。その経過をPDFにしました。
R2、詩集跋文 「昭和初期の貴重な詩集」復刻版『磯松』洲浜昌三(中島雷太郎著『磯松』昭和10年発行)

大田図書館には献本しています。希望があればご連絡ください。連絡をとります。(ブログ:詩の散歩道 詩集や本の紹介 島根県詩人連合 20210129 洲浜)

R2,第18回県民文化祭 文芸部門『島根文芸』53号刊行

今年度の入選者表彰式が12月12日、松江で開催されました。県民や島根出身者を対象に7月から9月まで、俳句、短歌、川柳、詩、散文の作品を公募、入選作品が立派な本になり刊行されました。
表紙は県総合美術展デザイン部門で知事賞を受賞された大田敦美さんの作品です。素敵なデザインです。本が新鮮に見えます。
応募点数は短歌(一般326首、ジュニアー58首)
俳句(410句、156句)
川柳(509句、181句)
詩(20篇、8編)
散文(20篇、2編)
本には入選作品や選評、招待者作品と巻末に本年度の島根県文芸部門の「一年の歩み」が掲載されています。県内の主な図書館や学校には配布されています。どうぞ読んでみてください。購読希望者は島根県文化国際化へ申し込んでください。
表彰式での会長あいさつです。全員マスクです。今年は久しぶりに山陰中央新報が文芸欄で入賞者を紹介してくれました。応募者を増やし文芸活動を活発にするために運営委員は苦労しています。多くの人にPRすることは最大の課題です。そういう意味でありがたいことでした。切り抜きを紹介させていただきます。

表彰式後の詩の分科会では、入賞された皆さんに朗読していただき、感想などをお互いに出し合いました。事務局長で審査委員の一員だった川辺 真さんと洲浜が参加しました。知事賞の升田孝司さんの「春のゆくさき」は、視点や表現の深さや巧みさが新鮮でベテランの味のある完成度の高い作品でした。金賞の佐田光子さんの詩は女学生で神戸大空襲のとき、石門の内側と外側で生死が分かれた悲痛な体験を記録風に書かれた貴重な作品でした。左近司さんの詩は感性を生かした省略と飛躍が躍動した難解な詩でしたが、感性を生かした新鮮な現代詩で応募作品中異色でした。

来年度も詩部門が担当します。9月には益田で「文芸フェスタ2021」も予定していますが、新型コロナのこともあり、内容は未決定。次回の運営委員会で話し合います。文芸作品は次回もたくさんの人に応募してください。
(ブログ:島根県詩人連合 島根文芸フェスタ 詩の散歩道 詩集や本の紹介 20201216 すはま)

R2,山の内ろうほう詩集『たてがみ』に寄せて

五月のある日、長久町の山内芳朗さんが車に同乗して来られ、「入院中に初めて詩を書きました。見てほしい」と。驚きました!脳出血で入院中に40篇もの詩を書かれたのです!きっと心の内を表現せずにはいられない強い衝動があったのでしょう。約30篇を選んで編集し、9月にA4版の詩集になりました。
冒頭の文章の一部を紹介します:「15歳から建具づくり一筋 65年/48歳の時「松」との出会いで筆を進める/描いた水墨画は数知れず/多くの社寺にも奉納 /地元のこと松のこと 数々の民話として書き残す/ 令和2年三月/81歳の朝/ズボンを履こうとしたら目の前が真っ暗に・・・気付けば病院のベッドの上/「脳出血」/ 入退院後 リハビリ施設に通い/筆は新たな方向へ/ろうほうじいさん第二の創作人生始まる」。以下目次です。

山内さんには『銀山二世松ものがたり』という著作もあり、このブログでも紹介しています。今回も「ニッチノーマス」の細田次郎さんの尽力によって刊行されました。初めての詩で、いろいろな批評はあるかと思いますが、率直に表現され、詩に馴染みがない人でも良くわかり共感できます。表紙は山内さんか描かれた羽根の「立神岩」です。お孫さんとのコラボでもあり、お孫さん二人の絵や言葉もたくさん挿入されています。
本ではありませんが、手軽に作品をまとめて、意中の人たちに読んでもらうというこのような発表形式も貴重だと思います。
「『思い』を『ことば』で『詩』にする意義」という一文を巻末に寄せていますのでPDFで紹介します。
R2,跋文 山内ろうほう詩集『たてがみ』に寄せて 洲浜昌三 6,15 
(ブログ 昌ちゃんの詩の散歩道、詩集や本の紹介、地域情報、島根県詩人連合、20201025洲浜)

R2,しまね伝統芸能祭・講座島根の縄文時代・石見銀山「生活と詩と」

コロナ、コロナで文化行事は中止が多い中で、ちょっと暇ができたので行ってみました。
「しまね伝統芸能祭」(10/18サンレディ)では三つの歌が踊りと共に披露されました。「三瓶小唄」は丘  灯至夫作詞、「温泉津小唄」は野口雨情、「大田小唄」は、なんと!目下絶好調のNHK朝ドラ「エール」の主人公、古関裕而です。すごいですね。
山口の狂言も面白かった。「淀江さんこ節」は解説者が抜群!歌だけでなく滑稽な壁塗りの無言劇もよかった。工夫すればいろいろな面白い寸劇ができそう。安来節に似ていると思いましたが、どうなんでしょう。どっちが古いのかな。
17日には三瓶埋没林ミュージアムで、「島根の縄文時代」という講座を聞きに行きました。実際の調査研究に基づいた資料で解説されるので、大いに学ぶことがありました。「月イチガク」として月に一回開催されています。写真は、小豆原の埋没林ミュージアムです。地下の巨大な埋没林は一度見たら忘れられません。圧倒されます。知人が来たとき案内するには最高の場所です。
昨日は、爽やかな日本晴れ!カミサマの用事について、久しぶりに大森へ行きました。群言堂はいつ行っても安らぎますね。心のふるさとです。佐々木寿信さんの詩、藤井保さんの写真などを、じっくり見て回りました。石見銀山資料館の「米」の展示もよかった。奥深いイメージが湧きました。館長さんとも久しぶりに話しました。石見銀山の最後の代官について朗読劇を書いていますが、再調査して書き直す必要があるかも知れません。確実な資料がない歴史は扱いが難しいですね。うっかり誤解の可能性も。

10月22日(洲・松)、27日(山・松・吉・ス)は大田三中の演劇指導です。Don’t  forget .みなさま!29,30,31は松江で島根県高校演劇大会です。目下鋭意脚本精読中。11月6日は矢上文化センタで高文連文学部門総会です。これから畑打ちです。忙しいコロナ、コロナの秋です。
(ブログ 劇研「空」, 観劇、地域情報、詩の散歩道20201021 すはま)

 

R2,井下和夫詩集、椋木哲夫詩集(書評「石見詩人」144号)

『石見詩人』は、同人も高齢化し現在は年2回の発行になりましたが、益田市の高田頼昌さんが中心になって頑張っています。2019年10月に井下和夫詩集『河は流れる』(ふらんす堂)、12月に椋木哲夫詩集『そっと ひとひら』(たど印刷)が刊行されました。二人ともキャリアのある詩人です。書評を144号に書きましたので紹介します。
井下さんは益田市昭和町にお住まいですが美郷町出身で大田高にも勤務しておられました。詩は、ふと心に触れた感慨を具体を通して洗練された言葉で静かに語るというのが特徴で、行間から哀歓や郷愁が滲み出て味があります。30篇の詩が載っています。
R2,書評 井下和夫詩集「あるがままに」石見詩人144号(洲浜昌三)

椋木さんは益田市向横田に在住。この詩集には、昭和44年から令和1年までの作品が年代順に掲載されています。椋木さんの詩は自己主張や風刺、ユーモア、言葉遊び、鋭い社会批判などを含め「如何に生きるか」という哲学的な模索が背後にあり、独自の面白い視点で光を当てて表現するのが特徴で、詩が活き活きとしています。
R2 書評 椋木哲夫詩集『そっと ひとひら』石見詩人144号(洲浜昌三)rtf
石見詩人主催者の高田頼昌さんが、山陰中央新報に寄稿された
文章がありますので、紹介します。
(ブログ 劇研「空」、昌ちゃんの詩の散歩道、詩集や本の紹介、202010すはま

R2,大田市民会館で「夢育美コンサート」(9/26)

「ユ―メイクミー」長坂行博コンサートが、中ホールで開かれました。新型コロナウイルスの影響でほとんどの文化行事は中止か延期され、大田市民会館では今年初めての文化行事でした。
YOU MAKE ME」「あなたがわたしを育ててくれる」「夢を追いかけている人生は素晴らしい」。市民会館の地域行育成事業の一環で会館スタッフの全面的なバックアップがあり、50人限定のコンサートでした。数多く作詞作曲をされている長坂先生がギターを弾きながら奥様のキーボード伴奏で10曲あまり歌われました。人の心を癒し、そよ風のようにそっと背中を押してくれるような歌の数々でした。
歌の合間に、その歌が生まれた切っ掛けも語られましたが、歌の背景が浮かび、歌に深みが生まれて印象に残りました。

11月23日には、松江の県民会館で「しまね伝統芸能祭」が開催され、創作音楽劇『琴の鳴る浜』を構成劇風に20分に短縮して、合唱5曲と馬路の盆踊りを上演予定です。その作曲も長坂先生(作詞・洲浜)です。作曲者、演奏者、合唱隊、スタッフという力強いコラボレイターの存在があり実現した舞台です。
(ブログ 劇研「空」詩の散歩道 地域情報20201006すはま)

R2, 詩集『ひばりよ 大地で休め』(1978刊)について

1978年(昭和53)11月、石見詩人社から刊行した詩集『ひばりよ  大地で休め』(洲浜昌三著)について、時々問い合わせがありますので、自己整理の意味も込めて紹介してみます。42年前の詩集で、書棚に2冊ありますが、主な図書館にはあるかも。

表紙や挿画は美術教師で同僚だった古浦秀明先生。詩集に合った素晴らしい挿画でした。理想を追い、空想的、抽象的傾向が強かった若者が、厳しい現実を目の前にして格闘していた時期でしたので、詩のモチーフも自分探しにあったのでしょう。表題の「ひばり」も、理想を追って空高く上り、美しい声で歌っているひばりに、たまには大地で休んだらどうだ、と呼び掛けているのです。

 ひばりよ 大地で休め  洲浜昌三

ぴゅうぴる ぴゅうぴる
つぃーちゃい ひょろろ

高い空で
ひばりが さえずる

設計図が
重い

はっきり 見えたから
線を引いたのに
線は 何も
つかんではいない

もとから ないのに
自分のインクで
図面を引き
当然 無から
仕打ちを受ける

宇宙は 広大すぎるから
小さな器に
その一部をすくい取り
争いの種をまき
憎しみを
競ってつくりだす

空の広さが
欲しいのに
空の記憶が
なつかいいのに

ひばりよ

手は
設計図に
また 線を
加えようとするのだ

当時、読売新聞で「西日本詩誌評」というコラムがあり、詩人の黒田達也さんが、「面白い表現技法」というタイトルで取り上げ、新聞を送って頂きました。

第三者の鋭い指摘は、無意識の闇の中にある指向や精神性を天日の下に照らしだしてくれます。
「詩集を読もう。洲浜昌三『ひばりよ  大地で休め』(大田)は、テーマ設定に多様性があり面白かった。例えば「壮大な不在」は、類推すれば多分文学創造の苦しみに関する自己分析を抽象化したユニークな詩であり、「忘れもの」は日常性の中でふと感じる実存的な忘れものの感覚である。「重さを忘れて/歩きはじめると/近くに一点の光がある//その星座にも立ち寄ろうとして/軽い足を/のばすと/太古の記憶が転がっている」
これは「パルテノンからの帰り道」の部分である。このように、多彩な内容と表現技法の面白さは、形而下的な日常や土着性への指向が少ないという、この詩人の特徴を示している。それは主観を深めることによって批評精神の厳しさに徹しようとする作者の姿勢であるように思われる」(黒田達也)
(ブログ 詩の散歩道 詩集や本の紹介 20200813 すはま)

R2,県民文化祭・『島根文芸』作品募集(7/1~9/4)

第18回島根県民文化祭の主要行事・「しまね文芸フェスタ」は、9月20日益田市で開催予定でしたが、新型コロナのため中止になりました。今年度は詩部門が担当で、昨年から講師との調整を進めていましたが、残念ながらキャンセルに至りました。文芸作品募集は例年通り行います。どうぞ奮って応募してください。
裏面に詳細があります。チラシは公民館や学校などにも置いてあります。県文化国際課に問い合わせてもいいですし、「島根県民文化祭」ホームページにも掲載してあります。島根出身者なら県外の人も応募できます。「ジュニアーの部」もありますので、小中学生の皆さんも作った作品を送ってください。
表彰式は12月12日(土)松江の職員会館で行われ、入賞作品を掲載した『島根文芸』が贈られます。次の表紙は昨年度のものです。
次の写真は詩部門の入賞者表彰式です。表彰式のあと、各部門で入賞者を囲んで合評会が開かれます。選者と詩人連合の会員などが参加します。ぼくも毎年出席しています。
『島根文芸』も52号になり、貴重な島根の文芸作品を宝庫にもなっています。小中学生の場合は自分から応募することは滅多にありませんので、学校の先生の指導や勧めで、毎年作品が寄せられます。今年も新鮮な作品が楽しみです。ご協力ください。
(ブログ 詩の散歩道 島根文芸フェスタ 島根県詩人連合 お知らせ 20200702 洲浜)