「昌ちゃんの詩の散歩道」カテゴリーアーカイブ

H31, 「樹根に魅せられて」勝部和子さん 仁摩で絵画展

大田市の勝部和子さんの絵画展が仁摩サンドミュージアムで開催中です。先日行って素晴らしい絵と対面してきました。三瓶山の噴火で埋没した埋没林を題材にした作品群です。1月1日~2月24日までです。

埋没林を見たとき、勝部さんはその魅力に引かれ、許可を得て何日も描きに行ったそうです。命を育む樹根のエネルギーを我がことのように受け止められたのでしょう。実際、たくましい樹根の絵から、強力なエネルギーが伝わってきます。下の絵は県総合美術展で知事賞を受賞した作品です。
絵は30数点展示してあります。植物の生命力をテーマに作品が特徴です。絵画展示用の照明ではないので、光が邪魔をしますが、我慢しましょう。会場を設営してくださったことに感謝です。

「この絵はどうされるのですか?」と聞くと、「家に置くと粗大ゴミですから、写真に撮ってから処分します」とのこと。ああああ、!!処分とは!肉が切られるような思いです。どこか保存してくれる場所はないのでしょうか。埋没林それ自体は魅力ですが、そこから生まれる俳句、短歌、詩、エッセイ、小説、音楽、劇、絵画、各種文化・・・そういう波及があってこそ、埋没林自体の魅力も広がっていくのです。
(ブログ 詩の散歩道 お知らせ 地域情報 2019,2 すはま)

H30 栗田好子詩集『ありがとうの色』書評(「石見詩人」141号より)

「石見詩人」(益田市 高田頼昌 編集)141号が平成30年12月、発行されました。以前は季刊でしたが、現在は年2回です。その中で栗田好子(益田市中島町)さんの第2詩集『ありがとうの色』の詩集評をかきましたので、表紙、目次と共に紹介します。(石見詩人 🏣698-0004 益田市東町17-15)


『石見詩人』は、昭和29年に益田市で誕生した伝統のある詩誌ですが、同人も高齢化、人数も少なくなりました。継続するのは楽ではありませんが、もう少し頑張る、と編集者は熱い思いを述べています。
『ありがとうの色』は2018年1月、石見詩人社から発行。第一詩集『透きとおったときよ』は2002年。16年ぶりです。一人の女性が不安や孤独を抱えつつ、前向きに誠実に歩んできた心の軌跡を見つめ、触れ、感じ、味わうことができるいい詩集です。栗田さんは、8月に益田の喫茶店で「詩とイラスト」展を開催、とても好評だったそうです。分かり共感がある詩なので可能な作品展だったのでしょう。詩が紙の上に閉じこもらずに、街へ出て行くのはいいことですね。次のPDFは詩集の証票です。興味がある人は開いてみてください。

H31、ブログ 詩集評 栗田好子詩集『ありがとうのいろ』「不安孤独をバネに明るい広い世界へ」2段30字×18行

このブログでは、出来るだけ詩人の詩集などは紹介するつもりですが、たくさん詩集が届きますので、いい詩集があってもみな紹介する時間的余裕はありません。少なくとも山陰地方の詩集は紹介したいと思っているのですが、思うようにいきません。詩は読まれない時代。少しでも知ってもらい、励みになればと思い、少しづつ紹介していきたいと思っています。(ブログ 詩の散歩道 詩集や本の紹介 20190130 すはま)

 

H31 40年ぶりの詩集『春の残像』(洲浜昌三詩集)

戦後の一時期(我が青春時代)、詩は混迷した精神を純化、解放し、心に安らぎや豊かさ、指針を与えてくれる存在でした。今、詩は読まれない時代です。しかし、詩が持っている力は魅力的です。長い間書いてきた200篇以上の詩から、44篇を選び、詩に関するエッセイを巻末に載せました。「分かる言葉で心に響く詩」が目下の詩への向き方です。読んで面白く、感動や発見があり、歴史や記録としての確かさ、面白さ、笑いもある。そんな作品を選びました。次のように多様な内容の詩を載せています。

Ⅰ、 共に過ごした生徒たち、我が青春のシルエット(10篇)
Ⅱ、 自然、震災、命、言葉、公害 ‥‥今を見つめて(12篇)
Ⅲ、石見銀山、三瓶山、石見の風物、方言、人物考(12篇)
Ⅳ、ふるさとの父母、子供たち、友‥暮らしの中から(10篇)
Ⅴ エッセイ(詩論)「詩とは何かを求める長い思考の旅」
表紙の絵は松江市在住の美術家・北雅行先生の版画です。仁摩町大国の龍厳山で頂上には石見城跡があり、銀山争奪戦拠点の一つでした。北先生の版画は詩集の中にたくさんありとても好評です。
詩集の「あとがき」をPDFで紹介します。

洲浜昌三詩集 「春の残像」より「あとがき」

40年前に詩集『ひばりよ 大地で休め』を出した時には大田市にも、ロマン書店、本田書店、昭和堂などあり、いろいろな本を気軽に置かせてもらったものですが、昨年最後の砦・昭和堂も、時代の荒波を浴びてついに落城!(落店?)。個人書店はゼロになりました。チェーン店「ジャスト大田店」だけですが、そこに本社の許可を得て置かせてもらっています。ネットでも紹介されていますが、ご連絡いただければ、消費税や送料なし(1500円)で、お送りします。読んでいただければ幸せです。

この詩集は、第19回中四国詩人賞を受賞し、2019年9月28日、広島で開催された中四国詩人会総会で授賞式が行われ、岡隆夫会長から賞状と副賞が授与されました。

『春の残像』は、株式会社「22世紀アート」から電子書籍として2020年6月中旬頃、出版される予定です。
(ブログ 詩の散歩道 詩集・本の紹介 20190112 すはま)

H30 黛まどか氏講演 しまね文芸フェスタ

「しまね文芸フェスタ2018」は9月16日、浜田市の「いわみーる」で開催、午前の全体会では、俳句で大活躍中の黛まどか先生の講演「日本人のユーモアと美意識」がありました。大まかに印象に残った言葉を紹介してみます。
フランスの中学の教科書では9割日本の俳句、短歌が載っている。本来日本人は自然を愛でる心が強い。雨の名前でも440もある。苦難をユーモアに変える心もある。満たないもの、不揃いなもの、余白に「美」を見出す心がある。詩は本来自由なのに、何故俳句に枠があるのか、とフランス人に問われ、床運動の例を出し、「枠があるから精いっぱい使おうとするから美しく見えるのですと話しました」。

最近の好きな俳句として次のような例を挙げられました。「桜散る遅れて笑う老女にも」「仏壇に先祖込みあふ涼しさよ」「身一つとなりて薫風ありしかな」(岩手県 佐藤勲)「対象との関係でなく普遍的な愛を歌っている」という言葉が胸に響きました。そして、最後の俳句では、多くの人が励まされているとか。文芸が果たす力、役割についても考えさせられました。素敵な講演でした。ありがとうございました。
前日の夜、講師歓迎会があり、黛先生と話しました。第9回「朗読を楽しむ」が終わって浜田へ直行したので、人麻呂の短歌に曲をつけて発表した話をしました。短歌には朗詠があるけど、なんで俳句にはないのですか。作ってみてください」と無茶なことを言ったら、ニコニコ笑って、「考えてみます」と言われました。実現したら面白いことになりますね。写真は大田出身の短歌の大家、藤井さんと黛先生。

午後の詩の分科会では、自作詩朗読と合評。川辺、閤田、くりす、高田夫妻、米子から成田夫妻、宇部市から永富衛、詩集『青押し』(オオカミ編集室発行)が出て間もない中村梨々さん、地元から植本文子さん、そして洲浜。久しぶりに11人集まり活発な感想や意見を述べ合い、充実した会になりました。みなさん、おつかれさまでした。来年は川柳が担当です。
(ブログ 詩の散歩道 しまね文芸フェスタ 島根詩人連合 報告 すはま)

H30 北 雅行版画展 成功裏に終わる

松江の「タウンプラザしまね」で開催されていた北 雅行先生の版画展へ8月31日に行ってきました。連日80人以上の人が来られたとか。ぼくらが言ったときには熊本から夫婦で来ておられました。

約100点展示してあり、ふるさとの風景を彫った作品がたくさんありました。教員になってから一貫してふるさとを描いてきたそうです。素晴らしい作品がたくさんありました。ぜひ行きたいと思ったのは、作品鑑賞と激励もありますが、11月末を目指して詩集発行のために出版社と作品を選考していて、表紙やカットにいい作品はないか偵察も兼ねていたのです。北さんからは、どうぞ自由に使ってください、とOKが出ました。ありがたいことです。そのつもりで見て回りました。いい出会いがありました。北さんは松江の出身ですから、どうしても松江の作品が多く、石見は限られています。でも石見銀山や石見の海岸風景もありました。石見銀山羅漢寺の反り橋です。力強い作品ですね。どの様な本にするか、カットや表紙はどうするか。これからですが、コールサック社とやり取り中。激励をのためでしょうか、3冊予約します、という人が現れました。さて実現するかどうか。今度は有言実行しなければ信用失墜です。チェスト!(ブログ 詩の散歩道 すはま )

H30 松江で「木版スケッチ-故郷を描くー」北雅行展

松江市の北 雅行さんの木版スケッチ展「郷園(ふるさと)」が、島根県庁前の「タウンプラザしまね」で開かれています。期間は、8月25日~9月1日(土)です。
北さんは美術の先生で、邇摩高校で一緒でした。バスケット部の顧問もしておられました。お互いに若かったのでよく飲む機会もあり芸術論など交わしたものです。年賀状にはいつも故郷を素材にした味のある版画が印刷されていて、毎年の賀状を、何十年も大切に保存しています。いつか詩とコラボをしたいものだと長い間憧れていました。故郷の魅力を、版画で目にすると新しい発見もあります。芸術家の目や心を通して具体化された版画から、今まで気がつかなかった美しさや懐かしさが、そこにあります。北さんをご存知の人は、松江に行かれたら、寄ってみてください。「そういうお前さんは行ったのかい?」。いやぁぁ、まだです。行きます、行きまする。行かねばならぬ訳があるのです。楽しみです。(ブログ 詩の散歩道 お知らせ 地域情報 すはま)

H30 島根県民文化祭 文芸作品募集〆切迫る9/4

俳句、短歌、川柳、詩、散文の入選作品を掲載した「島根文芸」は、昨年50号に達しました。この7月から作品を公募していましたが〆切が近づいています。9月4日です。参加資格は県内在住者、県外の島根出身者です。ジュニアー部門もありますので、詩など書いている小中学生がおられたら是非すすめてみてください。例年詩部門は20~30作品で減少傾向です。

「島根文芸フェスタ2018」は9月16日(日)浜田市「いわみーる体育館」で開催されます。講師は黛まどかさん、演題は「俳句に見る日本人のユーモアと美意識」9時30分から受付です。前日15日には鈴蘭別館で講師歓迎会があります。詩部門で希望者は是非参加してください。

先日、依頼があり「島根文芸50年」という原稿を書きましたが、発足当時から、何らかの形で係わってきました。しかし当初は錚々たる詩人や書き手がたくさんおられましたが、現存者は少なくなり、その上若い書き手は少数で、この先が思いやられます。どの分野でも大きな課題です。作品応募者が増加していけば少しは希望も見えてくるのですが。時代は活字離れ、文学離れの坂道を転げているかのようです。でも興味がある人は是非応募してください。(ブログ 詩の散歩道 島根県詩人連合 文芸フェスタ すはま 20180817)

H30,「木でつなごう 人と森との縁の輪」(’20全国植樹祭)

2020年に三瓶北の原で第71回全国植樹祭が開催されます。昭和46年に22回植樹祭が同じ場所で開かれました。当時植えられた松も大きくなっています。大会テーマのキャッチフレーズを植樹祭島根県実行委員会で募集していましたが、724点集まり、数回の審査の結果「木でつなごう 人と森との縁(えにし)の輪」に決定しました。蓋をあけてみると、作者は大田市の吉田隆博さん!
「伐って、使って、植えて、育てる」という人と木と森との関係や循環をとてもうまく表現されました。いいフレーズがたくさんありましたが、選考委員会でも高い評価で決定しました。先日テレビで受賞式が報道されました。おめでとうございます!現在はシンボルマークの募集が終わり、審査が始まります。

また三瓶が全国的に注目されます。楽しみですね。
(ブログ 詩の散歩道 地域情報 すはま)

H30, 島根の詩誌 「光年」終刊「践草詩舎」創刊

出雲と松江の同人を中心に発行されていた伝統のある詩誌・「光年」が平成17年3月、60年の歴史を閉じました。1956年に創刊、151号が終刊号でした。最後の発行者は坂口簾さんでした。

田村のり子さんが、昨年5月24日に山陰中央新報に寄稿されましたので(「島根年間詩集 」46集にも掲載)、その冒頭を紹介します。

「詩誌『光年』が喜多行二氏を中心として坂口簾、河原立男3氏により出雲で創刊されたのは1956年のことであった。以来多彩な同人を迎えかつ喪いながらも不変の孤高高邁な志と方法論を掲げ、万事旧弊の山陰の文化風土に刺激と活気をを与え続けて17年3月、151号を終刊号として詩誌の幕を閉じた。生前ついに個人詩集をもたなかった喜多行二のため光年の会による『喜多行二全詩集成』(坂口簾編集417頁)も同時に刊行成就、完結は完璧となった ~ 以下略~」
上の写真は、「喜多行二全詩集成」417ページ。喜多さんの全詩が掲載されています。大変な編集作業だったことでしょう。最後のページに坂口さんが、略歴を書いておらます。
坂口さんは、新たに、「すとうやすお」さんを代表として創刊された「践草詩舎」に「喜多行二論素描」を執筆、連載中です。現在3号まで発行されていますが、綿密で本格的な評論です。

「践草詩舎」が創刊された時、依頼があって、山陰中央新報に紹介文を書きました。
H29,10 新聞書評「践草詩舎」創刊 山陰中央新報

一般の人に詩が読まれず、詩を書く人は高齢化し、詩を書く若い人がほとんどいないのが現状です。「光年」の終刊は、他人事ではありませぬ。明日は?来年は?

詩が好きな人、詩を書いてみようと思っている人。おられたら「石見詩人」「山陰詩人」「践草詩舎」「島根年刊詩集」を読んでみてください。5月27日に大田市のパストラルで島根県詩人連合総会を開きました。出席者は少数でしたが、熱心な人が新たに参加され、とても心強く、励みになりました。(ブログ 詩の散歩道 詩集紹介 すはま )

H30 詩「はるかな土地の記憶」出雲國風土記より(「詩と思想」5月号)

2018年㋄号で月刊誌「詩と思想」が、「私の記憶/風景」という詩の特集を組みました。作品と写真の原稿依頼があり、私的な記憶より,「出雲國風土記」を読んだ時の不思議な感覚がずーっと記憶に残ってたので、その原文を中心に据えて詩らしきものを書いてみました。
「出雲國風土記」は、713年に元明天皇から報告を命じられ、20年後の733年に完成しています。当時は「解」と呼ばれ、平安時代になって「風土記」と呼ばれるようになったそうですが、奈良から来た役人ではなく出雲の人間が書いていますので、奥深さがあります。初めの方に出てくる「くにびき神話」の文章を読めば圧倒されます。大空から眺めたような宇宙的な視座、遥か7千年前には今の平野は海で、島根半島が遠くに島のように浮かんでいた記憶、斐伊川の土砂で海が狭くなっていった記憶などなど、遥かな記憶が底に揺らめいています。そして何よりも当時は朗誦したと思える口調やリズムの素晴らしさ。それが歌謡のように4回繰り返されます。

原文のすばらしさを味わってほしくて、詩の形式で書いた変な詩です。次のPDFにコピーがあります。
H30,5 詩「はるかな土地の記憶」詩と思想5月号
写真は、大社の稲佐の浜から、園の長浜、遠くに佐比売山(三瓶山)を遠望したものです。当時この白い砂浜は、三瓶山から延々と伸びて日御碕の半島をつなぐ帯のように見えたことでしょう。発想がステキです。(ブログ 詩の散歩道 試作品 すはま)