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1940年、島根県邑智郡邑南町下亀谷生まれ・現在、大田市久利町行恒397在住・早稲田大学教育学部英語英文科卒・邇摩高校、川本高校、大田高校で演劇部を担当、ほぼ毎年創作脚本を執筆。県大会20回、中国大会10回出場(創作脚本賞3度受賞)主な作品「廃校式まで」「それぞれの夏」「母のおくりもの」「星空の卒業式」「僕たちの戦争」「峠の食堂」「また夏がきて」「琴の鳴る浜」「石見銀山旅日記」「吉川経家最後の手紙」「父の宝もの」など。 著作:「洲浜昌三脚本集」(門土社)、「劇作百花」(2,3巻門土社) 詩集「キャンパスの木陰へ」「ひばりよ大地で休め」など。 「邇摩高校60年誌」「川本高校70年誌」「人物しまね文学館」など共著 所属・役職など: 「石見詩人」同人、「島根文藝」会員、大田市演劇サークル劇研「空」代表、島根県文芸協会理事、大田市体育・公園・文化事業団理事、 全国高校演劇協議会顧問、日本劇作家協会会員、季刊「高校演劇」同人、日本詩人クラブ会員、中四国詩人会理事、島根県詩人連合理事長、大田市文化協会理事

H24 第12回中四国詩人会 岡山大会

充実した岡山大会と牛窓の旅     ー第12回中四国詩人会ー                        洲 浜 昌 三

(島根県詩人連合の会報に書いたものです。ここでは写真をつけて紹介します)

平成二十四年度の中四国詩人会大会は岡山市の「ピュアリティまきび」で10月13日に開催されました。岡山駅の改札口で、「中四国詩人会」の看板を持って立っておられた高田千尋さんたちの姿を見て驚くとともに、熱い思いが湧きました。
DSC04048                (蒼わたる実行委員長のあいさつ)
総会には来賓招待の山陽新聞編集局文化部長、毎日新聞岡山支局長、岡山県生活環境部長を含め約80名が出席。岡山からは50名近い参加者で、岡山の詩人の層の厚さと積極的な協力姿勢にいつものことながら圧倒されました。 実行委員長の蒼わたるさんをはじめ27名もの会員で実行委員会をつくり、万全を期して準備されたことが端々から覗える大会でした。
DSC04071       (まきび会館から岡山駅方面をパチリ。大きな建物が解体され整地中でした)

総会は山本衛会長の挨拶のあと、役員や決算、予算を承認し、中四国詩人賞表彰式が行われました。受賞詩集は河邊由紀恵さんの「桃の湯」。選考委員長の井上嘉明さんの評の一端を紹介します。  「独自性のある言語感覚で紡がれた世界に惹かれた。言葉はふくらみを持ち、しなやかで豊かな想像力をひそませ、芳しい匂いすらした」  河邊さんは倉敷市在住、4人の子育てが終わってカルチャーセンターに通い、詩を書きはじめたそうです。「クラゲのように透き通るようなしなやかさの中に、ほの暗い生がどこかで息づいている」感覚的な世界が浮かび上がってきます。
DSC04055                          (受賞詩集から詩を朗読する河邊さん)

自作詩朗読では各県から八人が朗読。島根からは久しぶりに閤田さんが参加し、存在感のある詩「星明かりの道」を朗読しました。  今年の講演は会員で岡山の岡隆夫さんで、「英米現代詩とわたしの詩論」と題して話されました。岡さんは岡山大学名誉教授で、ディキンスン研究の第一人者。今年一月に刊行された「岡隆夫全詩集」は第二十詩集になるというエネルギッシュな実作者でもあります。とても示唆に富む講演でした。特に印象に残ったことを二つだけ挙げてみます。  「リアリズムとモダニズムは日本にはない。いきなりポストモダニズムの波を受けた」  「詩の存立の主な要件ー第一、作品のキーワード(イメージでもいい)がクリエイティヴな想像力によって新たなものに変質しているか。第二、既存の歴史的文化的価値観に新たな理念。第三、前者に相応しい独自の詩型・リズムがあるか」  後半は対談で、相手は岡山の詩人・くにさだきみさん。詩集や評論集が二十冊を越えるというこれまた実績のある詩人。朗読での美事なエロキューションに感銘を受け、明晰で的確なやり取りに知的爽快さを覚えました。後で知れば80歳とか。
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(立石さんの語り「桃太郎」)

アトラクションは立石憲利さんの語りで、「桃太郎」。岡山民俗学会理事長で採集した民話が7000話以上。自ら方言も駆使して「語る」という役者でもあり、表現が巧みで惹きつけられました。後で聞くと、「桃太郎」は時代や地域により様々な要素が加わりそれぞれ違うそうです。  10年前、立石さんの民話を新聞で読み、それをヒントに石見銀山の庶民と重ねて「出口がない」という民話劇を創作し、大森で上演したことがあります。10年たってやっとお礼を言いました。  懇親会は約60名。重光はるみ大会事務長の司会ではじまり、チェロ演奏、高田千壽岡山詩人協会長の挨拶、歓談、最後は中桐美和子大会副実行委員長の閉会のことばまで、あっという間の時間でした。
DSC04079                                          (竹久夢二の生家の前に立つ島根の川辺さん)

翌日は貸し切りバスで竹久夢二郷土美術館、夢二の生家、正富汪洋詩碑、牛窓オリーブ園、牛窓神社を訪ね、牛窓の町を散策しました。
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大会副事務長・森崎昭生さんのガイドで初めて見る風景や名所を楽しみました。瀬戸内海を見下ろす眺望は心身を解放してくれました。  来年は香川県です。香川は会員7名で開催にも苦労が伴うと思いますが、宮本光さんは別れ際に、「ぜひ来てください。歓迎します」と力強い言葉を残して帰って行かれました。
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みなさん、おつかれさまでした。岡山のみなさんお世話になりました。

H24 出雲高演劇部最優秀賞 全国大会へ!

速報です!号外でーす!またまた快挙でーす!
11月23,24日、山口県の周南市文化会館で開催された中国地区高校演劇発表大会で出雲高校演劇部の創作劇「ガッコの階段物語」(伊藤靖之作)が最優秀賞に選ばれました。今年は2校全国大会へ行ける枠があり、広島の沼田高校とともに来年夏に長崎県で開催される全国大会に出場するそうです。

松江工業高校の「贋作マクベス」(中屋敷法仁作)は三位に相当する賞を受け、来年春に福島で開催される春の全国大会へ出場することに決まったとか。これまたスゴイ快挙です。この春には安来高校が出場し、富山で行われた夏の全国大会には三刀屋高校が出場しました。

以上のニュースは先程大会を終えた出雲高校の伊藤先生が電話で知らせてくださったものです。今年の県大会は石見演劇フェスタとピタリと重なり、残念無念、観劇することができませんでしたが、出雲高校の脚本の概要を浜田で聞いたとき、今日の予感がありました(アトズケダ!チョウシニノルナ!イヤイヤ ノンノン ホントウデス)。今までの出雲高校のみなさんの洗練された演技や舞台を知っていますし、伊藤さんの脚本の魅力も昔から知っていました。今回はその脚本がさらに工夫され、誰もができない東北大震災を暗示させる舞台だったとか。昨年の劇に今回の劇の萌芽がありました。

中国地区事務局長・沼田高校の黒瀬先生や島根の事務局長・伊藤先生から丁寧な中国大会の案内がありましたが、これまた日にちが重なり大分県へ6人の中学の同窓生と行くことになっていて、残念無念、中国大会には行けませんでした。

みなさん、おめでとうございます。おつかれさまでした。

 

末安 哲著 『わたしの高校演劇』刊行

2011年1月、岡山県の末安哲先生が『わたしの高校演劇』を出版されました。327ページというボリュウムのある濃密で充実した本です。

上演記録や部長のたちの回想、その時の部員たちの様子を再現し、舞台写真もたくさん載せ、その時の様々な出来事や思いなどが綿密に書かれています。記録としても貴重ですが、一人の演劇部顧問がどのように演劇と格闘してきたか。その熱い思いが伝わってきます。

(舞台写真や関連記事ががたくさん載っているのも大きな特徴です。長期にわたって意識的に記録や資料を集めていないとできない本です。)

先生の顧問歴は次の通りです。昭和38年~笠岡商業高校、昭和41年~岡山工業、昭和49年~岡山朝日高校、昭和57年~岡山一宮高校。

最後に、あるページをちょっと紹介しましょう。若き日のはつらつとした先生の姿が蘇ってきます。

貴重な本をお贈りくださり、ありがとうございました。

2013/1/10追加します。2012年12月12日、「演劇に燃えた高校生たち〜岡山朝日高校演劇部史 1948〜2012」が刊行されました。末安先生の編集です。厚さがなんと416ページ!写真もふんだんにあり、上演記録、卒業生や関係者の回想、対談など満載です。これだけの本を作られたらエネルギーを吸い取られるのではないかと心配になりますが、普通人の3倍のエネルギーがあるからできる業ともいえます。

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朝日高校の演劇の記録だけではなく、岡山の高校演劇の記録にもなっています。こういう人たちがあちこちにおられたから戦後の高校演劇も燃えるような勢いがあったのですね。それは島根も同じです。貴重な本を贈っていただき、ありがとうございました。

H24 島根高校演劇大会 松江工、出雲 最優秀

2012年10月27,28日、第36回島根県高校演劇発表大会が出雲市加茂町の加茂文化ホール・ラメールで開かれました。8校が出場し松江工業高校、出雲高校が最優秀賞を受賞し、中国地区大会へ出場します。第50回中国地区高校演劇発表会は11月23,24日、山口県の周南市民文化会館で開催されます。

大会当日は浜田で「石見演劇フェス」があり、劇研空は「石見銀山旅日記」で参加しましたので、県大会はみられませんでした。いままでほとんど欠かさず行っていたのですが、残念ながら写真も資料もありませぬ。

しかし、11月3日のこのブログの閲覧グラフを見ると、高校演劇関係でvisitされる人も大変多い。「35回島根県高校演劇県大会」や、「H23高校演劇広島県大会」「亀尾佳宏脚本『三月記』を読む」等々です。そこで今年度の県大会の結果だけでも紹介しておくことにしました。

まず石見演劇フェスタで上演した浜田高校の舞台写真です。劇の題は「ホット・チョコレート」(曽我部マコト作・浜田高校演劇部潤色)。


出雲高校は顧問の伊藤先生の創作だったと、浜田で木村先生から聞きました。東北大震災のことを組み込んだ意表をつく劇だったそうです。昨年の出雲高校も東北大震災を覗わせる意欲作でした。

伊藤先生は亀尾先生と並ぶ島根の誇る書き手です。二人の作品の傾向は違いますが、伊藤作品には劇の本質みたいなものがあります。東北大震災を素材に舞台化したことも貴重です。東北大震災のような大きなテーマはそのまま真正面から舞台化するのは無理です。伊藤さんの舞台は文学・芸術の本質的な要素を活かした視点からの舞台化ですあえて言葉でいえば「象徴化」とでもいうのかな)。高校演劇を越えた普遍性を持つ可能性も秘めています。中国地区大会での上演と評価が楽しみです。

松江工業高校は男子が多く、劇が生き生きとして躍動感があったそうです。昨年もそうでしたね。舞台装置も工夫されていたし、男性のしっかりした演技も魅力的でした。少し荒削りなところがあちこちにあり、それがざんねんでしたけど。

残念ながら、浜田高校しか上演題目はわかりませぬ。だれかパンフレットを送ってくれないかなぁ。(Don’t depennd on others! )  過去数十年のパンフレットをファイルで保存しているので・・・。(「ソウリョウハダスカ」「モチロンデス」「アテニセズマッテオレ」「ハイマチマセヌ」)

井上嘉明著 評論『鳥取の詩人たち その他』

鳥取のの詩人・井上嘉明さんが2012年7月に詩の評論集を出されました。258ページ、1500円、発行所は流氷群同人会(鳥取市生山54 井上方 0857-51-8459)。10月14日の山陰中央新報、読書蘭で書評を書きましたので紹介します。井上さんは詩誌「日本未来派」「菱」の同人、文芸同人誌「流氷群」編集同人、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、中四国詩人会に所属、現在は鳥取県現代詩人協会会長です。

 

井上嘉明著「鳥取の詩人たち その他」         隙間を埋める綿密な評伝  

この本は、著者が所属する詩誌「菱」、「日本未来派」や「鳥取文芸」「流氷群」「日本海新聞」などに五十年間にわたって執筆した詩人の評伝や詩人論、詩論などを一冊にまとめたものである。  多数の詩人や詩集が長短様々な評論で取り上げられ、詩人の未知の部分が明らかになり、生き様が浮かび上がってくる。  本は二章で構成され、第一章は「鳥取の詩人たち」で十七本の評論がある。冒頭は伊良子清白。「伊良子清白の岳父・森本歓一のこと」「清白の義母しまとその周辺」「清白と千代川」「清白終焉の地へ」など。

清白は詩集「孔雀船」で有名な詩人。明治十年鳥取市河原町で生まれ、生後母と死別、義祖母に預けられ、九歳のとき医者の父と大阪へ移り、京都医学校を卒業。その後は横浜、大阪、島根(浜田)、大分、台湾、三重県と漂白を余儀なくされた。著者は清白の家族関係や土地との関係を綿密に調べ、足跡をたどり、終焉地の大紀町を訪ねる。清白に関しては多くの著書があるが、欠落していた細部を埋める貴重な評論である。

つづいて「尾崎翠と高橋丈雄の周辺」「尾崎放哉と定型詩」。山下清詩集「白銀の大山」、清水亮詩集「軍歌時代」、田熊健、小寺雄造の詩人論。いずれも端正な筆運びで詩の特徴と詩人の拠って立つ基盤を浮き彫りにする。

第二章は二十本の評論や詩論から成る。「朔太郎と〈防火用水〉」「三好達治と〈馬〉」「金子光晴と〈水〉」、さらに中野重治、木原孝一、石垣りん、田中房太郎、西岡光秋、などの著名な詩人たちの面白いエピソードや著者との交遊などが伸び伸びと書かれ楽しい。

この章の最後には「戦後詩に出会うまで」「詩とカフカ」「あるがままの〈物〉」など著者自身の詩歴や詩論などが置かれている。どのように詩と向かい合ってきたか。十冊の詩集がある井上詩の核が垣間見える。

あちこちに書かれた貴重な評論をまとめて読めるのはありがたいことである。   (日本詩人クラブ会員 洲浜昌三)


2012年10月、中四国詩人会・岡山大会で、中四国詩人賞選考経過を発表する井上さん。受賞は岡山、河邊由紀恵さんの詩集『桃の湯』。とても深い読みでしかも的確な評価を端的に紹介されました。河邊さんの詩集についてはこのブログでも紹介しています。

岡山大会についてはそのうちこのブログで紹介します。

H24 しまね文芸フェスタ 三枝昴之先生の講演

2012年9月23日、益田市のグラントワで、第10回島根県民文化祭「しまね文芸フェスタ2012」が開催されました。今年は短歌部門が担当、津和野の水津正夫さんが会長で前日の夜には島田屋で講師の三枝先生の歓迎会が開かれました。

グラントワはとても広くゆったりとしています。廊下を歩いてもその広さに圧倒されますし、部屋数の多さにもびっくりします。(大田とクラベルナ!)

中庭です。真ん中に水が張ってあります。回り廊下を歩きながら眺めることができます。中央の高い建物は中ホール。大ホールは左手にありますが、見えません。みな石見の赤瓦が使われています。石見特産のものを誇りを持って堂々と生かす。いいですね。

横道にそれました。前夜祭の写真です。当選されたばかりの山本浩章市長や益田の文化協会会長・中野傅さん市会議員も出席。月森遊子俳句協会会長、竹治ちかし川柳協会会長、洲浜詩人連合理事長、高田賴昌「石見詩人」編集者、川辺真島根県詩人連合事務局長も。散文の池野会長などが別の講師の接待で欠席でした。初めてのことで、ちょっと寂しい会になりました。短歌の加藤さんが講師紹介をされましたが、講師の三枝先生からの挨拶がなかったのも初めてのことでちょっと残念でした。(月森、竹治、洲浜3人が大田人とは、ドウシタコトデショウ)

若いさわやかな山本市長や講師の三枝先生のところへ挨拶に行き、立ち話をしました。先生は早稲田の政経学部卒ですが、教育学部のぼくと「2年間在籍がダブっているかもしれませんね」と言われました。何も知らずに大学のキャッンパスですれ違ったことがあったかもしれません。短歌での先生の経歴や受賞歴は数知れません。日本短歌会の重鎮です。昨年は紫綬褒章を受章しておられます。

さて、23日の三枝先生の講演はとてもいい講演で学ぶことがありました。演題は「短歌、1300年の魅力」深い内容の話しでしたが、筋の建て方も明確で、資料も用意され、とても分かりやすかった。短歌で例をあげて具体的に講演されたのですが、5つに単純化してまとめておきます。

1.短歌は日々の暮らしを詠う日記代わりの詩型である。

2.短歌は独特の力を持った表現である。

3.短歌発生の諸説の一つ、折口信夫の「まれ人信仰」

4.短歌は日本人の感受性の基本を作ってきた。

5.短歌は人生を反映した長距離ランナーの詩型である。

どの講演でもそのすばらしさは、具体例とその説明や講演者独自の感性による解説にありますが、ここでそんなことを書く暇はありません。5本の骨だけです。美味しい肉は想像してください。

ぼくは講演を、詩に置き換えて聞いていました。1や2、5については正に詩にも当てはまります。長い間書いていけば、だらだら日常を書いた日記より、遙かにエッセンスが凝縮した日記になります。日記は私的なもので公表できませんが、詩や短歌なら本にしたり、雑誌に発表し第三者の厳しい目にさらして批評され、さらに高みを目指す動機にもなり、客観性や普遍性を持った文学にもなります。

2についても同様です。短い言葉は長い説明より遙かに力(人の心を動かし感動させる)を持っています。詩の朗読などは短歌よりも力があるでしょう。

講演の中で河野裕子さんの短歌を紹介されました。他界されたそうですが、永田和宏さんが夫で三枝さんの友人だそうです。永田さんの県民会館での講演も素敵でした。

午後は詩の分科会へ出ないといけないのですが、浜田の「石見演劇フェスタ」で上演する『石見銀山旅日記』の初めてのリハと打ち合わせがあり、やむなく浜田へ行きました。

浜田へ行こうと急いでいると、グラントワの廊下で三枝先生にばったり会いました。「とてもいい講演でした。ありがとうございました。講演の中で話された永田先生には数年前に松江で素晴らしい講演を聴かせていただきました」とsuhama said.

益田の駅前が大きく変わっていてびっくりしました。昭和40年から6年間住んでいたのですが、いまは北欧のどこかの街へ行ったかのようです。タクシーの運転手に「街がかわりましたね」と言うと、「駅からグラントワまではね。道は広くなって立派になったけど、人はほとんど歩いちゃおりません」とthe taxi driver said to me.

H24 9/23 益田でしまね文芸フェスタ

2012年のしまね文芸フェスタは益田市のグラントワで開催されます。午前中は「短歌、1300年の魅力」というタイトルで三枝雄昴之先生の講演があります。午後は短歌、俳句、川柳、詩、散文の分科会です。詩部門では自作詩の朗読と合評会を計画しています。

 

誰でも自由に参加できます。島根にいて三枝先生の講演を聴く機会など滅多にありません。きっと得るものがたくさんあることでしょう。楽しみです。22日には益田の島田屋で三枝先生の歓迎会があり出席します。

 

 

 

 

方言詩 「水車」

水 車

洲浜昌三

中国山地の中の小(こ)まぁ盆地の村だったが
亀谷川が流れとって どの家にも水車があった
近くを通りゃ ばしゃばしゃばしゃばしゃ
水の音がして ギーコトン ギーコトンちゅうて
ひんごて杵(きね)の音がしよった

うちの下(しも)の井坂にゃ大きな水車があって
商売にしとりんさった 可部広屋の水車ぁ水の
勢いが強かったけぇ速かった
田んぼの中の谷田屋のはゆっくり回っとった
山裾の上新屋(うえにいや)のは道のすぐそばにあったけぇ
小屋の中ぁ見るんが楽しかった
紺屋(こうや)にゃなかったが近くの上新屋のを
使わしてもろうとりんさった
熱田屋(あつたや)は本家の袋地(ふくろじ)の大きな水車と一緒だった
富屋にも前新屋(まえにいや)にも新屋(しんや)にも
川手屋にも立派な水車があった。

なんでか知らないけど 植田屋と隣の高畦(たかぜ)にはなかったので
よその水車でついてもろうた
植田屋の子のぼくは
貧乏だけぇ水車がないんだと思うて寂しかった

石見方言です。方言は文字に書くと大事なものがほとんど消えてしまいます。
ぼくが生まれた邑智郡瑞穂町下亀谷の昔の風景を思いだしていたら、水車が
が浮かんできました。ほとんどの家に水車があったことに気がつきました。
ちょっとした工夫でまた水のエネルギーなども利用したいものです。

みどりの風景の中に 石見特有の赤瓦が映えています。田んぼの中を一本道が通っていました。
「中道路」と呼んでいました。右側の家は「谷田屋」その奥が「上新屋」です。ぼくが生まれた
「植田屋」は左側ですが、見えません。わら屋根の家は解体され協和建設の事務所と仕事場が
建っています。右の山は「二つ山」鎌倉時代の古城跡が残っています。
子どもの頃はこの集落一を週して走りっこをしたものです。

短詩  「夢のデパート」さんのあ

夢のデパート

洲 浜 昌 三

本棚を整理していると
「文集アソカ」が何冊も出てきた
四十五年間 幼稚園で発行されつづけた
親と先生と子どもたちの思い出の記録集

「夢と思い出」のページに
「行きたい所はどこですか」という質問があり
「さんのあ」
とたくさんの子どもたちが答えている

ノンちゃん
その「さんのあ」がなくなるよ

地下一階 地上四階 屋上
市内唯一の立体駐車場

大田の中心街に堂々と建っていた「さんのあ」
ぼくらがフランスのパリへ憧れるように
行ってみたい夢の場所だったんだね

昭和49年に開業以来 ピーク時には四〇億円の
売り上げに達したが 郊外型の大型ショッピング
センターができて以来 売り上げが激減 負債総
額は約十五億円

と新聞にある

子どもたちの
夢を育ててくれたアソカがなくなり
子どもたちの夢だった「さんのあ」も消えていく

大田市文化協会が発行している「きれんげ」という会報があり、俳句、短歌、川柳、行事、石見銀山の歴史、人物・サークル紹介など多彩な記事を載せています。A4版でページで年3回、約1000部発行され好評です。他市の文化人から「格調の高いいい会報だ」と言われたことがあります。

10年くらい前から編集委員会に依頼されて短詩を書いています。詩人だけが読む詩の同人誌や詩集と違い、詩なんかほとんど読んだことがなく、難しいと敬遠している人たちが大多数ですから、分かりやすくて心に響くような詩を書いてきました。もう30編以上になります。一般の人を対象にした冊子に、詩を載せてくれるような編集者はまずいません。それを思うと、この場を提供してくださる編集者に感謝し頑張って書いています。

アソカ幼稚園が発行していた卒業記念文集に、「一番行きたいところはどこですか」という質問があり、多くの園児が「さんのあ」と答えていました。それがとても印象に残っていて、この詩が生まれました。以前は「さんのあファミリーデパート」が大田市唯一の何でも売っている店でした。都会に出て行った人たちに、「さんのあが倒産したよ」といえば、きっと大田が真っ暗闇になるようなショックを受けることでしょう。

「さんのあ」は今の時点(平24,8,8)ではまだ建物は建っています。看板などが危険なので市が予算をつけて取り外す、という記事がでていました。利用の計画はないようですが、解体すれば大金がかかります。どうなるのでしょう。グロウバル化の流れで規制が緩和され、大型のショッピングセンターが郊外にでき、市内の店は崩壊していきます。同時に古い日本人の美徳や価値観も崩壊していきます。合理的、自由経済、便利、利益などを第一に優先すれば反面で失われていくものもあります。そういう批判の目も密かに隠してある詩です。

さんのあ解体中 (1)これはなんでしょう?解体中の夢のデパートです。
さんのあのあとにグッディこれは何でしょう?解体された夢のデパートの跡に誕生した「グッディ」です。(2016,3,8)

 

 

H24 三刀屋高演劇部 全国大会(富山)で上演

2012年度の高校演劇全国大会は富山市で開催されます。中国地区からは三刀屋高校が代表に選ばれて出演します。顧問の亀尾先生の創作で「ヤマタノオロチ外伝」。神話をもとにした異色作です。昨年の島根県大会で講師として審査に関わりましたが、劇作りのうまさは圧倒的でした。観客を巻き込んでいく力とでもいうのでしょう。富山大会でもきっと観客を惹きつけることでしょう。

全国高校演劇協議会(事務局長・吉田美彦 大阪府立北摂つばさ高校内)が発行している新聞・「演劇創造」124号から紹介させていただきました。

高校演劇劇作研究会(事務局長・柳本博、獨協高校内)が発行している季刊「高校演劇」も富山大会上演作品特集号を発行しています。各校の脚本を読むことができます。定期購読すれば一年分で6千円、大会 特集号だけ購入する場合は1500円です。毎年大会会場で販売しています。高校演劇に関わる人はこれを読まないと全国の様子が分かりません。

そこでPRもかねてパチリ!310ページもあります。劇作研究会は元顧問や現役の先生が中心です。モトコモはほとんど脚本を書いて載せることはありませんが、15000円の年会費を払って発行を支えています。編集委員や事務局の人たちは錚錚たる脚本家たちばかりですが、まったくボランティアでこの本の発行に献身しつづけておられます。高校演劇への愛着が為せる奉仕でしょう。継続的な雑誌の編集は時間や労力などとても大変なことです。よくやられるなぁ、と遠くにいて何もしないぼくはだだ敬服し届かない感謝の言葉をいつもつぶやくのみです。せめてPRだけでも、とコウカのない文字を打っています。

その本には上演校の地区大会での写真も掲載されています。三刀屋高校の劇が載っているページをちょっと紹介させていただきます。
各校とも独創的でおもしろそうですね。

劇作研究会の総会と懇親会も毎年開催されますし、三刀屋が上演するのではるばる富山まで行くつもりでいましたが、盆前後は俗人には世俗のつきあいもあり遠いしトマルトコモナイシ残念ながらあきらめました。現役の時のように6月頃から参加者を募り宿泊の申し込みも一任して車で一緒に行く、などという大昔の話しは遠くなりました。シカタナイカ、トシダシヒトリダシトオイイシ。はるか石見の地から健闘を祈ることにしましょう。そして例年8月末ごろNHKで放映される東京公演の4校の劇を寝転んで見ることにしましょう。