2017年度の中四国詩人賞は倉敷市、吉田博子さんの詩集「母樹」(2016思潮社刊)に決まり、9月30日、徳島大会の総会で表彰式が行われました。
選考理由について「ニューズレター」から選考委員の感想の一部を紹介してみます。
選考委員長の長津さんは、「自分の言葉で語り豊かな愛の眼差しにあふれている詩集」と端的、的確に評しています。「作者の切実な思いがストレートに伝わり心に強く響いた。~小さなもの弱いものに視点を当て、健気に生きようとする姿に自分を重ねてエールを送っている。その姿に共感した」(重光さん)「地上にあるすべてのいのちに注ぐ、大きな愛を感じる。書かざるをえなかった作者の強い想いが、自然体で書かれた言葉によって、まっすぐに伝わってくる」(壺阪さん)。吉田さんの詩の特徴がよく表現されています。
一篇だけ短い詩を紹介します。吉田さんの優しい眼差しや、包むような大きな愛が感じられます。
「守る」(吉田博子詩集「母樹」より)
虞美人草の茎が
ぐぐっと伸びた
それを
長い葉が
いくまいも巻いている
抱きしめるように
中にはかたく丸い蕾があった
母が子をいつまでも慈しむように
守る ということは
こういうことなんだ と
大切に包むこと
心をそぉっと
身体をまるごと
いのちを包む
生きているかぎり
子を守る
玉のように抱いて
( 写真は、詩集「母樹」から詩を朗読される吉田博子さん)
吉田さんは1943年の生まれで、詩歴が長いだけではなく旺盛な執筆活動をしてこられました。この詩集は第11詩集です。詩画集や詩選集、エッセイ集もあります。第一詩集は「花を持つ私」ですが、なんと!倉敷青陵高校二年の時の刊行です!序文を国語教師であった井奥行彦さんが書いておられます。井奥さんは伝統のある同人誌「火片」の主宰者で詩の大先輩です。さらに講師で来られた詩人、永瀬清子氏に出会って「黄薔薇」の同人になり、吉田さんは、現在もそこで活躍しておられます。詩活動が盛んな岡山で、優れた詩人に出会って大きな影響を受けてこられたのでしょう。
写真は、書棚にある吉田さんの詩集の一部ですが、表紙も色彩にあふれとても豊かなものが伝わってきます。ぼくは「コールサック」70号に、詩画集「聖火を翳して」の書評を頼まれて書いたことがありますが、絵も詩もとても豊かな詩画集でした。忘れてはいけないのは、悲しみや苦しみを体験し、それを昇華して生まれた豊かさだということです。
長年の真摯な詩活動の中で生まれた一冊の詩集が、このように評価されたことはうれしいことです。(ブログ 詩の散歩道 中四国詩人会 すはま)