鳥取市と岩国市姉妹都市締結30周年を記念して鳥取市民会館で開催された公演は大変好評のうちに終わりました。力強い吹奏楽(岩国ウインド・アンサンブル 指揮、田中健一)の演奏と7名の合唱(石見吉川合唱団)。そして歴史を紹介するナレーション(奈羅尾玲子)、山縣長茂の語り(小菅紘史)で構成した異色の舞台でしたが、大きな感動が客席に伝わりました。
実行委員長の白石健一郎さんと田中健一さんが令和6年3月に我が家へ来られて今回の企画のために脚本を依頼されました。壮大で夢のような企画にびっくりしましたが、若い二人の夢と情熱、行動力に共鳴して乗ることにしました。これまでのレガシーがあったからです。
長茂が84歳のときに鳥取城落城前後の仔細を書いて吉川経家の子孫へ残した「覚書」を1975年頃に読んだときには感動しました。その後福波小学校の廃校記念に経家の脚本を依頼されて「吉川経家最後の手紙」を書き、劇研「空」でも朗読劇として公演していました。いつか劇として公演したいという夢はありましたが、遥か彼方の夢でした。しかし、長茂の「語り」を中心にすれば面白い舞台ができるだろうという確信はありました。しかしその「語り」には力量のある人が必要です。それが今回実現しました。「鳥の劇場」の小菅さんが見事に演じてくださいました。僕が想像した以上の表現力でした。特に、子供たちへの遺書の朗読と辞世の句の朗詠の時には涙が滲んできました。僕は演出という担当でしたが、2、3度注文をだしました。即理解し即表現されました。それはナレーションの奈羅尾さんも同様でした。深い理解と深い表現力が身についているので、即理解し即表現できるのです。お二人には感謝です。
最後の合唱(渡口公康作曲、洲浜昌三歌詞)もステキでした。痛ましい鳥取城の惨状と経家の願いや心情が広い空と悠久の歴史の中へ溶け込み広がっていくような感覚を味わいました。作曲の渡口先生にも感謝です。
現在の鳥取城です。どんな天守閣が建っていたのでしょう。ビルもない戦国時代を想像すると、広い鳥取平野の彼方に聳える久松山の頂上に立つ天守閣は「天空の城」。見事だったことでしょう。下の写真は頂上。木が伐採され石垣が見えます。再現したい!(今は空想で)
鳥取、岩国、大田の関係者のみなさん、ステキな記念公演でした。実行委員皆さんの確実な実行力と運営にお礼を申し上げます。会館スタッフの皆さんへもお礼を申し上げます。みなさんおつかれさまでした。
(ブログ:劇研「空」演劇だより 観劇 20251105洲浜昌三)
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R7,大田三中文化祭全校劇は「Make Someone Smile」(11/2)
大田第三中学校の全員参加による演劇発表は2016年の「ヌチドチカラ」から10年目を迎えました。劇研「空」は当初から依頼されて演劇指導に関わってきました。今年は10回目。台本は表題の通りです。英語劇ではありません。テーマはシンプルですが、それだけにかえって表現するには難しい劇です。
10月16日の午後2時間ばかり吉川、山本、松下、洲浜の4人で行ってきました。最初に短時間で「呼吸、発声、朗読」についてプリントを配って説明し、演劇が果たす教育的な素晴らしさについて話たあと、生徒さんたちのは発表を見て質問に答え、説明、提案、具体的な演技を舞台で演じました。2,3年生は経験者なので、発声もよく、ことばもきれいで感心しました。校長先生を先頭に全職員が見守ってくださる中で、生徒さんたちも熱心に練習しました。小規模校ならではの一体感。素晴らしことです。
生徒さんは少数ですが、三中の文化祭はとても内容が充実しています。昨年も100名近い人達が観劇されました。今年の写真はないので、昨年の「ふるさと」の舞台と、劇研「空」が学校へ送った感想文を紹介します。
R6,大田三中全校劇感想.20241112 jtd
次回の訪問指導日は10月30日午後1時50分~です。今回都合で来られなかったメンバーも参加します。よろしく。
(ブログ:「空」活動報告 演劇だより 全校劇20251018洲浜)
R7,「しまね文芸フェスタ」講師は川柳、新家完司氏(1/24 パレット江津)
平成7年度の文芸フェスタは江津で開催され、講師は川柳の新家氏です。近日中に現地実行委員会が開催される予定です。
午前中は島根文芸入選者の表彰式があり、その後11時10分から講演。午後は5分野の分科会です。昨日(10月15日)松江で詩部門の選考会が開かれました。事務局長の川辺さん、理事の山根さん、理事長の洲浜が出席し時間をかけて選考しました。ジュニアーの部は357篇の応募がありました。一般の部は20篇弱でしたが、読み応えのある作品もかなりありました。1月24日には表彰式のあと、入選者と合評会を開きます。

来年度文芸フェスタの担当は詩部門です。さて、どのような全体会にするか・・・いいアイデアがあれば提案してほしいな。前回はコロナ禍で大会は開かれず、詩人連合と大田市演劇サークル劇研「空」が共同し、「しまねの風物詩」と題して益田のグラントワで動画撮影をして発信しました。(今でも島根県のYouTube「しまねっこCH」で見ることができます)
以前は200~300人の文芸愛好家が集まり著名講師の講演に耳を傾けましたが、最近では若い人で詩や小説の創作をする人が少なく、高齢化とも相まって、文芸関係の講演は困難な状態です。前々回のように、谷川俊太郎さんとの対談で県民会館は満員!・・それは夢のまた夢として、100名を越える全体会にしたいけど、グッドアイデアが出るかどうか、楽しみです。
(ブログ:しまね文芸フェスタ 詩の散歩道 20251016洲浜昌三)
R7,「小泉八雲におけるポエジー」と入澤康夫の詩「ことば・ことば」
小泉八雲の怪談から7篇を取り上げて第14回「朗読を楽しむ」で発表するために、いろいろ調べていると、貴重なものが出てきました。平成16年に「小泉八雲没後百年記念」で入沢さんが八雲のポエジーについて講演されました。その時の6枚の資料の冒頭に「ことば・ことば」という詩が載っています。
ことば・ことば 入沢康夫
「愛する者同士にことばはいらない」といふ
それも ことば
「ことばよりも こころだ」といふ
それも ことば
「ことばは 神だ」といふ
「ことばなんか おぼえるんじゃなかった」といふ
それも ことば これも ことば
「これ」も ことば
「それ」も ことば 「も」も ことば
そして「ことば」も やっぱり ことば
ありとあらゆることば その向こう側に
いったい何があるか 知りたいかい
きみにだけ 教えてあげよう 内緒だよ
地霊(グノーム)みたいな黒いこびとが一人
悲しい顔をして しゃがみこんでいるのさ
入澤さんは、ハーンの「家庭の祭壇より」の一部を掲載しておられます。次はその文章の一部抜粋です。
「・・・わらわれの行為は、ことごとく、われわれの内部にある死者の行為ではないか・・・われわれの良心というもの、これだって、さまざまな善と悪を持った、無尽蔵の過去の経験の、受けつぎ受けついできた総和のほかの何者であろうか?・・・」
意識下、無意識の世界・・・そこからポエジーは生まれてくるとということです。ハーンの怪談にも言えることです。
入澤さんは、松江市北堀町の生まれで八雲とは家が近くでした。詩人の大御所とまでいわれた大詩人ですが、残念ながら、2018年10月15日に他界されました。
詩集『わが出雲 わが鎮魂』は『出雲国風土記』に基づいて書かれた名作です。いつか、この詩集の朗読をしたい、というのが夢でした。入沢先生の歓迎会で酒席を共にしたとき、「あの詩は難解だといわれています。確かに難解ですが、ぼくは朗読すれば面白いと思っています」と言ったら、なんと!!数日後に、サイン入りの詩集とテープが僕宛に届きました!
テープに録音してあったのは、「交響詩 わが出雲」(諸井誠作曲 入沢康夫詞 合唱・二期会合唱団 管弦楽・NHK交響楽団 指揮・森 正)。聞いて、圧倒されました。
(ブログ:詩の散歩道 小泉八雲 入沢康夫 20250921洲浜昌三)
R7,第14回「朗読を楽しむ」紹介記事を紹介します
R7,第23回 島根県民文化祭「文芸作品募集」あなたの作品をどうぞ〆切9/12
今年度の文芸作品募集は、7月1日から~9月12日。入賞作品は本に掲載されます。昨年の応募作品数は次の通りです。( )内はジュニア数です)短歌365(359)俳句446(296)川柳442(134)詩15(211)散文18(7)
ジュニアーの部では小中学の先生の関心や指導が大きく左右します。学校で取り組んで応募される例が多くなりました。嬉しいことです。20年近く島根県の高文連文芸作品コンクールで小説と随筆の選考を頼まれていますが、今年は目下50篇近い作品を日々読んでいます。今日読んだ小説の中にも素晴らしい作品が数編ありました。いつも力作がたくさんあります。高校生も応募してほしいものです。昨年の作品集の表紙です。
僕の担当は詩ですが、今年も選考に参加します。若い人たちで文芸活動をする人が少なくなりましたが、応募して島根の文芸活動に活を入れてほしい。高校生にも期待しています。
全面が茶系統で字も読みにくいチラシですが、詳しいことは県のホームページ「島根県民文化祭」を見てください。
(ブログ島根文芸作品募集 島根詩人連合 20250815洲浜昌三)
R7, 詩「あの雲の下」~80年前8月6日の朝 不思議な雲を見た~
1940年8月6日朝8時15分・・・家の前の庭でノブちゃんと「陣取りごっこ」をしていた。幼児時代の記憶はほとんど薄れ、空白になっているが、この場面だけは、はっきりと蘇り動画のように動き始める。80年前の痕跡、アリバイ証明と平和を祈念して以前書いた詩を紹介したみたい。
あの雲の下 洲浜 昌三
さわやかな八月の朝
二人で陣取りごっこをしていた
中国山脈の盆地の小さな村の庭
ドォ ~~~~ン
突然 大地から湧き出たような鈍い音が響いた
家の中へ駆け込み
二人で 庭の片隅にうずくまった
五歳のぼくと 四歳のノブちゃん
雲ひとつない上平山の上空に
灰色の雲が滲むように広がっていった
「入道雲たぁ違うで」
大人も集まってきて 遠い雲を眺めた
異様な音 異様な雲
あのとき見えなかったものが
日ごとにはっきり見えてくる
雲の下の生き地獄
そして 戦争の構図 (詩集「春の残像」より)
昨年の秋、簸川町の須田栄典さんから「戦争中の郷土の様子を伝える教材がほしい」という要望があり、教師の会で県内の戦争関係の記録や証言を集めている」と言われ、メールでやり取りして大田でお会いした。島根から見た原爆の証言を残したいということで「九十九の白木の箱」を紹介。僕の証言と詩も記録集に載せたいと言われた。今年1月の山陰中央新報に大きく報道された。
この記録集は、「私たちのふるさとに戦争があった頃」として島根の小学校や教育委員会などに配布されるという。原爆といえば広島中心になるけど、島根からの証言や記録も貴重だ。劇研「空」は、第14回「朗読を楽しむ」(9月27日)を開催し小泉八雲の作品朗読と、創作朗読劇「あの夏 校舎は原爆病院だった」を発表する予定。興味がある方は、どうぞおいでください。
(ブログ:劇研「空」 詩の散歩道 詩紹介 20250806洲浜)
R7,松江工業高演劇部「お手紙かみかみ」全国大会上演(7/27)
7月27日が目前です。中国地区大会で最優秀賞を受賞した松工演劇部が香川県で開催される全国大会で創作劇「お手紙かみかみ」(亀尾佳宏 作)を16時10分から上演します。松工は平成15年に「笛男」で全国大会へ行っているので二度目です。「笛男」も優れた舞台で脚本は亀尾先生でした。今回の劇は島根県大会で審査員の一人として参加して観劇しましたが、過去にない視点から書かれた異色作です。優れた演出による無駄のない洗練された表現が強く印象に残っています。全国大会でどんな感想や劇評が頂けるか楽しみです。写真は県大会の舞台です。

タイミングよく山陰中央新報が松工演劇部を取り上げていました。更にグッドタイミングで、香川全国大会上演脚本を掲載した「高校演劇」(281号)が届きました。ぼくは、まだ高校演劇劇作研究会の会員です。この全国大会特集号は優れた脚本を読めるのでとてもありがたい本です。季刊も発行しています。
現職のときには全国大会へ何度か行きました。青森八戸大会では講師の一員として素晴らしい舞台を見ることができました。高校演劇もその頃より表現方法が進んでいる気がします。集団で表現するという傾向が強くなっています。
香川大会も素晴らしい舞台が目白押しです。楽しみにしています。松工演劇部のみなさん、「肩の力を抜いてのびのびと!」「おおお!!」(これはオオダコウ演劇部が上演前に輪を作って唱和する掛け声だった、イマハムカシノモノガタリ。
(ブログ:高校演劇 劇研「空」演劇だより 20250726洲浜)
R7,創作音楽劇「サヒメ」2月公演を目指し練習スタート
大田市合併20周年記念として企画されたこの公演は、一昨年年から市民会館を中心に関係者の間で話し合いが続いていました。脚本、演出、スタッフ、指導者、予算、後援などが決まり、実行委員回も開かれ、6月末に参加者募集も〆切られました。7月から合唱の練習が始まり、19、20日には東京から三浦克也さん、佐藤万里さんに来ていただいて「読み合わせ」をして20日には役も一応決まり振り付けなども行われました。

「サヒメ」とは、三瓶山の古名です。劇研「空」では、朗読劇「サヒメの大使命~海を越え石見の大地へ~」と題して数回発表していました。その原作を基に、佐藤さんが脚本を執筆。いろいろな意見を参考にされ、第三稿です。作曲は長坂行博先生。素敵な曲が沢山あります。楽しみにしていてください。

(大田市民会館前から見た7月19日午後の三瓶山、見る場所によって様々な姿が楽しめる)
「サヒメ」は「出雲国風土記」に出てくる名前ですが、次のような伝承があります。民俗学者だった白石先生の著書から紹介します。
三瓶山について(『島根の地名辞典』より 白石昭臣著
「大田市と飯石郡の一部にまたがる 休火山で、主峰の男三瓶山など環状をなす四山を総称し ていう。『出雲国風土記』にいう佐比売山のことで、サヒメが音転してサンベとなった。国引き神話での柱となった山であり、また太古、朝鮮半島からサヒメが切り殺された母より受けた五穀の種を携えてこの地に飛来し農業を広めたという死体化生伝承もある。サヒメは佐比売であるが、男三瓶と女三瓶の間に赤雁山、北麓に多根の地があり、また山麓八ヵ所の湧き水の地に佐比売山神社をまつっていて地区の発達の歴史がうかがわれる。 サは穀霊または砂鉄を示す語」
(著者は、昭和10年大田市生まれ。高校教員、大田高校では洲浜も一緒に勤務した。日本民俗学会評議員、日本口承文芸学会理事など)
サヒメの語源などには決定的な説はなく、「サ」は「小さい、可愛い」という意味もある。とすれば、「小さな女の子」という意味の可能性も高い。
この日、仕事の都合で欠席された方もあるので、キャストに変更があるかもしれない。公演は令和8年2月22日の予定。日々忙しい中、半年に渡る練習です。歌や台詞、表現などを楽しみながら少しずつマスターして、前回の音楽劇「琴の鳴る浜」のように、素敵な舞台になることを楽しみにしています。
(ブログ:劇研「空」創作音楽劇「サヒメ」20250722洲浜昌三)
R7,ピアノ発表会「ハートフルコンサート」を楽しむ(7/12)
昨年までは「あすてらす」のホールで開催されていましたが、今年は竹下ピアノ教室発表会は市民会館の中ホールで開かれました。3歳くらいの子供さんから高校生や大人まで多くの人達が演奏しました。
演奏は51曲あり、次のようなタイトルで分類されていました。
「オープニング」「初めてのステージ」「いろいろな国の歌、おどり」「バロック形式の音楽で貴族気分」「古典形式の音楽でα波を出そう」「ロマン派ってロマンチック」「いやしのメロディ、ポップスでノリノリ、弾き語り」「デュオコーナー」「なんだってショパン」「大人のコーナー」「卒業演奏」
幼児とお母さんの連弾も楽しく、後半のベテランの演奏になると曲の中に自然に引き引き込まれて音の流れに埋没しています。演奏前の先生の曲や生徒さんの紹介も味があります。
my granddaughters の連弾で「戦場のメリー・クリスマス」を聞きましたが、力強い演奏部分ではグッと胸にくるものがありました。戦場とクリスマス・・・地獄と天国を並置したこの言葉の凄さが曲から伝わってきました。思わず、ガザやウクライナの戦場と悲惨な姿が浮かんできました。
ホールと名がついていますが広い部屋、集会室です。大ホールは発表会にはいろいろな点で無理ですが、200~300席の舞台付きのホールがほしいね。「あすてらす」が使用中だったら(サンレディのホールが廃止されたので)この集会室しかない。懸命に演奏する子供達を遠くに見ながら、この子供達が未来の大田で生き、活躍してくれるんだ・・・と思いつつ、余計なことを考えてしまいました。演奏されたみなさん、おつかれさまでした。ありがとうございました。
(ブログ:地域情報 ピアノ発表会 20250717洲浜昌三)
