『石見詩人』132号のエッセイ紹介

島根県の益田市で発行されている『石見詩人』は、1956年(昭和31年)にキムラ フジオさんによって創刊された詩誌。高齢化の波は避けられず、同人も少なくなったが、主宰する高田賴昌さんはがんばっていい詩誌をつくりたいといっている。往時は季刊だったが、現在は年2回の発行になっている。

石見詩人132号

作品は少ないが、個性のある詩が載っている。岩石さんは島根にいたときは同人だったが、広島で長い間働き、数年前に子どもが住んでいる神戸へ移った。沈むかもしれないが船に乗らないか、と誘いを掛けたら乗ってくれた。宮川さんは益田の出身で、神戸に在住。不思議な縁から島根文芸の詩の応募を薦めたら金賞を受賞。受賞式で初めてお会いした。石見詩人へ誘ったという次第。二人とも貴重な同人である。
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ぼくは、「詩だけでなく、エッセイも充実したらどうか」と提案した手前、132号へ3ページのエッセイを書いた。詩に関するエッセイは書きたいことがあり、詩を書くよりもはるかに楽な気持ちで書けるのがいい。

2014、5 エッセイ「詩がいつの間にか外にある」石見詩人132号上下2段3ページ

H26 「いま島根の高校演劇は」(記事紹介)

いま島根の高校演劇はどうですか、と聞かれも、一般の人には答えようがない。情報がないから、何もわからない。スポーツ関係は新聞でも大きく報道されるが、文化関係はたまに結果が載るくらいである。
高文連の文芸作品コンクールにはすばらしい作品が集まり、作品集も毎年発行されているが、報道されたこともない。関係者だけが一生懸命がんばっている。読んでもらう努力もしない。この中から将来有望な文筆家や作家が生まれるかもしれないのに・・・。

「身内だけの活動は衰弱していく」「いいものは多くの人に知らせて励ましたい」ーこれは基本的な考えである。

DSC06214          (さて、これはどこの写真でしょう)

島根では演劇部がある高校は数年前と比べほぼ半減した。だから少子化の中で、衰退線上を一直線に下降しているーと思っている人も多いだろう。確かに部の数は減った。しかし演劇のレベルは向上し、夏の全国大会へこの12年間で8回、数年前から始まった春の大会(中国大会で2位に相当する学校)には3校が選出されている。ぼくが顧問だった頃には山陽勢が圧倒的に優位だったことを思えば、驚異的な数字である。(何故か?いつか書きたいが、時間とスペースが必要)

顧問も生徒たちもがんばっている。
高校演劇を応援することも目標にしている劇研「空」としては、このことを知って欲しいと思っていた。たまたま、松江で「島根文藝」創立20周年講演があり、山陰中央新報の文芸担当の人と久しぶりに会い、このことを話したら、「書いてもらえますか」といわれ、寄稿した次第。

中国地区大会が松江の県民会館(上の写真は正面)で開催される前日に掲載された。大会のPRにもなればと思って書いたので、いいタイミングだった。字数は限られているので、必要最小限のことしか書けなかったが、紹介します。

H26 新聞劇評「今島根の高校演劇が輝いている」山陰中央新

H26 38回島根県高校演劇大会観劇記(9校)

平成26年度の第38回島根県校校演劇発表大会は11月1、2日、島根県民会館中ホールで開催されました。地区代表9校がそれぞれすばらしい劇を上演しました。劇を観ながら思ったのですが、演劇部は一時よりかなり減っていますが、レベルはかなり高くなってきています。そのことは、ここ数年島根県の代表が中国地区大会を突破して全国大会へ出場している回数を見てもうなずけます。この12年間で夏の全国大会へ8回中国地区代表として出ています。

今年度特筆すべきことは、三刀屋高校掛合分校が初出場して好演したことです。来年が更に楽しみです。大会の講師は津和野高校を最後に退職されたベテランの大島宏美先生と劇研空の洲浜クンです。各校の劇について観劇記を、やっとこさどっこいしょで書きましたので興味がある人は覗いて行ってください。

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第38回 島根県高等学校演劇発表大会
11/1(土)10時~
①三刀屋高校掛合分校「僕たちのTAKASHI」亀尾佳宏 作
②三刀屋高校「羽と心臓と鎧」竹内万寿 作
③松江農林高校「のうりん日和」多田佳菜子 作
④浜田高校「ごはんの時間2い」青山一也 作 浜高演劇部潤色
⑤松江商業「ホーリーナイト」杉山 恵 作 川口多加 潤色(~16時50分)
17時~17時40分講師講評(洲浜昌三、大島宏美)

11/2(日)10時~
⑥開星高校「サヨナラブライド~see you Love Lie’d~」武庫次元 作
⑦安来高校「逝ったり生きたり」東尾 咲 作 安来高演劇部潤色
⑧松江工業「広くてすてきな宇宙じゃないか」成井 豊 作
⑨出雲高校「泳げ WATER BABYS」伊藤靖之 作 15時30分終了予定。

15時40分~生徒講評委員会・審査会(大島宏美 洲浜昌三 岩成紀子 安田礼子 今岡淳子)
16時30~17時20分 講師の講評、審査発表、閉会式

今年は島根で中国地区大会(12月20,21日県民会館中ホール)が開催されるので、代表校は3校。安来、松江工業、出雲高校に決定しました。とてもすばらしい劇でした。 中国大会では他校がどんな劇を上演するかわかりませんが、楽しみです。

観劇記中の写真は舞台風景として記録係の高橋育男先生が撮影されたものを許可を得て使用させていただきました。

どうぞ、ここがエントランスです。ノックじゃなくて、クリックしてお入りください。

H26 観劇記 「38回島根県校校演劇大会9校」上下段6ページ

吉田晴治さん最後の詩集『樹は』

吉田晴治さんは島根の詩誌『光年』の同人でしたが、2014年9月21日他界されました。79歳でした。前日に詩集の校正をされたそうです。その詩集の編集は『光年』の田中瑩一さんに依頼され、12月に発行されました。『樹は』は第三詩集です。

生前にお会いしたことはないのですが、詩に対して厳しく誠実な人だったことが詩集から伝わってきます。いくつかの詩は、ある覚悟をして書かれたのでしょう、不安や怖れが語句や行間から空気のように立ち昇ってきて、厳粛な気持ちにさせられます。「真実の言葉をいかにして紡ぎ出すかを考えて来ました」とあとがきにあるように、数少ない真の意味での詩人でした。

詩集の表紙と一篇の詩を紹介しましょう。

H26 吉田晴司詩集「樹は」

詩集の中から「さくら」という詩を紹介します。

さくら(1)(184ページ)

わたしは どこへいくのか

三日のあいだ花のもとに坐り
花を見上げ 空を見上げ
月を見上げ
花のもとに笑ってみた
艶やかで強靱な幹のもとに
眠ってみた
仰向けに寝そべって
見上げた花もある
娘十八 番茶も出花…
これは鼻うただったのだが

今朝からの風向きが怖い
池の波も荒くなった

凄まじいあらしだ
野良犬までも逃げて行く
わたしは立ちあがる
からだが震える
三日のあいだよ さようなら
三日の花よ さようなら

わたしは
これからどこへ行くのか
わたしは どこへ

 

夏には『光年』で特集が組まれる予定だそうです。お礼の手紙を田中さんへ出しましたが、特集に寄稿を依頼されています。11月20日付けの山陰中央新報の文化欄に、岩田英作さんが、「出雲の自然から真実紡ぐ」というタイトルで、詩集と吉田さんを紹介しています。

次々と先輩詩人を失うのは、実に淋しいことです。

「樹は」と言いかけて、次の言葉を問いかけられたまま、明確な言葉が見つからず、永遠に捜す課題を、吉田さんから与えられた気がします。樹は・・・・・?・・・。

わたしは
これからどこへ行くのか
わたしは どこへ

痛切に言葉が迫ってきます。3行の短い言葉に「わたしは」と二度も出て来ます。問いかけられたら、どう答えればいいのでしょう。