「高校演劇」カテゴリーアーカイブ

H26 38回島根県高校演劇大会観劇記(9校)

平成26年度の第38回島根県校校演劇発表大会は11月1、2日、島根県民会館中ホールで開催されました。地区代表9校がそれぞれすばらしい劇を上演しました。劇を観ながら思ったのですが、演劇部は一時よりかなり減っていますが、レベルはかなり高くなってきています。そのことは、ここ数年島根県の代表が中国地区大会を突破して全国大会へ出場している回数を見てもうなずけます。この12年間で夏の全国大会へ8回中国地区代表として出ています。

今年度特筆すべきことは、三刀屋高校掛合分校が初出場して好演したことです。来年が更に楽しみです。大会の講師は津和野高校を最後に退職されたベテランの大島宏美先生と劇研空の洲浜クンです。各校の劇について観劇記を、やっとこさどっこいしょで書きましたので興味がある人は覗いて行ってください。

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第38回 島根県高等学校演劇発表大会
11/1(土)10時~
①三刀屋高校掛合分校「僕たちのTAKASHI」亀尾佳宏 作
②三刀屋高校「羽と心臓と鎧」竹内万寿 作
③松江農林高校「のうりん日和」多田佳菜子 作
④浜田高校「ごはんの時間2い」青山一也 作 浜高演劇部潤色
⑤松江商業「ホーリーナイト」杉山 恵 作 川口多加 潤色(~16時50分)
17時~17時40分講師講評(洲浜昌三、大島宏美)

11/2(日)10時~
⑥開星高校「サヨナラブライド~see you Love Lie’d~」武庫次元 作
⑦安来高校「逝ったり生きたり」東尾 咲 作 安来高演劇部潤色
⑧松江工業「広くてすてきな宇宙じゃないか」成井 豊 作
⑨出雲高校「泳げ WATER BABYS」伊藤靖之 作 15時30分終了予定。

15時40分~生徒講評委員会・審査会(大島宏美 洲浜昌三 岩成紀子 安田礼子 今岡淳子)
16時30~17時20分 講師の講評、審査発表、閉会式

今年は島根で中国地区大会(12月20,21日県民会館中ホール)が開催されるので、代表校は3校。安来、松江工業、出雲高校に決定しました。とてもすばらしい劇でした。 中国大会では他校がどんな劇を上演するかわかりませんが、楽しみです。

観劇記中の写真は舞台風景として記録係の高橋育男先生が撮影されたものを許可を得て使用させていただきました。

どうぞ、ここがエントランスです。ノックじゃなくて、クリックしてお入りください。

H26 観劇記 「38回島根県校校演劇大会9校」上下段6ページ

H26 広島県高校演劇大会(福山)観劇記

2014年(平成26)11月22,23日、福山市で第56回広島県高校演劇大会が開かれました。
福山リーデンローズのホールは2000人以上のキャパという大ホールです。

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事務局からの急な依頼でしたが、都合よく空いていましたし広島の高校演劇とは当初から縁があり喜んで出かけました。懐かしい先生方に久しぶりに会いました。伊藤隆弘先生の変わらぬ笑顔もなつかしく、嬉しく、その元気な姿に励まされました。

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平成26年度 広島県高校演劇大会(福山リーデンローズ)

1. 福山明王台高校 「祭りよ、今宵だけは哀しげに」  加藤純・清水洋史 作
2.比治山女子高  「恐怖のズンドコ」       柳本博 作 土井一生潤色
3.福山中・高等学校「止まった針を」        林 名央 作
4.広島観音高校  「ミサンガ」          森井あや香 作
5.清水ヶ丘高校  「梅入りおにぎりはいかが」   岡田隆一 作
6.鈴峰女子高校  「夏の夜の…」         畠山真代 作
7.尾道北高校   「KTK2014」                  尾道北高演劇部 作
8.舟入高校「広島戦災孤児養成所『童心寺物語』」吉本直志郎 原作 須崎幸彦構成・潤色
9.基町高校 「うつつうらしまー浦島子・高橋虫麻呂異聞-」松本誠司 作
10.尾道中・高等学校 「急須で淹れた紅茶」コダルマ・ゴロウ 作 中村春菜 潤色 11.呉三津田高校   「銀河旋律」          成井豊 作
12.沼田高校     「はないちもんめ」       黒瀬貴之 作
13.福山中・高等学校 「僕のばあちゃん」       新宮正一 作

講師審査は長田佳代子先生(舞台美術家)、洲浜昌三(劇研「空」代表、全国高演協顧問 )審査員は広島県の演劇部顧問の先生3名、計5名。代表校は舟入高校、沼田高校。

中国大会は12月20,21日松江の県民会館で開催。島根は出雲、松江工業、安来高校が出場。岡山では岡山工業高校が出場しますが、顧問の森脇健先生は大田高校の元演劇部員で、劇研「空」の劇を手伝ってもらったこともあります。

この冊子は、閉会式での講評を少し詳しく劇評として書き、求めに従って、事務局(舟入高校・須崎幸彦先生)へ提出、各上演校へ送られた原稿をまとめたものです、参考になれば幸いです。誤字等は判読ください。文中の写真は遠景撮影という条件で担当者の許可を得ました。

広島県大会へ行ったのは今回で8回目になります。 広島県大会は各校の劇評メモを渡すことになっています。大会中は書く暇もありませんので、後日書いて、事務局へ送りました。その冊子版を紹介します。あくまで洲浜の見方であることを前提にして読んでください。ぼく自身、劇を上演して、劇の感想や批評を聞くのがとても勉強になりました。芸術や文学、演劇は多角的な視点からの批評が養分になります。高校演劇を応援するのが劇研「空」の一つの目標でもあります。このブログで高校演劇関係の記事はよく読まれています。中国地区大会で数人の顧問の先生から、「観劇記を楽しみにしています」と言われたのも励みになり紹介します。

H26 劇評 広島県高校演劇大会(福山)縦2段書き12.10

H26,12/20,21 松江で高校演劇中国大会

2014年12月20(土)21(日)、松江の県民会館中ホールで第52回中国地区高校演劇発表会が開かれます。上演日程を紹介します。

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(県民会館そばにある松江城の堀です。近くに小泉八雲記念館もあります。いい風景ですね。)

H26中国大会上演日程(松江)

中国高校演劇協議会事務局長、沼田高校の黒瀬貴之先生から送られてきた上演日程です。広島は再来年全国大会開催県だそうです。

島根は20日10時~安来高校、16:50~出雲高校、21日15:10~松江工業が上演します。乞御期待です。

21日13:50~岡山工業が上演します。顧問は大田高校卒業の森脇健先生。演劇部にいて劇研空の上演も手伝ってくれたり、岡大の夏休みのときには劇研空の「朗読を楽しむ」にも出てくれました。広島の舟入、沼田高校の劇は福山で行われた広島県大会で観ました。それぞれ代表ですから特徴もあり良い劇です。楽しみです。

入場料は無料です。どうぞ観劇にきてください。きっと満足されるはずです。

19日の山陰中央新報文化欄に島根の高校演劇の活躍の様子を書き、今回の中国大会もPRしました。11月の県大会も感動的な舞台でしたので、激励したくて紹介しました。

 

H26 11/22.23 高校演劇広島県大会上演校です

2014年度の高校演劇広島県大会(正式には、広島県高等学校総合文化祭演劇部門 第54回広島県高等学校総合演劇大会)が福山市のふくやま芸術文化ホールで開催されます。劇研空のメンバーで行ける人があればどうぞ。たまたま福山へ行く必要がる!という人もいるかも知れませんね。もちろん観劇目的で行かれるのは大歓迎。日程や演目を紹介しておきます。

広島の高校演劇には長い間いろいろお世話になり、4回講師審査で行ったことがあります。今回急遽、行くことになりました。2日で13本の劇を観るのは大変ですが、楽しみでもあります。脚本も7本読みましたが、まだガンバランと。

島根は出雲、松江工業、安来が県の代表になりました。広島はどこになるでしょう。いつもの伝統校は健在ですね。中国大会は松江の県民会館で、12月20、21日に行われます。どうぞお出かけください。また島根と激突しそうですね。

ホットニュースです!岡山工業高校が中国地区大会へ出場します。顧問は、なんと!元大田高校演劇部、劇研空で「また夏がきて」で音響も担当してくれた森脇 健先生です!大活躍ですね。がんばってください。


平成26年度 広島県高校演劇大会(福山リーデンローズ)

11/22(土)
1. 9:40 福山明王台高校 「祭りよ、今宵だけは哀しげに」  加藤純・清水洋史 作

2.10:45 比治山女子高  「恐怖のズンドコ」       柳本博 作 土井一生潤色

3.11:50 福山中・高等学校「止まった針を」        林 名央 作

4.13:30 広島観音高校  「ミサンガ」          森井あや香 作

5.14:35 清水ヶ丘高校  「梅入りおにぎりはいかが」   岡田隆一 作

6.15:40 鈴峰女子高校  「夏の夜の…」         畠山真代 作

7.16:45 尾道北高校   「KTK2014」                  尾道北高演劇部 作

8.17:50 舟入高校    「広島戦災孤児養成所『童心寺物語』」吉本直志郎 原作
須崎幸彦構成・潤色
11/23(日)
9.9:20 基町高校     「うつつうらしまー浦島子・高橋虫麻呂異聞-」松本誠司 作

10.10:25 尾道中・高等学校 「急須で淹れた紅茶」      コダルマ・ゴロウ 作 中村春菜 潤色

11.11:30  呉三津田高校   「銀河旋律」          成井豊 作

12.13:10 沼田高校     「はないちもんめ」       黒瀬貴之 作

13.14:15 福山中・高等学校 「僕のばあちゃん」       新宮正一 作

 

大会が終わったら、そのうち紹介します。劇研空は高校演劇も応援することを目標の1つにしています。このブログで、以前の広島県大会の劇評を書いていますが、いつもコンスタントに読まれ、秋の大会が近づくと更に読む人が増えます。PRに少しでも役にたっていればハッピーですね。

H26 高校演劇島根県大会は11/1・2 松江で

2014年度の島根県大会は11月1,2日、松江の県民会館中ホールで行われます。31日は10時~19時までリハーサルです。
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11/1(土)10時~

①三刀屋高校掛合分校「僕たちのTAKASHI」②三刀屋高校「羽と心臓と鎧」③松江農林高校「のうりん日和」
④浜田高校「ごはんの時間2い」     ⑤松江商業「ホーリーナイト」(~16時50分)
17時~17時40分講師講評(洲浜昌三、大島宏美)

11/2(日)10時~

⑥開星高校「サヨナラブライド~see you Love Lie’d~」 ⑦安来高校「逝ったり生きたり」⑧松江工業「広くてすてきな宇宙じゃないか」    ⑨出雲高校「泳げ WATER BABYS」15時30分終了予定。

15時40分~生徒講評委員会・審査会
16時30~17時20分 講師の講評、審査発表、閉会式

今年は9校。三刀屋掛合分校は演劇同好会として初参加。顧問の亀尾佳宏先生の脚本です。松江農林は顧問の多田先生、出雲高校は伊藤先生の創作です。脚本が事務局の松江農林高校から送られてきました。現在⒉本読んだところです。

どんな劇が舞台で繰り広げられるか。昨年は充実したすばらしい劇がたくさんありました。松江南と出雲高校が最優秀となり、出雲高校は中国地区大会で最優秀嘗を受賞し、全国大会へ連続2年出場しました。今年も楽しみです。観劇は自由にできます。どうぞ県民会館へおいでください。

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: http://stagebox.sakura.ne.jp/wp/apoetinohda/2014/12/15/h26122021 松江で高校演劇中国大会/

H26 第60回全国高校演劇大会で出雲高上演(7/28)

2014年度の高校演劇全国大会は7月28、29,30日、茨城県ひたちなか市文化会館で開催されます。昨年も中国地区代表として長崎大会へ出場した出雲高校は、「見上げてごらん夜の☆を」(伊藤靖之作)で出場します。沼田高校の黒瀬貴之さんが書かれた脚本「ちいさなタネ」(エリック・カール原作、ゆあさみえ訳)を長野県の松川高校が上演するのも楽しみです。

高演協事務局から送られてきたチラシを紹介しましょう。

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出雲高校の演劇については、島根県大会のときの舞台評を含め、このブログで4回くらい取りあげています。閲覧グラフで見るとコンスタントに読む人が多かったのですが、全国大会が近づくと更にグラフが高くなっています。高校演劇を応援するのが劇研空の一つの目標ですから、PRも兼ねて写真中心に紹介します。
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この大会の脚本は、高校演劇劇作研究会が発行している『高校演劇』茨城大会上演作品特集に掲載されています。この雑誌も、今年が記念すべき創刊50周年を迎えます。毎年この全国大会のときに総会を開きます。ことしも残念ながら欠席のハガキをだしました。

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この大会特集号は分厚いほんです。大会会場で同人の人達が販売しています。買う価値がある貴重な本です。

出雲高校の健闘をお祈りします。また大会の成功を祈っています。

 

 

H26,7/9,12 大阪教育大ホールで『また夏がきて』上演

大阪教育大学公認の「演劇集団F,I」が7月9日(水)12日(土)の2回、大阪教育大学大ホールで『また夏がきて』(洲浜昌三作)を上演します。代表の小田美佳さんから連絡がありました。

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近くなら観劇にいきたいところですが、なにしろ遠いので、はるか山陰石見から成功をお祈りすることにします。大田高校や邇摩高校の出身で、大阪に友人や興味がある人がいれば、紹介してください。大学の演劇部でこの作品が上演されるのは初めてです。高校生用の脚本というよりは、高校を卒業した若い人達の青春群像を描いた劇ですから、大学生や社会人が演じても十分通用するつもりで書きましたので、今回の上演がとても楽しみです。
ついでに冒頭2ページを紹介しましょう。テンポよく楽しく会話は進みますが、それぞれの卒業生が深刻な問題を抱えて生きていることがわかります。演劇部の部長で中学校の先生になった紀子は明るく振るまいますが、自分自身が不登校状態になっていることがわかってきます。元演劇部顧問が卒業生たちへ送る温かいメッセージがラストで心を打つはず(?)です。

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この脚本集は晩成書房から出ています。5人の脚本が載っていて定価2千円です。欲しい人があれば送料含め半額でお送りします。

出雲高校演劇「ガッコの階段」舞台評です

平成25年度の高校演劇全国大会(長崎)についてはこのブログでも紹介しましたが、10月に行われた島根県大会で「見上げてごらん夜の☆を」が最優秀賞、中国地区大会でも最優秀を受賞して連続して全国大会へ出場することになりました。

2013年の島根の高校演劇関係のことは、このブログでも何度も紹介しています。検索して読む人が多く5つの記事とも閲覧のベスト10の上位を独占しています。そこで高校演劇を応援することを目標の一つにしている劇研「空」ですから、ここでもう一本硬派の劇評を紹介させていただきます。

全国高校演劇協議会が発行している「演劇創造」から7人の講師の舞台評です。「ガッコの階段」がどのように観られたか、とても参考になります。「演劇創造」は各学校の演劇部には届いていると思いますが、読んでいなかったり、顧問の手元で保存されていたりすることも多いかと思います。劇作りの参考になれば幸せです。

まず「演劇創造」のPRを兼ねて一面、二面を写真でご案内します。全部で8面あります。以前は冊子でしたからファイルに保存に便利でしたが、新聞になってからは保存が難しいので困っています。(カッテニコマレ。ベンリガイイカラシンブンニシタノダ)すみません。

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出雲高校『ガッコの階段』審査委員講評 演劇創造129号より

平田オリザ(劇作家)
島根県立出雲高校『ガッコの階段物語』も、震災をテーマとした作品です。いくつもの言葉遊びが仕組まれていて、巧みな構成になっています。残念なのは、前半をコメディタッチで後半は一転してシリアスにというのは、高校演劇では多くありますが、どうもその転換が唐突すぎる舞台が多く見られ、この戯曲もその感が否めませんでした。後半の展開を予感させる部分を、もう少し前半から折り込んでいくと、より重層性のある作品になったかと思います。

高校演劇の魅力は、皆さんが、不安定な「生」に立ち向かうところにあると私は感じています。その点ては、今年の全国大会は、まさに高校演劇の魅力満載の大会になったのではないかと思います。

乳井有史(北海道苫小牧南高等学校演劇部顧問)
これも大震災を経て作られた芝居である。学校の階段の持つ意味が、一歩踏み出すための勇気の階段であったり、人生を終える天国の階段であったり、津波から生き延びるための命の階段であったり、その意味がテンポ良く替わっていく。その展開は独創的である。部内で智恵を絞り、ワイワイと作り上げたと想像される奇抜さに満ちている。被災地ではない場所から被災を描くためには徹底した誠実さ、リアルさが求められる。津波と幽霊という題材に違和感を持つとの指摘がいくつか聞かれたが、創造力のある部である、この姿勢を深化させていって欲しい。

篠崎光政(日本演出家協会理事)
椅子の転換や場面転換の演出のスピード感は心地よい演出であった。階段をモチーフに演出の工夫が随所に生きていた。問題はそのアイデアにこだわりすぎ、作品の本質を深く大きく描くことが出来なかった点にある。生きる場所、生き抜く場所、惜しいアイデアだったが、説得力に欠けた。
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今井 修(演劇評論家)
生者が死者を悼み、死者が生者を励ます。東日本大震災の被災者への思いが強くにじんだ舞台。当事者でない生徒たちが、この題材を扱うには、様々な迷いやためらいがあっただろう。扱い方にもうひと悩みあっても、という思いも残ったが、敢えて挑んだ勇気をたたえたい。学校の階段の怪談話から津波の記憶へとつなげていく。様々な工夫の光る舞台だった。平面の動きが主体の上演作品の中で、高さへの着眼が新鮮。「階段・怪談・会談」といった言葉遊びに、牛ヤスター付き椅子での瞬間移動、訓練の行き届いた合唱……。中でも、ブルーシートを使った津波のシーンは圧巻。終わらない日常のメターファーとしての階段から、生きるための階段への転換を鮮烈に視覚化した。

松井るみ(舞台美術家)
階段は舞台美術装置の中でも最も使われる頻度が高く、俳優の立つ位置の「高さ」の違いで俳優の人間関係をビジュアル化できる。階段の意味が改めて問われており、興味深いと感じた。引用されていたエッシャーの階段は、騙し絵の階段であり、実存できないものを引用していた点は、もう少し考えても良かったかもしれない。キャスター付きの椅子を使って展開するのもスピード感があって面白かった。

清野和男(全国高校演劇協議会顧問)
設定は面白いと思いました。一つ一つのエピソードが、「人生を生きるということは一歩一歩を歩み続けている」ということの象徴であると感じました。しかし収束が少し安易になっていることが、面白さを無くしてしまったと思えました。しかし、演技者はテンポも良く、非常に緊張感を持って演じていたと思います。

高森 章(全国高校演劇協議会顧問)
「私たちの目の前にある階段は何のために上がるのか」という自問自答を、いろいろな見せ場を盛り込みながら描いてくれました。「生きるため」「生き延びるため」ということでしょうか。高くそびえる階段は、「たちはだかる」という存在感のあるセットでした。また、キャスター付きの椅子の利用は、スピーディな舞台展開に効果的でした。

それぞれプロの演劇人、演出家、舞台美術家です。清野先生は東北地区の代表、高森先生は中国地区の代表で、みな高校演劇の大ベテランです。篠崎先生には大田市民会館で中国大会を開いたとき講師で来ていただきました。

どの舞台評にも同感する言葉がたくさんありますが、ぼくが出雲高校演劇部の劇を見て一番感じていたことは平田オリザさんの次の言葉です。「後半の展開を予感させる部分を、もう少し前半から折り込んでいくと、より重層性のある作品になったかと思います」

このことは脚本を書く伊藤先生にも、またみんなで議論しながら劇を創っていった部員のみなさんにも参考になるのではないかと思います。今年の県大会の「見上げてごらん夜の☆を」ではぼくは「背後にある一本の棒」という言葉で講評しましたが、「アイデアの細切れ構成劇」にならないようにするためには必要なことだと思います。

 

 

H25 出雲高校演劇部 連続全国大会へ

2013年11月23、24日、鳥取県米子市・米子コンベンションセンターで第51回高校演劇中国地区大会が開かれました。島根から出雲高校が「見上げてごらん夜の☆を」、松江南高校が「冒険授業」で出場しました。事務局の黒瀬先生、島根の事務局の伊藤先生からも案内文書が来て、是非行きたいと思っていましたが、他の予定がありその上検査にも引っかかり、行けませんでした。

審査結果では出雲高校が昨年に続いて最優秀賞を受賞し、来年夏の全国大会へ出場することになりました。審査は上位3校で僅差だったとか。レベルの高い壁を突破しての全国への切符。すごいですね。おめでとうがざいます。島根県大会で観劇したときにもこの予感はありました。とてもいい劇でした。島根県大会の感想を書いていますので興味ががあれば読んでみてください。

H25 島根県高校演劇大会 出雲、松江南 中国大会へ    http://stagebox.sakura.ne.jp/wp/apoetinohda/2013/12/07/h25-%e5%b3%b6%e6%a0%b9%e7%9c%8c%e9%ab%98%e6%a0%a1%e6%bc%94%e5%8a%87%e5%a4%a7%e4%bc%9a-%e5%87%ba%e9%9b%b2%e3%80%81%e6%9d%be%e6%b1%9f%e5%8d%97-%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%81%b8/

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(上の写真は島根県大会でスハマクンがパチリとしたものです。絵になっていますね。見事なもんです。)

第51回中国地区大会出場校

上演1 鳥取県
岩美高校 西川真由美作「THE 図書館」

上演2 島根県
出雲高校 木下根っ子作「見上げてごらん夜の☆を」(顧問 伊藤靖之 作)

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(この写真も島根県大会です。8人で18人の役を演じていますが、同一人物だと思わせないところが、これまたすごいですね。照明も音響もパッチリ!決まっていましたね、照明のオオクニクンのfather に大田でぱったり!蛙の子は蛙ですね。長崎大会がおわり、続いて地区大会、県大会、中国大会とつづき、連日遅くまで議論して創りあげたそうです。)

上演3 岡山県
岡山東商業高校 柴幸男作「わが星」
上演4 広島県
市立沼田高校 黒瀬貴之作「JOIN US!」
上演5 山口県
宇部中央高校 古谷泰三作「16歳、僕隠れてます」
上演6 鳥取県
倉吉東高校 越智優作「サチとヒカリ」
上演7 山口県
西京高校 西京高校演劇部作「キリンは舞台の夢を見る」
上演8 広島県
市立舟入高校 正田篠枝作 須崎幸彦校正脚色「さんげ-原爆歌人正田篠枝の手記「耳鳴り」より-」
上演9 岡山県
岡山南高校 岡山南高校演劇部作「生徒会(ぼくら)とわらしとはじまりの夏」
上演10 島根県
松江南高校 中村勉作「冒険授業」
上演11 鳥取県
米子松蔭高校 結城翼作「飛ぶ教室」

講師は東京演劇集団風の辻由美子先生、青森中央高校の畑澤聖悟先生、そして審査員は各県から各一名。

皆さんおつかれさまでした。

H25 島根県高校演劇大会 出雲、松江南 中国大会へ

 

第37回島根県高等学校演劇発表大会が2013年10月26,27日、加茂町文化ホール・ラメールで開催され、出雲高校、松江南高校が最優秀賞を受賞、米子市で開催される中国地区大会へ出場します。。 両校とも表現豊かで洗練されたすばらしい舞台でした。簡単な感想など込めて紹介します。 写真は写せないのでパンフから白黒を利用させていただきました。一部パチリ!(パクリ?)もあります。あくまでスハマ君の感想です。http://stagebox.sakura.ne.jp/wp/apoetinohda/2013/12/12/h25-出雲高校演劇部-連続全国大会

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劇研「空」は高校演劇を応援することを設立の時の目標の一つにしています。当初は大田高校演劇部劇と一緒に劇も上演しました。(「星空の卒業式」「サクラさんのふるさと」等々)このブログも大田高演劇部を応援するために卒業生、修平さんがつくったものです。応援される対象は消えましたが、復活を願ってブログで応援しています。この観劇記も応援の一つです。

文学や芸術には多角的な視点が必要です。それに反発した場合でも、刺激材となり発酵して新たな形になりことが多々あります。感想や批評のありがたさです。それを願って、スタート!

松江工業高校 創作劇「流るる船は」三須雛乃 松江工業
作 部員の三須さんが脚本を書き、自ら雪哉(殿様)で出演し堂々と演じた時代劇です。時代劇は装置や衣装、言葉使いなど難しいことがたくさんありますが、この劇では「ブサメン、イクメン」などの言葉が出てきて、時代にこだわらない自由な発想で書かれています。装置も舞台奥に一段と高い台を作っただけの単純なものでしたが、いろいろな場面にうまく使っていました。装置は単純な方が演出、演技、照明、効果などによって多様な場面に変化できるので便利で効果的です。

女であることを隠した殿の正体を見た家来の恭之介が鬼ヶ島へ無罪の島流しになり、島民と一緒に敵討ちにもどってくるという話しです。場面が多く小間切れになるところを音響や照明でうまく繋いでいました。脚本も面白くできていて作者の才能の片鱗をあちこちで感じました。ストリーの組み立てをもっと工夫し、軽く流すところとじっくり描く場面との軽重を考えて書くと更に引き締まった劇になったことでしょう。日頃の発声練習をしっかりして、「声は聞こえても言葉がわかりにくい」ことがないようになれば最高です。

松江農林高校 「やっぱり パパいや」阿部順 作 演劇部潤色

松江農林

現在、全国高校演劇協議会の事務局長・阿部順先生が書かれた人気のある脚本です。この劇を初めて観るときには、次ぐ次ぎと展開される意表を衝くどんでん返しにびっくりしたり、笑ったり、感心したりして、揺さぶられながら惹き込まれていき、何度も笑いながらも最後は父親の一抹の寂しさと哀しさが胸に滲み出てきます。面白くできている脚本なので、何度も観た人にはそれを以上の面白さや独自性がないと期待が裏切られることになります。よく知られた有名な脚本はそこが難しい。

農林のみなさんはかなりいいところまで達していましたが、今ひとつ思い切った演出や演技があればよかった気がします。お父さんはいい味をだしていましたね。音楽も劇に合っていました。ラストで父が滑って転んで上手へはけながら緞帳が下りるところも、この劇のエッセンスを何気なく感じさせて素敵でした。転んだのは偶然かもしれませんが、この劇をコミカルな喜劇として届けようとした農林の演出意図が出ていました。18人が舞台に立つという層の厚さも農林の演劇部の底力を感じさせました。

松江商業高校 「夏の詩」遠野 尚 作
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緞帳が上がったとき、どんな装置が飛び込んでくるか。劇を観る時の楽しみの一つです。 何もイメージが浮かばないか、イメージや妄想がどんどん広がっていくか。

この劇では下手に橋の一部が見え、つたが巻き付いています。橋の向こうに何があるんだろう?想像がふくらんでいきます。スッキリしてしかも劇のイメージを発展させるいい装置でした。 キャストのみなさんの発声もよくて、ことばがはっきり分かりました。というより何の抵抗もなく、聞こうと意識したり努力する必要もなく、座っていて自然にことばと気持ちが届いてきました。日頃の発声練習の成果でしょう。おばあちゃんを出雲弁に変えたのも成功していましたね。

講評するとき、脚本の弱点は言わない方がいい、という意見があります。既製の脚本は部員の責任ではないからです。しかし脚本はその劇の土台です。劇の善し悪しの8割は脚本で決まると言った人もあります。脚本選択、脚本潤色なども含めて十分考える必要があります。脚本選択力、潤色も部の力量の一つです。

5人の高校生が卒業記念に100の物語りをしていて、依子が語る話が劇として演じられるのですが、村での子供たちの遊びが延延とつづきます。つづいてもいいのですが、その背後でストリー展開もストップしていては、単なる子供の遊びの意味しかありません。演じている人は一生懸命ですが、見ている人は同じ状態が30分もつづけば、劇から引いてしまいます。また、おばあちゃんの大切な鏡を割ったので、大好きなおばあちゃんの臨終にも行けないのですが、劇の核であるおばあちゃんと依子との交流がほとんど描かれていません。「メインテーマと外れたところで遊び過ぎ」と脚本を読んだときにメモしていました。美事な橋を初めから生かしたかったですね。

出雲高校 創作劇「見上げてごらん夜の☆を」伊藤靖之 作(顧問)

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音楽とともに緞帳が上がると空一面に星が輝き、高い台の上で星空を眺めている若者の姿がシルエットになって浮かび上がります。観客は自然に詩的な風景の中へ誘い込まれ、空想の羽を広げて物語りを予感し紡ぎ始めます。素敵な出だしです。

高校生のノゾムと学者風の星野との面白おかしいずれた会話。「今見てるものは過去だ」と断定する星野の詩人のような哲学者のような言葉。なにげなく劇の核を暗示します。テンポのいい会話、歯切れのいい言葉、無駄のないシャープな動き、次々と展開されていく10以上のシーン。

劇団オリオン座が繰り広げる何かを暗示するような意味不明に近い天体ショー。15の役を8人で演じるのですが、別人のように思えるのは劇団員の時は白衣を着ているからでしょう。身代わりも速くできるし全身が変わるので同一人物とは思えません。いいアイデアですね。言葉は十分届くし、演技や会話で引っ掛かるような不自然さがなく、自信を持って演じているので、安心して見ておれます。

メモの中から主なものを箇条書きで書いてみます。 ・幕開きがとてもいい。観客のイメージがふくらんでいく。 ・発声がいい。声が小さいときでも言葉がわかる。スピード、強弱、滑舌、間のとり方など自然で抵抗がない。 ・装置に立体感があり、劇中劇、屋上、学校、家など多面的に展開できる。 ・歌がうまい。とてもハーモニーがいい。 ・作者の好きなギャグやジョーク、ユーモア、言葉遊びがたくさん出てくるるが、若干の例を除き、押しつけがましくなくてセンスがある。とても深みと味のあるユーモラスな会話場面もあり感心した。この劇では過去、現在、未来が重要なテーマ。主人公・望(ノゾム)が好意を抱く佳子(カコ)と「過去」がダブらせてある。 ・役者1人1人がしっかりしていて魅力的。 ・次の場面が予測できない。次々と象徴的で新鮮な場面が出てくる。同時に、各場面がどのように関連しているのか、観客は消化不良のまま終わる可能性もある。 ・台本の冒頭に、10場面のタイトル、登場人物、さらに「あらすじ」と「伝えたいこと」が2ページにわたって記してある。こういう台本には滅多に出会わない。理解や整理が進み、とても参考になり便利がいい。他校も真似てほしいものだ。

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・東北大震災という言葉は一度も出て来ませんが、それを想像させる場面や言葉や、やり取りは何回も出てきます。一緒に望遠鏡で星を見たり、ノゾキミをしていた鏡太郎も遠(トオル)もいなくなり、好きだった佳子もいなくなります。オリオン座のスター・ベテルギウスは初めからいません。星野がそのことを指摘すると、みんなシーンとなって黙り、わざと関係の内ことではしゃいだりします。これも何かを暗示し象徴しています。しかし作者はそれが何故か説明しません。投げ出して想像に任せます。いろいろな点で詩のような象徴的手法で脚本を書き舞台化しています。ここにこの劇(伊藤靖之作品)の特徴や独自性、魅力があります。誰にも真似ができません。しかもレベルが高い。

劇を貫く一本の太い骨がなく、展開された各場面の関係性が希薄な場合には、劇が細切れになり消化不良を観客に残すことも多々あります。今回はどうだったでしょう。屋上で望遠鏡を眺める高校生と劇団オリオン座の関係は分かったでしょうか。劇団オリオン座とは一体何でしょうか。オリオン座が繰り広げるそれぞれの場面の関連性は分かったでしょうか。

あいまいなまま見終わった人もかなりあるだろうと思います。もう少し分かるためのサービスをしてもいいかともおもいますが、一本の骨(太いとはいえないけど)になっていたのは5人の高校生が繰り広げるストーリーです。次々転校していく友人たち、合唱コンクールの演習ために、屋上へ何回も呼びに来る佳子(カコ)や未来(ミク)。いつも望遠鏡を眺めているノゾミ君。でも最後にはノゾム君は3組の合唱で「見上げてごらん夜の星を」を演奏しみんなで歌います。現実の中へ足を踏み入れたのです。

この人間関係のドラマと時間の流れがメイン・ストリームとなり、骨になっていますので、細切れの印象があまり残りません。(もうちょっと意図的に、現実逃避から現実へ足を踏み入れる過程を描いたら骨が太くなって分かりやすくなるかもしれませんが、それは脚本家や演出家の劇や文学に対する感性や考え方の問題で、これは単なるぼくの印象です。)

演出の伊藤圭輔君は、脚本の完成がぎりぎりだったので大変だった、と幕間で語っていました。そうでしょう。県大会の台本は6敲版です。出雲高校もみんなで議論しながら作っていったのでしょう。レベルの高いとてもいい劇でした。レンゾクゼンコクダー!とぼくの中に棲息する演劇の微生物たちが騒いでいました。

浜田高校 「急遽演目を変更いたしました」臼井 遊・作、演劇部 井上このこ・潤色 浜田高校
石見地区で唯一の演劇部として顧問のキムラ先生と共にがんばっている伝統のある浜田高校演劇部です。今年は部員6人で、キャストは4人。1人で2役、3役もこなすという舞台。台本選択の苦労が忍ばれます。

劇は次のように始まります。 開幕前のアナウンス。「次は中央大学付属高校による、ガラクシ……えっ?あ、はい…。」 神妙な面持ちで部長が幕前へ。部長「本日はご来場いただきまして誠にありがとうございます。公演の前に演劇部よりお知らせとお詫びがございます。(略)演劇部員23名の内19名がおたふく風邪で欠席となり、急遽演目を変更致しまして4名でお送りします。(略)」

観客は度肝を抜かれ、えっ?と驚き、わっ!と湧く、ことを狙って書かれているのでしょう。そうなれば成功ですが、簡単にはいきません。底を見られて白けます。緞帳が上がり、始まった劇が目の前でつくる「即興劇」なら、新鮮で予期しない場面の連続となり、観客は、はらはら、として観るのでしょうが、訓練された普通の劇がつづいたのでは、幕前の部長のお詫びは何だったのだ、と底が更に割れてしまいます。

2010年に全国大会で上演された台本だそうですが、その学校にはベストでも、他の学校が同じ様に面白く上演するのは困難な脚本です。部分部分の面白さはあっても、全体を通して何をいいたいのか伝わってきません。 劇中劇で空想の場面がありましたが、音楽が楽しく踊りも雰囲気があって印象に残りました。たくさんの場面が出てきて、道具や吊り物で、それを分からせる工夫も見えましたが、 もうひと工夫が欲しい気がしました。

松江南高校 「冒険授業」中村 勉・作 演劇部潤色
松江南
昨年、南高は中村勉先生の代表作「全校ワックス」を上演しました。つづいて同じ作者の脚本です。作者が甲府昭和高校最後の脚本で関東大会へ出場しました。「全校ワックス」はダイナミックでとても面白い劇ですが、この「冒険授業」は言葉の実験劇かのようです。例えば冒頭で2ページも、発声練習のような語や句、文の群読が綿々とつづきます。

(例 生徒たち「世界/言葉/に言い表せない/気持ち/という言葉/あいまいな/言葉/思いがけない/言葉/・・・・」)これを全員で2ページもどのように喋るのだろう。台本もそんなに面白いとは思えず、観客へ何を伝えるか難しい。

ぼくの懸念に対して、冒頭から美事に生きた舞台が展開され、懸念は吹き飛ばされました。台本に「音楽。横たわる生徒たち。やがて起き上がり歩き出す」としかない冒頭の場面で、横たわった多くの人間が動きはじめますが、音楽やシルエットなどを使って惹き付け、何が起こるのだろう、という期待を抱かせました。発声練習のような長い言葉も合唱やソロ、輪唱、群読、と波のようになって届き、長さを感じさせませんでした。16人も舞台へ立ったのですが、みな言葉もよく分かり動きにも無駄がありませんでした。

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審査会でも次のような感想がありました。 ・よく工夫し脚本を生かしている。・客を惹き付ける工夫をしている。力を持っている。・あっという間に終わった。モトちゃんとは何だったのかよくつかめなかった。 ・ディスカッションしてつくりあげている。表現が生きているので伝わってくる。

劇を観ながら思ったのは、「やっぱり台本は台本だな」ということです。南高は美事に台本を舞台で立ち上げ命を吹き込みました。劇にも出演し演出も担当した伊藤圭祐君は、「みんなで議論しながらまとめていった」と語っていました。ここに成功の秘密があったのです。多様な意見を出して議論しながら作っていく。これが一番大切なことだと思います。ラストも印象的で素敵でした。 伝えたいことが観客へ十分伝わったか、という点では今一歩だったかも知れませんが、この脚本をここまで肉付けして楽しく見せたみなさんの知恵と努力と協力には大きな拍手を送りたいと思います。

三刀屋高校 創作「椰子の実とオニヤンマ」亀尾佳宏・作
三刀屋高校
今年はどんな劇だろう、と誰もが期待して幕開きを待ったことでしょう。平成18年から3回連続全国大会へ出場し。その後平成22年、24年と5回も中国地区大会で最優秀賞を受賞し全国大会へ出た実力のある伝統校です。

期待を裏切らない面白い劇でした。舞台に何もなくても、集団の自在な演技や動きで船になったり、波になったり島になったりします。場面も自由自在に、現在、過去、ファンタジー、宝島、海賊船、学校、島根、出雲大社、石見銀山、松江等々違和感なく14人のキャストによって創られ展開されます。場面へ引き込んでいく表現力を持っていますので装置などはなくてもいいのです。作者もそのことを心得て台本を書いています。

審査の会議で出た感想をメモ風に書いてみます。 ・亀尾カラーの作品。難しいテーマでもある。 ・役者の力量はある。入り込める劇作りで違和感がない。 ・島根をどうとらえているのだろうか。ちょっと一貫したストーリーが感じられない。 ・よく動き舞台の使い方がうまい。高校生にストレートに届いた劇だと思う。 ・全国レベル。身体表現がうまい。下半身も十分使い身体のさばきがうまい。曲の使い方 がうまい。ラストの鐘築君の訴えは劇としてどうか。 ・表現力が優れている。観て楽しく舞台へ引き込まれる。鐘築君の長いセリフや訴えはス トレー過ぎてこの劇に溶け込んでいない感じを受ける。

誰もがいい劇だと認めながら、2校しか県の代表になれないので、いい点と同時に問題点も指摘することになります。審査などなかったら、よかったね、で終わりですが、そういかないのがコンクールの悲しい宿命です。

作者の亀尾先生はこの劇でかなり冒険や実験をしています。型にはまった高校演劇らしさを破り自由に舞台で遊びたいと思っのでしょう。今までの自分の作品のパターンに飽きたらず部員たちを思い切って現実に立ち向かわせようとしたのかも知れません。

冒頭も実に型破りです。高校3年生の鐘築君の長い長い1人語りです。語りというより独白、いや演説、いや訴えです。台本のセリフは原稿用紙に換算すると約9枚近くなります。そして「これくらいの分量語ってください。語り尽くしてください。夏の思い出を。」と指定してあります。60分の劇の冒頭でこんな長い語りを取り入れるのは大冒険です。劇と独立してしまい失敗する可能性が十分予測できます。しかし作者はそれを心得た上で敢えて挑戦しているのです。

鐘築君は語りを終えると、「海」を歌います。中央に1人の少年が登場して、その歌の最後を引き取って歌います。少年は鐘築君の投影かも知れません。少年は、絵本から海賊が飛びだしてこの町から連れ出してくれるのを長い間待っていたのです。少年は「椰子の実」を歌い、やがて海賊たちが登場し、少年の歌と重なっていきます。実に楽しい場面の展開であり、人物の入れ替えです。

海賊船はそのうち島根という島へ到着します。「若者はおらん、年寄りだけがとりのこされた島。姥捨て島」です。そこで何を見るか。世界遺産の石見銀山や国宝の出雲大社、松江城、知事の善兵衞さんも。島根に関するあらゆることが生の言葉で面白おかしく出てきます。言葉遊びや掛詞、流行の言葉などがあちこちに出てきます。

船長が言います。「宝島は流れ着く海の向こうにあるんじゃない。椰子の木の根を張ることだ。お前が生まれたこの島だ。国宝もある、世界遺産もある。人間国宝だって。いや、そんな名前なんかなくったっていい、緑が、人が、歴史が、今日まですごしてきた時間がお前の宝だ!」

そして最後に全員で言います。「島根県!中国地方の山陰側に位置する。決して右側の鳥取と同じではない左側の県。花はボタン木はクロマツ鳥は白鳥知事は善兵衛。たった一つしかないふるさと。これが我らの宝島!」。

実にストレートです。シュプレヒコールのようです。作者はあえて挑戦しています。劇の調和を破壊しかねない思い切った手法です。

後半ではキャスト一人一人がいっせいに自分の夢や希望を次々に叫ぶ場面もあり、それは劇の型を破り現実を突きつける予想外の斬新な手法でした。そのこともあり、このラストにもそれが通底していて、そんなに突拍子な気はしませんでしたが、思い切ったやり方には間違いありません。
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いい劇だったのは誰もが認めたことだと思いますが、敢えていえば、この劇では主人公の存在が希薄で、現実の生々しい島根が主人公となって浮かび、問題提起劇のよな性格が強くなったことです。進路に悩む鐘築君と海の彼方を憧れる少年との太い骨を大切にして展開したら統一感のある劇になったかもしれません。海賊船に乗ってある島へ着いたとして、ありのままの固有名詞を使わず、何となく島根を暗示するような象徴的な手法を使う手もあったかと思いました。

2日間レベルの高い劇が上演されました。特に感心したのは観客の目を意識して演出し演じている学校が増えたことです。舞台の使い方がうまくなったことや表現が多彩になってきたことにも注目しました。議論して劇を創りあげていく学校が一段と厚みと多様な表現で台本を生かしていることも印象に残りました。

今年は津和野高校校長、大島宏美先生と講師として観劇しました。審査委員は松江地区から原先生、出雲石見地区から舟津先生、花本先生でした。 みなさん、おつかれさまでした。米子で開催される中国大会、期待しています。                      20131115(洲浜)

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