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詩 リラの花咲くころ

リラの花咲くころ 洲 浜 昌 三

高校生だったころ
ラジオで覚えた大好きな歌があった
「リラの花咲くころ」

リラ リラ リラ
なんというさわやかな響きなんだろう

ぼくの村にはどこにもなかったので
どんな花なのか見当がつかなかったが
花開いた美しい姿がふくらんでいった

リラはライラックともいう と知ったのは
何十年もたってからだった

ライラック ライラック ライラック
なんというきれいな響きなんだろう

何十年もたったある日
ふとしたことでその苗木が手に入った
関西以西では育たないと聞いたが
家の前に植えておいたら初夏に花が咲いた

あたりに漂う高貴な香り
品のある薄紫の豊かな花房
庭に浮かんだ華やかでつつましい白い雲

どこまでも沈んで行く悲しい日
青春の日のあこがれの少女のように
リラは軒下ですっくりと立っている