充実した岡山大会と牛窓の旅 ー第12回中四国詩人会ー 洲 浜 昌 三
(島根県詩人連合の会報に書いたものです。ここでは写真をつけて紹介します)
平成二十四年度の中四国詩人会大会は岡山市の「ピュアリティまきび」で10月13日に開催されました。岡山駅の改札口で、「中四国詩人会」の看板を持って立っておられた高田千尋さんたちの姿を見て驚くとともに、熱い思いが湧きました。
(蒼わたる実行委員長のあいさつ)
総会には来賓招待の山陽新聞編集局文化部長、毎日新聞岡山支局長、岡山県生活環境部長を含め約80名が出席。岡山からは50名近い参加者で、岡山の詩人の層の厚さと積極的な協力姿勢にいつものことながら圧倒されました。 実行委員長の蒼わたるさんをはじめ27名もの会員で実行委員会をつくり、万全を期して準備されたことが端々から覗える大会でした。
(まきび会館から岡山駅方面をパチリ。大きな建物が解体され整地中でした)
総会は山本衛会長の挨拶のあと、役員や決算、予算を承認し、中四国詩人賞表彰式が行われました。受賞詩集は河邊由紀恵さんの「桃の湯」。選考委員長の井上嘉明さんの評の一端を紹介します。 「独自性のある言語感覚で紡がれた世界に惹かれた。言葉はふくらみを持ち、しなやかで豊かな想像力をひそませ、芳しい匂いすらした」 河邊さんは倉敷市在住、4人の子育てが終わってカルチャーセンターに通い、詩を書きはじめたそうです。「クラゲのように透き通るようなしなやかさの中に、ほの暗い生がどこかで息づいている」感覚的な世界が浮かび上がってきます。
(受賞詩集から詩を朗読する河邊さん)
自作詩朗読では各県から八人が朗読。島根からは久しぶりに閤田さんが参加し、存在感のある詩「星明かりの道」を朗読しました。 今年の講演は会員で岡山の岡隆夫さんで、「英米現代詩とわたしの詩論」と題して話されました。岡さんは岡山大学名誉教授で、ディキンスン研究の第一人者。今年一月に刊行された「岡隆夫全詩集」は第二十詩集になるというエネルギッシュな実作者でもあります。とても示唆に富む講演でした。特に印象に残ったことを二つだけ挙げてみます。 「リアリズムとモダニズムは日本にはない。いきなりポストモダニズムの波を受けた」 「詩の存立の主な要件ー第一、作品のキーワード(イメージでもいい)がクリエイティヴな想像力によって新たなものに変質しているか。第二、既存の歴史的文化的価値観に新たな理念。第三、前者に相応しい独自の詩型・リズムがあるか」 後半は対談で、相手は岡山の詩人・くにさだきみさん。詩集や評論集が二十冊を越えるというこれまた実績のある詩人。朗読での美事なエロキューションに感銘を受け、明晰で的確なやり取りに知的爽快さを覚えました。後で知れば80歳とか。
(立石さんの語り「桃太郎」)
アトラクションは立石憲利さんの語りで、「桃太郎」。岡山民俗学会理事長で採集した民話が7000話以上。自ら方言も駆使して「語る」という役者でもあり、表現が巧みで惹きつけられました。後で聞くと、「桃太郎」は時代や地域により様々な要素が加わりそれぞれ違うそうです。 10年前、立石さんの民話を新聞で読み、それをヒントに石見銀山の庶民と重ねて「出口がない」という民話劇を創作し、大森で上演したことがあります。10年たってやっとお礼を言いました。 懇親会は約60名。重光はるみ大会事務長の司会ではじまり、チェロ演奏、高田千壽岡山詩人協会長の挨拶、歓談、最後は中桐美和子大会副実行委員長の閉会のことばまで、あっという間の時間でした。
(竹久夢二の生家の前に立つ島根の川辺さん)
翌日は貸し切りバスで竹久夢二郷土美術館、夢二の生家、正富汪洋詩碑、牛窓オリーブ園、牛窓神社を訪ね、牛窓の町を散策しました。
大会副事務長・森崎昭生さんのガイドで初めて見る風景や名所を楽しみました。瀬戸内海を見下ろす眺望は心身を解放してくれました。 来年は香川県です。香川は会員7名で開催にも苦労が伴うと思いますが、宮本光さんは別れ際に、「ぜひ来てください。歓迎します」と力強い言葉を残して帰って行かれました。
みなさん、おつかれさまでした。岡山のみなさんお世話になりました。