7歳までは神のうち ー石見銀山考ー Shouchan
ブレーキを踏んで車を止めると
子供たちは目の前を小走りに横断して歩道に立ち
声をそろえて頭を下げる
「ありがとうございました」
いつも見慣れている風景だが
大阪や東京から来た三人は
感動して小学生たちの姿を見送っている
「あんな子どもが日本にはまだいてるんやね」
ふと ある講師の言葉が頭をかすめた
「七歳までは神のうち」
石見銀山にはそんなことわざが残っているという
受け売りを得意になって紹介すると
ミキさん夫妻が言葉を重ねる
「子どもは神のように大切に育てられたんやね」
「さすが出雲石見は神の国やわ」
「逆じゃないのかな」
後に座っていたケンさんがつぶやいた
会話が途切れ 新緑の林が後ろへ流れていく
「飢饉のときその言葉は救いになったんだよ
……神の国へ返すのだからさ」
ケンさんが再び低い声でつぶやいた
フロントガラスに日本海が広がる
短いトンネルを通過する
「……生まれた子を間引くときにさ」