田中郁子詩集『ナナカマドの歌』・山本衛詩集『讃河』      第8回中四国詩人賞受賞   

8回中四国詩人賞
 第8回中四国詩人賞選考委員会は7月12日10時から岡山国際交流センターで開かれ、二人が受賞に決まりました。


 応募詩集は12冊。それぞれキャリアのある詩人の詩集で読み応えがあります。島根や鳥取からの応募はありませんでした。浜田の柳楽恒子さんの『風よ』があるかと思いましたが応募の中にはありませんでした。いい詩集でしたが…

 事務局が見守る中で選考委員会は開かれました。選考方法を先ず話し合い、各自が5冊の詩集を投票することになりました。8冊の詩集が出てきましたが、5人全員が推した詩集が2冊ありました。

 8冊の詩集について意見を出し合い、議論をつづけ、3詩集の中から3点、2点、1点で投票することになりました。2詩集は圧倒的な点数でした。

 1冊に絞るために議論しましたが、個性や特徴の違いはあっても優劣をつけるのは困難ということになり、表記した2冊の詩集の受賞が決定しました。

 午後の理事会で選考委員長、扶川茂(徳島、前会長)さんが選考経過と結果を報告され、承認されました。

 授賞式は9月20日(土)、呉阪急ホテルで開かれる第8回中四国詩人会呉大会で行われます。受賞者の詩の朗読もあります。今年の特別講演は広島の御庄博実先生です。戦前から詩を書き峠三吉とも交友があり、医師として原爆にも関わって来られた貴重な人です。題は「被爆63年、原爆と詩と」

 御庄さんと話していたら、医学生のころ三瓶診療所で実習し所長の先生(名前を忘れた)にお世話になったそうです。三瓶はなつかしいところだと言っておられました。来年は三瓶で中四国大会を開け、と先生をはじめ理事のみなさんに昨年から声を掛けられています。
12冊詩集
 『ナナカマドの歌』の著者、田中郁子さんは岡山県新見市高尾にお住まいで詩歴も長くこれは第6詩集。深味のあるエッセイもかかれます。「すてむ」の同人で、個人詩誌「緑」も発行しておられます。

 この詩集は難しい言葉で書かれてはいませんが、深い思いが重層的に屈折して表現されていてそういう意味では独特の難解さがあります。そこに個性と魅力があるとも言えます。生まれた土地や人間の根っこの方へ目を向けさせる吸引力があります。表面を見ながら背面を余計見ている。生を見ながら無意識にその先を見ている。向日性というより背日性です。読み終わって、その志向するものや求める理念は何んだろうとぼくは考えました。ぼくに残された課題です。それは大袈裟にいえば、詩は何のために書くかという永遠の問題に行き着きます。

 『讃河』の山本衛さんも詩歴も長く、この詩集が6冊目になります。高知県四万十市双海にお住まいで、「地球」や「叢生」の同人で、詩誌「ONL」も主宰。

 この詩集には難解な表現はほとんどありません。現代詩特有の表現のための表現、抽象に抽象を重ねるような詩はありません。言葉は内容を邪魔しないように配慮されています。言葉を表現するのではなく、言葉を通して内容を表現する詩人です。内容に深みや魅力がない場合、詩も平凡になるきらいもありますが、感動的な詩にもたくさん出会います。そういう詩はやさしい表現にもかかわらず、とても抑制が利き、鮮やかでしなるような柔軟性のある表現で、陰影があり新鮮です。詩人の目が新鮮で心に深い感動のキャパがあるからでしょう。

 生地や四万十川にまつわる一連の詩を読むと歴史の流れ、土地への思い、土地が育ててきたものなどが浮かび上がり、読後も霧のように心に残ります。人間性豊かで広がりもあり鋭い批評眼も光っています。詩集の題は「讃河」ですがいろいろな詩があり、詩集としてやや雑多な印象を残しますが、
読んで心が豊かになる詩集です。

 呉大会で受賞者の朗読や話を聞きたいのですが、残念ながらその日は「しまね文芸フェスタ」の前夜祭が江津であり係として逃げられません。講師の星野恒彦先生の歓迎会です。

 しかし、来年の9月か10月に世界遺産のある大田で大会を開いて欲しいといわれていますが、どうなるんでしょう。と人ごとのように言うけど、人ごとではありませぬ。大田には我が輩しかいないのです。我がごとです。

 中四国の詩人が70人前後集まる!どこへ?場所は?いままでみないいホテルで交通の便も申し分なし。それに比べ…は…そんなホテルや宿舎があるの?おい。

 最後はノムさんならぬショウさんのボヤキでした。
 

投稿者:

suhama

1940年、島根県邑智郡邑南町下亀谷生まれ・現在、大田市久利町行恒397在住・早稲田大学教育学部英語英文科卒・邇摩高校、川本高校、大田高校で演劇部を担当、ほぼ毎年創作脚本を執筆。県大会20回、中国大会10回出場(創作脚本賞3度受賞)主な作品「廃校式まで」「それぞれの夏」「母のおくりもの」「星空の卒業式」「僕たちの戦争」「峠の食堂」「また夏がきて」「琴の鳴る浜」「石見銀山旅日記」「吉川経家最後の手紙」「父の宝もの」など。 著作:「洲浜昌三脚本集」(門土社)、「劇作百花」(2,3巻門土社) 詩集「キャンパスの木陰へ」「ひばりよ大地で休め」など。 「邇摩高校60年誌」「川本高校70年誌」「人物しまね文学館」など共著 所属・役職など: 「石見詩人」同人、「島根文藝」会員、大田市演劇サークル劇研「空」代表、島根県文芸協会理事、大田市体育・公園・文化事業団理事、 全国高校演劇協議会顧問、日本劇作家協会会員、季刊「高校演劇」同人、日本詩人クラブ会員、中四国詩人会理事、島根県詩人連合理事長、大田市文化協会理事

「田中郁子詩集『ナナカマドの歌』・山本衛詩集『讃河』      第8回中四国詩人賞受賞   」への2件のフィードバック

  1. 写真説明で「田中邦子」と書いていますが、これは「田中郁子」の間違いです。
    タイトルも間違えていましたが、管理人、修平さんの指摘で修正することができました。
    修平さん謝謝謝謝です。
    今日(9月19日)届いた「中四国詩人会ニューズレター第24号」には、2009年秋、島根の大田市で9回大会が行われる、と書いてあり、ぼくの写真も載っています。
    もう逃げられない。窮鼠猫を噛む。誰を噛むか。
    いまから準備をしなければいけませぬ。

  2.  新聞によると田中郁子さんは題10回小野十三郎賞も受賞されました。おめでとうございます。小池昌代さんの詩集「ババ、バサラ、サラバ」と同時二人の受賞です。
     昨年は広島の長津功三郎の詩集「影たちの墓碑銘」と中岡淳一さんの「宙(そら)家族」が受賞しています。
     長津さんの詩は原爆を素材にした広島弁をうまく生かした迫力がある詩集です。中四国詩人会松江大会で
    山本君が長津さんの詩を朗読しましたよね。
     岡山、広島は詩人の層が厚い。キャリアのある人がたくさんいる。ここ数ヶ月で贈っていただいた詩集では斉藤恵子さん、壷阪輝代さん、なんばみちこさんの詩集がありますが、3人とも岡山で長いキャリアのある詩人でです。島根でいえば田村のりこさんクラスの詩人がごろごろといる印象です。
     来年の9月末には三瓶の志学山荘で中四国詩人大会を計画しています。こういう大会のとき岡山で開けば
    岡山の人たちがたくさん来られて受け付けや案内や準備などをされます。うらめしい、ノー、うらやましい
     田中さんの詩集は日本詩人クラブ賞の候補にもなっていましたが、中四国詩人賞、小野十三郎賞ダブル受賞です。新見市高尾にお住いです。まだお会いしたことはありませんが、新聞には主婦と書いてあります。
     

コメントを残す