芝居屋「劇団子」 『THE WAY』をみる

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平成18年2月19日(日)ビッグハート出雲で創作劇『THE WAY』(井川きり作、日士眞輔演出)をみました。11回目の公演ですが劇団子の劇をみたのは初めてです。とてもシンプルな舞台でしたが、照明や音響をうまく使って場を表現し、役者も癖がなくとても好感がもてました。プログラムによると8月5,6日にこの劇のミュージカル版を益田市のグラントワで上演するそうです。


芝居屋「劇団子」(写真はプログラムより、病院の事務員・増田達彦、花屋の店員・神門久美子、看護師・桑谷功子、コロス・日士眞輔。最近は舞台写真を写せないのでPRや観劇記や記録にはとても不便です。なんとかなりませんかね。)

 緞帳が上がる前に、激しい嵐や雷鳴。何事かと先ず注意を集中させます。やがてヘリコプターの音。観客の想像がふくらみ情景が頭に浮かびます。緞帳があがると舞台中央に3人の人が倒れてもがいていて、その上をヘリコプターの翼が影となって回転しています。嵐の中で墜落したのだ!実に効果的な出だしです。スーと状況が観客の中へ入ってきて次ぎに何が起こるのか期待をふくらませます。演出、照明、音響の見事な結晶場面です。感心しました。

舞台の奥には50センチくらいの高さの平台が組んであるだけで素舞台に近いのですが、墜落した山中、病院、職場など次々と場面は展開します。場面を理解するのに若干戸惑ったところもありましたが、台詞や演技や照明、椅子などの小道具でうまく表現していました。その点では脚本も工夫して書かれていたと思います。助けを求める緊迫した場面、病院での静的な場面等々、テンポや流れ動きなどで差をつけることによって、説明的な台詞がなくても場面がわかりました。これも感心したところです。

装置が大がかりになればなるほど、経費は増大し、運搬や転換にも手間と経費がかかり、照明も面倒になり、演技も照明も衣装も装置によって限定され制限されます。そして終わると置き場に困り、もし次ぎに公演しようとしてもホールの大きさが違えば、また作り直さなければいけません。その苦労が骨身に染みこんでいるだけに、この劇から学ところがたくさんありました。

離島から病気のおばあちゃんを本土の病院へ連れて行くことにしてヘリコプターに乗り込むのですが、そのへりが荒天で墜落し、おばあちゃんが死亡。自分は生き残るのです。人間存在の悲劇性を追求する厳しい状況設定です。罪悪感に苛まれるのですが、それを乗り越えていきます。あまりにもテーマが重いので、簡単には克服できない問題です。ラストの台詞で乗り越えて生きようとしている女性の姿が浮かび上がるのですが、観客の胸にストンと落ちたかどうか。ぼくには台詞だけではやや違和感がありました。しかし主人公の女性の明るい表情は説得力がありました。いい表情でした。

また次の創作劇を期待しています。がんばってください。

投稿者:

suhama

1940年、島根県邑智郡邑南町下亀谷生まれ・現在、大田市久利町行恒397在住・早稲田大学教育学部英語英文科卒・邇摩高校、川本高校、大田高校で演劇部を担当、ほぼ毎年創作脚本を執筆。県大会20回、中国大会10回出場(創作脚本賞3度受賞)主な作品「廃校式まで」「それぞれの夏」「母のおくりもの」「星空の卒業式」「僕たちの戦争」「峠の食堂」「また夏がきて」「琴の鳴る浜」「石見銀山旅日記」「吉川経家最後の手紙」「父の宝もの」など。 著作:「洲浜昌三脚本集」(門土社)、「劇作百花」(2,3巻門土社) 詩集「キャンパスの木陰へ」「ひばりよ大地で休め」など。 「邇摩高校60年誌」「川本高校70年誌」「人物しまね文学館」など共著 所属・役職など: 「石見詩人」同人、「島根文藝」会員、大田市演劇サークル劇研「空」代表、島根県文芸協会理事、大田市体育・公園・文化事業団理事、 全国高校演劇協議会顧問、日本劇作家協会会員、季刊「高校演劇」同人、日本詩人クラブ会員、中四国詩人会理事、島根県詩人連合理事長、大田市文化協会理事

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