日和聡子著「おのごろじま」

おのごろじま
 幻戯書房から日和さんの本が出版されました。「中原中也賞受賞の新鋭が描くもう一つの創作譚 書き下ろし小説」と
帯にあります。散文詩と小説の中間域で生まれた作品という印象です。日本の神話などが背景になった異色作です。


 冒頭の「みとのまぐわい」は次のようにはじまります。

 おのごろ島にて、いざなぎとまぐわう。
  こおろ。
  こおろ。
 われらははじめて降り立った島のまわりをめぐりながら、処どころ潮水にさわったり、海藻を撫でたりしつつ、だんだんに塩の積もった頂の方をめざした。

 作者はあとがきで次のように書いています。
 「ある島の、いつと知れない出来事、そのありさまを、写し、記した。描いたのではなく、〈写した〉。書いたというより、〈記した〉。《叙事》である。」

 おのごろ島とは伊弉諾尊(イザナギノミコト)と伊弉冉尊(イザナミノミコト)の二神が生んだ島で日本のことです。

 この本の魅力は言葉では説明し難く感想も人によって違いそうです。
 人間が余分でつまらぬ感情や考えを持つ以前の自然や動植物と同じ次元だったときのような素朴な風景がぼくには焼き付きました。同時に名詞や形容詞だけを置いたような単純素朴な会話がとても魅力的でした。もしかしたら古代日本人はあんな会話をしていたのではないかと思いました。

 近藤奈津子さんともども大田高卒の日和さんのますますの活躍を祈っています。

 

 

投稿者:

suhama

1940年、島根県邑智郡邑南町下亀谷生まれ・現在、大田市久利町行恒397在住・早稲田大学教育学部英語英文科卒・邇摩高校、川本高校、大田高校で演劇部を担当、ほぼ毎年創作脚本を執筆。県大会20回、中国大会10回出場(創作脚本賞3度受賞)主な作品「廃校式まで」「それぞれの夏」「母のおくりもの」「星空の卒業式」「僕たちの戦争」「峠の食堂」「また夏がきて」「琴の鳴る浜」「石見銀山旅日記」「吉川経家最後の手紙」「父の宝もの」など。 著作:「洲浜昌三脚本集」(門土社)、「劇作百花」(2,3巻門土社) 詩集「キャンパスの木陰へ」「ひばりよ大地で休め」など。 「邇摩高校60年誌」「川本高校70年誌」「人物しまね文学館」など共著 所属・役職など: 「石見詩人」同人、「島根文藝」会員、大田市演劇サークル劇研「空」代表、島根県文芸協会理事、大田市体育・公園・文化事業団理事、 全国高校演劇協議会顧問、日本劇作家協会会員、季刊「高校演劇」同人、日本詩人クラブ会員、中四国詩人会理事、島根県詩人連合理事長、大田市文化協会理事

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