07全国高校演劇島根大会の結果

07全校区大会パンフ松江での全国大会が無事終了しました。関係者のみなさん長い下準備からほんとうにお疲れさまでした。それぞれの学校の劇に個性や表現の幅や独自性がありとてもいい大会だったと思います。入賞校4校は下記の通りですが、8月27日(月)0:15~5:45までNHK衛生第2で国立劇場で
上演する劇が「青春舞台2007」というタイトルで放映されます。三刀屋の亀尾先生には創作脚本賞が贈られました。嬉しい限りです。おめでとうございます。


文部科学大臣賞・岐阜農林高校「躾~モウと暮らした50日」
(演劇部作)

文化庁長官賞・
・大手前学院大手前高校「あげとーふ」(中条岳青・作)
・静岡県立富士高校「紙屋悦子の青春」(松田正隆・作、演劇部脚色)・
・栃木県立栃木高校「塩原町長選挙」(山形南高校映画演劇研究部・作、演劇部潤色)

特別賞 
創作脚本賞 「笑う女」三刀屋高校演劇部顧問、亀尾佳宏
舞台美術賞 岐阜農林高校の舞台

07三刀屋高校笑う女新聞亀尾先生新聞

岐阜農林の劇は場面転換がたくさんあるのですが、劇の流れが切れず実にテンポがよくスムーズでした。しっかりした骨太いストーリーが脚本を貫いているからでもありますが、舞台装置を劇の中で実にうまく使っていたからでもあると思います。牛が登場するのですが、生徒たちのジェスチャーで演じて違和感がありませんでした。登場人物も15人と多いのですがうまく処理していました。

不本意で入学してきてやる気のない女生徒が卒業研究で牛の世話をします。生まれてきた牛は3本足。5000円で売られる話しを聞きアパートまで連れて帰ります。その家たるやローンがあって貧しい4人家族の家。キャベツばっかり食べていたり、お母さんにおねだりするのに夫までひっくり返って手足をバタバタさせたり、実に滑稽で笑わせます。こういうところは現代のお笑いの流れですが、迎合や模倣でない若者らしいさわやかさもあり好感が持てました。

牛の世話を通して立ち直っていくのですが感動もありいい劇でした。ラストはちょっと情に流れ鋭さが消えたのではないかと思いました。緞帳がもう少し早く下りたら感じも変わっていたかも知れません。

岐阜農林の劇は平成10年の鳥取大会でも観ましたが、部員の手作りの創意工夫と味が土の香りと共に伝わってきます。こういう伝統は大切にして欲しいものです。

「紙屋悦子の青春」は最初は不自然なことが目についてすぐ劇へ入っていけませんでした。部屋の空間が広すぎる、家の真裏の枯れ木がいかにも作りましたという印象。しかもデーンとど真ん中に置いてある。登場する軍人の衣装もいかにも作りましたという感じ。軍人らしく振る舞っているけどぼくには現代の高校生があちこちで顔を覗かせる。

しかし、見ているうちにその違和感がなくなっていきました。これは不思議でした。婚約をした少尉は戦場へ旅立ちます。悦子は、紹介したてくれた明石少尉に好意を抱いていたのですが、戦時下の厳しい現実の中で、秘められた男女の思いは圧殺され軍人らしさを発揮することだけで繋がらざるを得なかった非人間性と悲しみが伝わってきました。時代の持つ単純さ(価値観の単一性)が部屋の単純さ、桜の木の単純さ(場面が変われば桜の花が咲いていて効果的でした)などと一体になり、余分なものを排除した骨太い効果となって素朴にしかも力強く伝わってきました。女性陣の好演はこの劇を大いに支えていました。

このような劇を高校生が上演することはほとんどないこともあり、その点でも新鮮だったといえるかも知れません。

「塩原町長選挙」は実にダイナミックな劇でした。男子部員が中心で発想もマンガチックですが意表を突き、ばかばかしいと思いながらも見せるから愉快です。町の名産だった塩が見向きもされなくなり、過疎と高齢化で衰退するばかり。町起こしのために立ち上がった二人の兄弟の町長選挙の争点は「ソース」か「醤油」か。もう「塩」では古いというわけです。町を二分して激しい戦い。その戦いはばからしいけど象徴的で実に面白く笑わせる。なぜそんなことをしたか。実はテレビで中継され全国に塩原が知られることが狙いだった。

何よりも演じている部員たちが思い切って楽しんでいるのが伝わってきました。

「笑う女」は3度見たことになります。観客には新鮮な感動や
感情を強く残したと思います。叙情や子供らしい愛情や怖さや残酷さなどが皮膚から染みこんで来るように伝わってきました。ぼくは観ながら「この劇は詩だな」と思って観ました。

終わってすぐ、後ろに座っていた二人の女性徒が「わからんだった」と言っていました。それは「場」の設定が特異なことと、明夫と子供たちとの関係、現在と過去との関係が混乱を生む要素を内蔵して劇が作られているからでしょう。そこに引っかかって観はじめると最後まで劇を解釈しようとして観てしまいます。

「詩だ」と思って観ると、その矛盾は気にならなくなります。でもそれがいいのかどうかは別問題です。

三刀屋高校のみなさん、2年つづけて全国大会!ほんとうにおめでとう。島根の高校演劇を一気の全国レベルに引き上げてくれました。

(急用ができたので中断します。またいつかつづきを書くかもしれません。いつか。いつか。いつかとはいつか)

投稿者:

suhama

1940年、島根県邑智郡邑南町下亀谷生まれ・現在、大田市久利町行恒397在住・早稲田大学教育学部英語英文科卒・邇摩高校、川本高校、大田高校で演劇部を担当、ほぼ毎年創作脚本を執筆。県大会20回、中国大会10回出場(創作脚本賞3度受賞)主な作品「廃校式まで」「それぞれの夏」「母のおくりもの」「星空の卒業式」「僕たちの戦争」「峠の食堂」「また夏がきて」「琴の鳴る浜」「石見銀山旅日記」「吉川経家最後の手紙」「父の宝もの」など。 著作:「洲浜昌三脚本集」(門土社)、「劇作百花」(2,3巻門土社) 詩集「キャンパスの木陰へ」「ひばりよ大地で休め」など。 「邇摩高校60年誌」「川本高校70年誌」「人物しまね文学館」など共著 所属・役職など: 「石見詩人」同人、「島根文藝」会員、大田市演劇サークル劇研「空」代表、島根県文芸協会理事、大田市体育・公園・文化事業団理事、 全国高校演劇協議会顧問、日本劇作家協会会員、季刊「高校演劇」同人、日本詩人クラブ会員、中四国詩人会理事、島根県詩人連合理事長、大田市文化協会理事

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