18年7月2日に大田市民会館中ホールで開いた「朗読を楽しむ」について、島根県詩人連合の川辺事務局長が「島根県詩人連合会報61号」に感想を書いておられます。本人の了解を得て紹介します。
劇研「空」の朗読会に参加して
川辺 真
洲浜昌三さんが代表をしている演劇サークル・劇研「空」の朗読会が七月二(日)大田市民会館で行われ、田村のり子さんと二人で出かけた。劇研「空」では、平成十二年の結成当初から演劇に併せて朗読を行っているが、朗読中心の会は二回目。今回は、今年二月に亡くなった茨木のり子さんを偲んでということで、茨木さんの詩がメイン。
第一部では、「わたしが一番きれいだったとき」「根府川の海」「女の子のマーチ」「自分の感受性くらい」「倚りかからず」の五篇が、二人の劇団員(女性)によって朗読された。「女の子のマーチ」以下三編を朗読された渡利章子さんのしっかりとした朗読が印象に残ったが、「倚りかからず」は、解釈に倚りかからずに読み通した方が良いかも。
続いて童話の朗読があり、仁摩町の「仁摩お話ころりん」の竹下千歳さんが朗読された「戦争で死んだ兵士のこと」(作・小泉吉宏)がとてもよかった。すばらしい声音で、安心してお話の世界に入り込むことができた。
そのほか、地元の吟詠の会(成道流朝山支部)皆さんの構成吟詠「百人の棺」や、飛び入り朗読(肥後敏雄さん)と洲浜さんの石見方言詩の朗読もあって、結構楽しめた。
第二部は、茨木さんの二つの長編詩の群読。はじめに、「花の名」。作者と汽車に乗り合わせた「登山帽の男」とのやりとりから亡くなった父の追想へと展開する作品は面白いが、主人公役(?)の読み手の方のイントネーションが気になった(時々、石見方言が覗いたようだ)。
次の長編詩「りゅうりぇんれんの物語」は、男性三人の群読。三人がどういう風に読み分けをするのか、洲浜さんの演出を期待した。若い二人の劇団員でほぼ全編を読み分けられたが、畳みかけ、追い込むスピード感、淡々とした中に響いてくる絶望と運命の冷酷さなど。十分な声量としっかりした発語に支えられた朗読は期待以上であった。物語の展開部の説明でト書きのように挿入される少し年配の劇団員の朗読は、いわゆる演劇臭たっぷりの「台詞」のようで、やや違和感を覚えた。抑えた語りが効果的ではなかったかと思われた。
百人以上入る小ホールで、聴衆は七十名足らずであった。映像や音楽とのコラボレーションをさらに工夫することで、朗読会のファンを増やすことができるかもしれない。詩の作り手として、手作りのこうした催しを支えていきたい。