平22年度島根県高校演劇大会で県代表3校決定

 34回島根県高校演劇発表大会は10月30日31日の2日間加茂文化ホール ラメールで開催されました。7校が発表し三刀屋、松江商業、出雲の3校が最優秀に決まり12月18日19日に県民会館で行われる中国大会へ出場します。

 昨年につづき野村みさこ先生と講師として参加しました。審査員の先生は山本、織部、濱村の3先生でした。各校の劇を舞台風景として紹介しましょう。

 石見からは浜田高校が一校参加しましたが、大田、矢上、江津、浜商、今市分校、益田、翔陽、津和野、津和野など伝統のある学校では演劇部は廃部!浜田高校は木村先生が松江から帰って来られたので息を吹き返しましたが休火山寸前でした。浜田を中心に広がってくれるといいですね。

 浜田高校の創作劇「Deart…」。演出を担当し山田隼人役でも舞台に立った中山侑也くんの創作劇。生き生きと演じ楽しい舞台でした。メールですませ最近では書かなくなった手紙がテーマだったのですが、それをもっと一貫して追及すればよかった。作者の掌中で都合がいいように人物が操られる場面もありリアリティが希薄になるところもありました。天狗先生は一人大熱演でしたがあまりやり過ぎると一人浮き上がってしまいます。浜田は次の日には浜田地芝居大会へ出場。観劇した人からメールがありさわやかな舞台だったとのこと。往年の浜田劇が次第に復活することを期待しています。

 三刀屋高校は顧問の亀尾佳宏作「水底平家」。二年前は「みなそこへいけ」でしたが今回は手を加えての上演でした。平家の赤旗、源氏の白旗を使って照明、音響も効果的に生かした舞台は圧巻でした。舞台処理の力量はどこにも劣らないでしょう。女性がほとんどなので大声で朗唱したり力んで声をだすとどうしても上ずり言葉が明確でなくなるのは残念。男性が5,6人いたらすごい迫力が生まれるでしょう。

 少年のミカオは海に落ちて平安時代へタイムスリップ。平家一族からミカドと間違えられ、安徳天皇として遇されるのという面白い発想です。ミカオ自身がもっと主体的に行動すればさらに面白いドラマが起きるでしょうが、夢から覚め幻想の世界から戻るというラストです。舞台を縦横にそして立体的にも使い絵巻物を見るような場面が次ぎ次ぎと展開されてあっという間に終わる感じです。

 広島の県大会で篠本照明の杉原さんが国際演劇祭でこの三刀屋の劇を観てその照明の処理に感心したと顧問研修会で話しておられました。杉原さんは松江商業高校の卒業です。昌利先生から習ったと話しておられました。

松江農林高校「オーマイゴッド」村田ゆいか作。地神、蛇神、天神など神様がまったく普通の人間の姿で登場し高校生といろいろなからみかたをする。部分的に面白いところや場面として印象的なところがあるけどお互いの関係が分からない。思い切って自分たちの思うように脚色して高校生らしい舞台にすればよかったかも知れない。上の写真はラストの場面。シルエットはとても印象的です。

 松江商業高校「カラスが泣く」助演出で婦人警官の役でも素晴らしい存在感を示した佐藤愛子さんの創作。とても面白くみました。みんなの創意工夫があちこちで生きていて台本を超える豊かな表現があちこちでみられました。お婆さん役も実にうまくて感心しました。昨年もとても演技がうまく感心しましたがその伝統は受け継がれているようです。劇としては前半とおばあちゃんが出てくる後半でテーマが分裂している観があり、最初からどこかでおばあちゃんを出して一貫しておばあちゃんと子どもたちとの関係を追求すればとても思い白い劇になりそうです。劇のおしまいで安易に叙情で逃げて問題を解決した気になるのはまずい。解決しなくて問題提起で終わってもおかしくはありません。作者の都合のいい安易な解決で幕を下ろすのは劇がいっきに軽くなり嘘っぽくなります。頑張ってさらにいい劇にしてほしいですね。

 出雲高校「アン・ドゥ・トロワ」伊藤靖之作。とても素敵な舞台でした。発声が自然なので言葉がよく分かり動きも軽やかで劇にリズムがありました。数多くある場面が実に印象的で絵になっていました。しかし劇自体に発展性があまりないので場面場面を切り取った貼り絵の様な構成劇という印象が残りました。

 保育所でお母さんの迎えを待っている幼児たちが保育士の内面を演じてみたりするのは面白いのですが、次ぎ次ぎと保育園と関係のない人生ゲームを演じるのは何故か分かりません。脚本を貫く一本の骨が欲しい。演技や発声は昨年も素晴らしかったのが印象に残っています。

安来高校「ゆうたっちょの中学生絵日記」田中雄太作。遠藤祐滋、細田欣一潤色。何年も前に山県県で行われた全国大会で観た名作舞台。安来高校はこの名作に挑戦しました。力強い男性部員が6人、女性が3人いて伸び伸びと演じて楽しい劇に仕上がっていました。とてもうまかったので当然代表になる可能性も十分ありましたが、後半で場面がカットされたためか権田原先生は前半の強引な先生のままで後半には何も言及がなかったり、笑いと可笑しさは十分でていたけどその背後にある悲しさや切なさや何とも言えない思いの深さなどがあまり出なかったのではないかと思います。

 松江工業高校「あしたあなたあいたい」成井豊作。キャストが12人登場しました。部員がたくさん入ったのでこの台本を選んだとのこと。皆さんよく演じていましたが高校生の日常とはかけ離れた世界の出来事で、今から30数年後へ飛んでいくという未来の世界で話も分かりにくいところがあった。難しい劇だけど皆さんはかなりうまく演じていたと思いました。服装などはもっと人物に応じて工夫すれば劇がわかりやすくなり未来と現在との関係も理解しやすかったのではないかと思いました。

 以上舞台風景を紹介して簡単に感想などを書いてみました。あくまで僕が感じた感想ですから他の人が観れば違う感想が当然あるでしょう。そこが芸術のいいところであり奥深さでしょう。

 中国大会でまたいい舞台を見せてください。楽しみにしています。

投稿者:

suhama

1940年、島根県邑智郡邑南町下亀谷生まれ・現在、大田市久利町行恒397在住・早稲田大学教育学部英語英文科卒・邇摩高校、川本高校、大田高校で演劇部を担当、ほぼ毎年創作脚本を執筆。県大会20回、中国大会10回出場(創作脚本賞3度受賞)主な作品「廃校式まで」「それぞれの夏」「母のおくりもの」「星空の卒業式」「僕たちの戦争」「峠の食堂」「また夏がきて」「琴の鳴る浜」「石見銀山旅日記」「吉川経家最後の手紙」「父の宝もの」など。 著作:「洲浜昌三脚本集」(門土社)、「劇作百花」(2,3巻門土社) 詩集「キャンパスの木陰へ」「ひばりよ大地で休め」など。 「邇摩高校60年誌」「川本高校70年誌」「人物しまね文学館」など共著 所属・役職など: 「石見詩人」同人、「島根文藝」会員、大田市演劇サークル劇研「空」代表、島根県文芸協会理事、大田市体育・公園・文化事業団理事、 全国高校演劇協議会顧問、日本劇作家協会会員、季刊「高校演劇」同人、日本詩人クラブ会員、中四国詩人会理事、島根県詩人連合理事長、大田市文化協会理事

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