岩町功著 40年の労作 『評伝 島村抱月』ついに公刊

評伝 抱月
 浜田の石央文化ホール元館長で高校演劇の大先輩でもある岩町功先生が抱月の決定版を刊行されました。抱月に関することはすべて資料や証言付きで客観的に書かれています。正に抱月の決定版です。


評伝 抱月 3冊
 今回の本は上下2巻という県史や市史なみの膨大な本です。圧倒されます。上下で1700ページ以上ありますが、とても面白く引き込まれて読める本です。それは推理小説風に疑問を提出し、それを資料や証言で検証しながら解決していくという書き方にあると思えます。また著者の熱い情熱が底に流れていてそれが伝わってくるからでもあります。

 以前に出版された評伝は文芸評論家・江藤淳が全国紙で絶賛しました。東京新聞でも、「今年最初に読もうと決めていた本」にこの抱月の評伝をあげて、読後感を書いています。

岩佐氏の抱月

 岩佐壮四朗さんは浜田の出身で岩町功先生に習ったそうですが、早稲田に学び抱月について素晴らしい本を出しておられるので紹介しておきます。大修館書店からでていますが、たまたま大田の書店にあったので購入したものです。

 抱月は4年間イギリスやドイツに留学していますが、記録風の日記を書いていました。その中に観劇した劇のことがたくさん書いてありました。実に多くの劇を観ていて驚きます。岩佐さんはそれを丁寧に調べて月刊誌や研究論文に発表し、それをまとめたものです。参考までに紹介しておきます。

 二人が浜田の出身というのも面白いですね。

href=”https://stagebox.sakura.ne.jp/wp-content/inportimg/img181_0909.jpg”>評伝抱月 書評 洲浜
  
 書評では紹介しきれませんでしたが、実に多くの著名人が登場し、抱月との関係を知るのも楽しみです。津和野出身の鴎外や中村吉蔵はもちろんですが坪内逍遥、松井須磨子、小山内薫、当時の早稲田の文学者や演劇人などたくさん出てきます。

 なんといっても心を打たれるのは、抱月の妻や5人の子供たちのこと、兄弟姉妹のこと、そして借金を残しお寺で焼死した抱月の父のことです。40年以上かけて調べ、こつこつ証言を集めてきた著者しか絶対に書けない本です。

 経済史が専門である社会科教員の著者は科学的で客観的な目で資料を集め分析し使用しています。その眼の確かさに感服します。

 同時に脚本も書く演劇人である著者は熱い心を持って文学者でもあります。
無駄のない説得力のある文章には以前から敬服していました。

 高価なので個人では購入しにくいかもしえませんが、図書館などにはぜひ備えておいてほしい本です。<a

投稿者:

suhama

1940年、島根県邑智郡邑南町下亀谷生まれ・現在、大田市久利町行恒397在住・早稲田大学教育学部英語英文科卒・邇摩高校、川本高校、大田高校で演劇部を担当、ほぼ毎年創作脚本を執筆。県大会20回、中国大会10回出場(創作脚本賞3度受賞)主な作品「廃校式まで」「それぞれの夏」「母のおくりもの」「星空の卒業式」「僕たちの戦争」「峠の食堂」「また夏がきて」「琴の鳴る浜」「石見銀山旅日記」「吉川経家最後の手紙」「父の宝もの」など。 著作:「洲浜昌三脚本集」(門土社)、「劇作百花」(2,3巻門土社) 詩集「キャンパスの木陰へ」「ひばりよ大地で休め」など。 「邇摩高校60年誌」「川本高校70年誌」「人物しまね文学館」など共著 所属・役職など: 「石見詩人」同人、「島根文藝」会員、大田市演劇サークル劇研「空」代表、島根県文芸協会理事、大田市体育・公園・文化事業団理事、 全国高校演劇協議会顧問、日本劇作家協会会員、季刊「高校演劇」同人、日本詩人クラブ会員、中四国詩人会理事、島根県詩人連合理事長、大田市文化協会理事

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