人物しまね文学館 日和聡子さん

人物しまね日和聡子
 連載中の第11回目、2008年12月13日に美郷町出身で大田高校卒業の日和聡子さんが掲載されました。


   日和聡子さん(詩人・作家美郷町出身)
      ー中也賞受賞・期待の星ー
                      洲浜昌三
 日和聡子は、2002年2月、詩集『びるま』で第7回中原中也賞を受賞し、彗星のように詩壇へ登場した。
 日和は、このとき27歳で、前年3月に発行したばかりの第一詩集で大賞を射止めた。
 この詩集発行の三年くらい前から『詩学』の作品研究へ投稿し、特異な詩風が注目されてはいたが、この受賞までは無名に近かった。
 『びるま』は、ほぼ同時に発行された詩集『唐子木』とともに、私家版であった。
 この賞は中也の生誕地・山口市が、「新鮮な感覚を備えた優れた現代詩の詩集」を顕彰するために創設したもので、187点のなかから選ばれた。
 選評と詩が『ユリイカ』四月号に掲載されたが、5人の選者の1人、荒川洋治は、「まるでびっくり箱をあけたみたいだと思った」と書き、中村稔は、「異能というべき詩人であり現代詩人の誰にも似ていない極めて個性的で独創性豊かな詩人であることは疑う余地がない」と述べている。
 この受賞詩集は青土社が新版を出版し、山口市は英訳本を出した。
 日和聡子は1974年、島根県邑智郡美郷町に生まれ、大田高校を卒業し立教大学文学部で日本文学を専攻した。卒業後は上智大学で事務職員として働き、詩とは遠ざかっていたが、あるとき手にした尾形亀之助の詩に衝撃を受け、「変わった詩で、私にももっと面白いことができそうに思え」再び詩を書きはじめ、その作品をまとめた詩集が受賞に結びついた。 
 幼いときから本が好きで、詩は小学校1年ころから書いていたという。高校のときには第25回島根県芸術文化祭の詩部門に応募した『サーカディアンリズム』が銀賞を受賞した実績がある。小説を書きはじめたのはこの頃であった。
 中也賞受賞を契機に、日和は一躍注目される存在となり、『現代詩手帳』などに詩や随筆を連載、「女性詩人34人集」に選ばれて作品が載るなど詩人として評価が高まっていった。 
 受賞後の詩集には『風土記』(2004年、紫陽社)、『虚仮の一念』(2006年、詩潮社)がある。
 現代詩が「私」性に固執し閉塞傾向にあるなかで、日和の詩にはそれを離れた自由な文学的発想があり、ありふれた日常の中に異界を持ち込んで新たな次元の詩的空間を生み出して楽しもうとする遊び感覚がある。表現は高度で難解だがユーモアや土俗性もあるのが特徴である。
 『「私」を越えた次元の感覚は、故郷の風土に育まれた』と新聞のインタビユーに答え、大田高校での講演では、『私の詩にには故郷の原風景がある』と話している。
 日和は詩だけではなく小説でも期待の星である。
 2004年に『新潮』7月号に『瓦経』を発表。翌年『すばる』八月号に発表した『尋牛図』は第32回川端康成文学賞候補、2008年刊行の「おのごろじま』は第21回三島由紀夫賞候補に残った。
 2006年『新潮』5月号に載った『火の旅』は翌年出版された。これは初めての長編小説で、梅崎春生の名作『幻火』の舞台となった鹿児島と熊本を主人公の光子がたどる話しだが、日和は大学の卒論で梅崎を研究しただけに、小説の細部も緻密で説得力があり、文学を愛する日和の熱い思いが伝わってくる力作である。
 この10月には「9人の人気作家が織りなすもう一つの源氏物語」と銘打って「ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ」が出版され、日和聡子は町田康、島田雅彦、角田光代など新進気鋭の実力派作家の一人として源氏物語の『蛍』を現代訳している。
 今後も目が離せない期待の星である。

     -敬称略ー     (島根県詩人連合理事長)

 2006年9月4日、日和さんは大田高校文化祭の講演に招かれて市民会館で講演しました。その時の大まかな様子はブログで紹介しています。その時二階の控え室でいろいろ話しました。写真も写しましたので近影を紹介してみます。
 左側は漫画にもなりませんが右側の人は絵になりますね。瞬間人の目を引き寄せるアトモスフィアがあります。
日和さんと洲浜
 日和さんの本が出版されても大田では手に入りません。書店に注文しても来ないのです。10冊くらい注文して目立つ所へ積んでおいてほしい、と頼んだのですが、田舎の小さな書店は相手にしてくれないそうで、とうとう実現しませんでした。入沢康夫さんの詩集「かりのそらね」も注文したのですがとうとう購入できませんでした。

 「火の旅」を山陰中央新報の書評を頼まれてかきましたがいつか紹介しす。日和さんと同期だったり友達だったり、同じ出身地だったり関心がある人はインターネットで本を注文したほうがいいかもしれません。応援しましょう。大田の書店では困難です。

 人物しまね文学館は、平田俊子さん(詩人・作家)を1月10日に日野雅之さんが書かれました。1月17日には田村のりこさんが松江市出身の井川博年さん(詩人)を書かれました。

 田村さんは井川さんと交流もあり作品も読んでおられるし詩の批評眼も鋭いし文章が書ける人なので、自在なキラリと光る筆で見事に井川さんを紹介しておられます。

 島根出身だからということで我田引水になったり、根拠もなく島根と結びつけたりすれば命取りになります。詩の潮流の中での位置づけや時代とその文学作品との関係などを無視したり十分理解せずに書くと単なる観光用人物紹介になり、当人に失礼になります。短い文章ですが難しいところです。

 1年半くらい掲載予定です。ぜひ山陰中央新報の文化欄を読んでください。(当方は同紙と関係はありません)

 

 

投稿者:

suhama

1940年、島根県邑智郡邑南町下亀谷生まれ・現在、大田市久利町行恒397在住・早稲田大学教育学部英語英文科卒・邇摩高校、川本高校、大田高校で演劇部を担当、ほぼ毎年創作脚本を執筆。県大会20回、中国大会10回出場(創作脚本賞3度受賞)主な作品「廃校式まで」「それぞれの夏」「母のおくりもの」「星空の卒業式」「僕たちの戦争」「峠の食堂」「また夏がきて」「琴の鳴る浜」「石見銀山旅日記」「吉川経家最後の手紙」「父の宝もの」など。 著作:「洲浜昌三脚本集」(門土社)、「劇作百花」(2,3巻門土社) 詩集「キャンパスの木陰へ」「ひばりよ大地で休め」など。 「邇摩高校60年誌」「川本高校70年誌」「人物しまね文学館」など共著 所属・役職など: 「石見詩人」同人、「島根文藝」会員、大田市演劇サークル劇研「空」代表、島根県文芸協会理事、大田市体育・公園・文化事業団理事、 全国高校演劇協議会顧問、日本劇作家協会会員、季刊「高校演劇」同人、日本詩人クラブ会員、中四国詩人会理事、島根県詩人連合理事長、大田市文化協会理事

「人物しまね文学館 日和聡子さん」への1件のフィードバック

  1. 昨夜、平成24年11月8日、このブログを何気なく見ていました。驚いたことに日和聡子さんのことを書いたこの蘭の閲覧者が飛び抜けて多くなっているじゃありませぬか!3年前に書いた大昔(時代のスピードはぼくの少年期の千倍以上なり)の記事です。

    なんで、なんでかな、どうしたんかな、なにかあったかな、と思いつつ、もしかしたら来年日和さんを大田市文化協会の講演の講師としてきてもらうようにお願いしたので、それでかな、などと思っていました。

    ところが、今朝、9日、郵便受けを見ると、日和さんからの手紙!あれ、なにかあったんかな?と思いつつ開いてみたら、なんと!なんと!おめでとう!!

    第34回野間文芸新人賞受賞です!本は『螺法四千年記』。今年7月に出版され、日和さんから贈ってもらっていました。やっぱり、というのが第一の感想です。いつかはきっと高く評価されると思っていました。おめでとう、日和さん!

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