浜田高校県大会へ

9月20日(火)大田市民会館で行われた高校演劇石見地区大会で浜田高校が最優秀賞を受賞し地区の代表で県大会へ出場することになりました。県大会は10月28,29日(土)ラメールで開催されます。石見地区大会の様子を簡単に紹介しておきます。


江津高校が直前に取りやめたために3校になりました。大田や矢上が出なかったのは初めてのことですが残念でした。出場はしなかったけど矢上や邇摩高の先生やせいとさんは裏方で大会を支え大活躍でした。
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 津和野が7年ぶりに参加したのは明るいニュースです。花本彩音さん(生徒)の創作で「Prolougue」。キャストは5人。部長が脚本を書くのですがみんなが好き勝手な注文をして6回も書き直す。その脚本は劇中劇で演じられます。絵里は寂しいので人形を作る。その人形に悪魔が命を吹き込み、人形は外へ出て新鮮な経験をする。ラストは部活動の場面にもどり、またみんな言い合い。「ああ、もういやだこんな部の部長!」で劇は終わります。面白い終わり方です。
 劇作りはよくわからなかった、と言っていましたが、発声も良く動きもまずまずでした。あちこちに生徒さんの新鮮な感覚や工夫が生きていて楽しく劇を観ました。脚本も新鮮でしたが、劇中劇が独立していて、その前後と有機的な関連がないのが惜しまれます。新鮮な面白い素材があちこちにあるのですが、その関連性があまりないところもありました。脚本を書く前に骨組みを建てておけばよかったのではないかと思います。でも時間がないので書き上げたら練習をするのが精一杯。基本を直す時間なんかありませんよね。それが現実。来年もぜひ出場してほしい。大健闘でした。
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 浜田商業も生徒さんの創作で「さくら」(松本佳奈作)。劇中で森山直太郎の「さくら」を使ったので題にしたのでしょうが、ちょっと題のつけかたが安易。内容はさくらとは関係ない劇でしたので。卒業して船に乗って島から離れていく出だしや、ラストの船上の場面などはとても印象的でした。劇の「場」として、島が強い内的動機
をもっていると思いましたが、あとで聞くと作者は隠岐の出身だとか。やっぱりと納得しました。ものを書く人にはこのモチベーションのあるなしが決定的に重要なのです。劇の中ほどは島での4場面の楽しい回想なのですが、この4場面が同じ質の平板な並列だったのが惜しまれます。主人公のあざみは女優になりたいという夢をもっているのですが母には馬鹿にされています。この葛藤を中心に据えればこの劇全体が立ち上がって立体的になり奥行きも出たと思います。若者の夢への挑戦と不安という主題が感動的に観客へ伝わったのではないかと思います。
 発声や動きなどで良い時と良くない時の差がありました。練習時間が十分とれなかったのだと思います。「ドラマは葛藤である」ことをしっかり頭に入れて書いたら味のあるいい劇になる可能性が十分あります。
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 浜田高校「Blue Monday」は部員の古和彩音さんの創作。よく考えて何度も書き直したのではないかと思います。無駄のない引き締まった脚本です。県大会へ出場しますのでここで書くことは控えますが、緞帳があがると「さーすが浜田」と思わせます。発声の良さ、歯切れの良さ、身の動きの軽やかさタイミングのいい会話のキャッチボール等々・・・。すべてが抵抗なく自然に入ってきます。唯一の石見地区代表としてがんばってください。

 石見地区はここのところ生徒さんの創作がつづいています。感覚や発想など新鮮でとてもいい点もたくさんあります。だけど生徒さんは1,2年しか演劇に関われません。初めて脚本を書きそのまま上演するのは大冒険です。もちろん冒険大賛成ですが
ドラマの基本は事前に頭に入れて書いてほしい。そうでないといい素材がばらばらに並列されたままだったり、自己満足や叙情に流れすぎたり、抽象的過ぎたり(青春時代の頭脳は超抽象的だ)、観客への心理的効果をまったく考えずに書いたりします。そういう基本を心得て書き始めると作品が舞台化されたとき生きて立ち上がります。
 本当は講習会でもあればいいのですが。いろいろな人を呼んでシンポジュウムを開くのもいいですね。日本劇作家協会中国支部で計画をたててみますか。夢想ではなく実現可能な話しです。支部長の伊藤隆弘先生に提案すると中央から講師を招くこともできます。高校演劇と共催してもいいですね。

投稿者:

suhama

1940年、島根県邑智郡邑南町下亀谷生まれ・現在、大田市久利町行恒397在住・早稲田大学教育学部英語英文科卒・邇摩高校、川本高校、大田高校で演劇部を担当、ほぼ毎年創作脚本を執筆。県大会20回、中国大会10回出場(創作脚本賞3度受賞)主な作品「廃校式まで」「それぞれの夏」「母のおくりもの」「星空の卒業式」「僕たちの戦争」「峠の食堂」「また夏がきて」「琴の鳴る浜」「石見銀山旅日記」「吉川経家最後の手紙」「父の宝もの」など。 著作:「洲浜昌三脚本集」(門土社)、「劇作百花」(2,3巻門土社) 詩集「キャンパスの木陰へ」「ひばりよ大地で休め」など。 「邇摩高校60年誌」「川本高校70年誌」「人物しまね文学館」など共著 所属・役職など: 「石見詩人」同人、「島根文藝」会員、大田市演劇サークル劇研「空」代表、島根県文芸協会理事、大田市体育・公園・文化事業団理事、 全国高校演劇協議会顧問、日本劇作家協会会員、季刊「高校演劇」同人、日本詩人クラブ会員、中四国詩人会理事、島根県詩人連合理事長、大田市文化協会理事

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