「昌ちゃんの詩の散歩道」カテゴリーアーカイブ

H25 「島根年刊詩集」第41集刊行

2013年3月、「島根年刊詩集」第41集を刊行しました。92ページ、31人が参加しています。
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島根県の川本町生まれで長崎に在住のH賞受賞詩人・高塚かづ子さんも参加されました。「ケリケリナ・コンストリクタ」という深みがあり示唆に富む素敵な詩です。中村梨々さんも初めて参加、「父の庭」という随筆を書いておられます。中村さんは現在は益田市在住で、昨年詩集「たくさんの窓から手を振る」を出版されました。

長年「山陰詩人」で詩を書き、年刊詩集にも欠かさず参加された松田勇さんが逝去され、田村のり子さんが心のこもった追悼記を、川辺さんが心に沁みる追悼詩を書いておられます。

個性的で多様な作品があるので、楽しく読めます。定価は1500円。希望があればお送りします。

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「竹久夢二特集号」出版 花美術館

竹久夢二のファンは全国にいます。昨年夏、中四国詩人会大会の翌日、文学訪問で詩人の正富汪洋と夢二のふるさとを訪ねました。二人は幼友達で、家の裏の低い丘をこえれば、汪洋の家が当時はありました。夢二の家の庭から瀬戸内海方面の広大な田園風景風景に明治時代を重ねる、夢二の少年時代を想像すると、見えてくる懐かしい風景がありました。
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瀬戸内海が見下ろせる牛窓神社へいくと、夢二がよく来て、じっと見つめていたという江戸時代の絵馬・旅芸人の絵も見ました。

数ヶ月後に花美術館が、夢二の特集号を出すというので詩の誘いがありました。当初はまったく乗り気ではなく断ったのですが、ある朝、ふと「夢二の詩をかたらどうだ」という啓示のようなものがあり、書いてみました。出来るだけ、夢二が本や日記などの中で使った言葉を使って書いてみました。
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本はたくさん写真や資料がある豪華本で、3千円してもおかしくないほどですが、1200円です。夢二ファンには手や足がでそうな魅力があります。大田では昭和堂書店に少しだけあります。

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その詩を紹介してみます。普通、詩は詩人仲間で読まれるだけで一般の人はほとんど現代詩を読むことはありません。この本は現代詩とは関係無いので詩人で読む人はほとんどいないはずです。分かりやすい詩ですから読んだ思わぬ人から電話などがあり驚きました。

 

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さて、上記の詩は一行の字数や全体の字数に制限がありましたので、ちょっと自由な気持ちで手を加えてみました。これは「石見詩人」130号に載る予定です。

どこかにあったなつかしいもの
ー 竹久夢二によせて ー   

洲 浜 昌 三

太古からつづいた木と草と土と紙の家が
鉄とコンクリートと電気の騒音の街になり
新しい思想が流れ込み夢が語られ自由が叫ばれ
気がつけば集団の軍靴の音が近づいてきて
あっという間に菫(すみれ)や女郎花(おみなえし)を踏みにじって行った
そのむかし

「詩はパンにならず画家になった」
あなたの美人画や草画は飛ぶように売れ
多くの名前がつけられた
「大正ロマンのシンボル」
「大正の歌麿」
「叙情の詩人画家」

夢と美を求めて自由奔放に生きた
あなたに送られたもう一つの名前
「華やかな女性遍歴の芸術家」

哀愁や憂いや哀しみを湛えた夢見るような大きな瞳
着物を着崩した身体をしなやかにくねらせた肉感的な姿態
伏し目がちに誰かを待っている弱々しくやつれた女
木の下に座わり遠くを眺めている少年と少女の後ろ姿

どこかにあったなつかしいもの
きえていくなつかしいもの

格子窓の彼方に広がる緑の水田と遠い山並み
海へつづく街道を往来する巡礼や旅芸人や薬売り
神社で見上げた江戸の絵馬「お陰参りの図」の旅姿
泣く時にいた優しい母 遊ぶ時にいたよき姉
蔵の二階の書物にあった平安朝の雅(みやび)な宮廷生活
姉の小箪笥からこっそり懐へ忍ばせた美しい布キレ
土蔵の前の椿の下で聞いた紡車(つむぎくるま)の音

きこえてくる忍びなき き
こえてくる勇ましいこえ

骸骨になった夫が白衣姿で立つそばに
悲しみに泣く妻のコマ絵を描いたこともあった
「自由や革命を低唱し伏し目がちに銀座を歩いた」ことも
秋水らの処刑を知ったときには衝撃を受け下宿で通夜をした
「絵筆折りてゴルキーの手をとらんに
はあまりにも細き腕とわびぬ」
と新聞に書いたこともあった

将軍や立身出世を鼓舞する絵は一枚も描かなかった
凱旋する楽隊を描いても後に負傷兵と泣く女がつづいた
本格的な油絵も描いたが生涯どこにも属さなかった
軍靴はあなたの叙情など踏みつぶし
「軟弱な色道画家」を吹き飛ばしていった

「ありがとう」
と信州の療養所で遠い世界へ旅立つまで
あなたは庶民を通して描きつづけた

どこかにあったなつかしいもの
きえていくうつくしいもの
ここにはないどこかにあるもの

夢二が書いた詩や日記や小説を読み、夢二を論じた本を読んでこの詩を書いたのですが、夢二の心情が僕なりによく理解できた気がしました。ドイツへ行ったとき、ナチスの軍隊の鉄兜に不気味な未来を見、同時にドイツとの盟友日本に不安を感じたと日記に書いています。単なる叙情詩人画家ではないところに夢二の絵の人物の「哀しさ」がただよい出ているのではないかと思いました。

 

詩 「礼節」  (現代生活語詩集2012)

 

           礼 節                               洲 浜 昌 三

道ばたじゃ三回唾(つば)ぁ吐ぁて
ちょっとごめんなさい いうて シッコをせにゃいけんよ
川へ小便(しよんべん)をすりゃ目がつぶれるけぇな

迷信だと思いながら
何故か子どもの時から守ってきた

 

世界一豊かな国の高層ビルディングが
あっという間に地上に崩れ落ち

 

世界一貧しい国の大地が連日爆撃されはじめ
神と神が正義を高く掲げて真正面から衝突し
泥沼の戦いが始まったさわやかな日本の九月

 

自然に優しく安上がりで安全と一億二千万を
越える人がひしめく小さな島に創りあげた
原 発神話が吹き飛んださわやかな若葉の春三月

 

正義のために
人を神に仕立てて戦った国の子孫であり
豊かさのために 科学を神のように信じてきた国の住人である
ぼくはますます無神論者になる

 

ー 目に見えぬ神は何処(いづこ)と人問(と)わば
神は水なり火なり土なり ー

 

中国山脈の紅葉に囲まれた盆地
ふるさとの晩秋の森の社(やしろ)で
目にした短歌一首

 

縄文人と弥生人の混血児であるぼくには
これこそ懐(なつ)かしい

 

母の言葉は
太古の昔から 命を生み
命を育んできた
大地への礼節だったのだ

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2012年10月に大阪の竹林館から出版されました。北海道から沖縄まで153名の詩人が詩を寄せています。編集者の一人、永井ますみさんは、直接本人の朗読する映像を撮影するために、今回も全国へ足を伸ばしておられます。そのうちDVDが完成することでしょう。

上の詩は冒頭だけ、島根県邑智郡邑南町田所で使われている生活語で書いています。方言は文字では10パーセントも方言の特徴を出せません。声でないと味がでません。そこが難しいところです。

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H25 「しまねの風物詩」Ⅱ刊行計画 ー詩人連合総会で決定ー

2013年5月26日、大田市のパストラルで島根県詩人連合総会を開きました。午前10時30分からは理事会、午後は総会と「島根年刊詩集」第41集の合評会を開き、16時30分に閉会しました。参加者は10名前後ですが、中身の濃い一日でした。

行事報告や決算、予算などと共に大きな議題は「しまねの風物詩」Ⅱの刊行計画案の審議でした。いろいろな意見がでましたが、詩人だけではなく、多くの人に詩に親しんでもらうことを目標にして、まず過去の作品で自薦他薦を含めふさわしい作品を集めてみよう、ということになりました。もちろん新作も大歓迎です。

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(パストラルの玄関でパチリ。益田の高田夫妻は都合があり途中で帰られました。2年前には90歳を過ぎた肥後敏雄さんや松田勇さんも参加されました。杖をついてゆっくりと歩いて帰られる姿は今も脳裏を離れません。詩を書いて徳をすることなど何もありませんが、その「志の高さ」には頭がさがります)

「しまねの風物詩」は1995年に刊行しました。益田市の画家・金本裕行さんのスケッチをたくさん挿入して読みやすい詩集になりとても好評でした。道の駅や大森銀山の店などにもおかせてまらい、かなりうれました。1000円という手軽さもよかったのでしょう。

先日はシンガポールと千葉から娘の友人が石見銀山に来られ、娘の依頼で案内しましたが、おみやげに「しまねの風物詩」を贈呈しました。菓子などに添えて一緒におみやげにするのもいいなぁ、と思った次第です。多くの人に参加していただきたいものです。事前に購入数予定を調べて、発行資金の一部にすることになっています。一冊1000円です。10冊でも20冊でも予約して強力してくだい。

次に最初に刊行した「しまねの風物詩」の表紙を紹介します。今でもすこしですが残部がありますので欲しい人は申し出てください。書店にはもうありませんが、毎年数冊は購入希望があります。

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    「しまねの風物詩Ⅱ」の刊行について                             (事業の内容)

1.刊行の目的    県内の詩人の県内での発表の場としては詩誌「山陰詩人」、「石見詩人」、「光年」 アンソロジー「島根年刊詩集」などがあるが、読者はそれらの詩誌等に属している詩 人にほぼ限られている状況です。一般県民の人たちにもわかりやすい「しまねの風物」 という視点から作品を収録し、刊行することによって詩人以外の人たちにも詩に親し んでもらう機会とするものです。

2.作品の募集
(1)島根県詩人連合の会員だけではなく、県内、県外の一般の人も対象にして募集する。
(2) 自薦他薦も含め過去の作品からふさわしい作品を選ぶ。「島根文芸」の入選作品や過去の個人詩集からも選んで推薦する。
(3)募集要項を作り関係者やマスコミ、図書館、公共機関などに送りPRする。
(4)小中学生や高校生の作品でも(既成を含む)ふさわしい作品は対象にする。
(5) 募集期間は、平成25年4月~25年8月(予定)とする。

3.作品の内容    島根の風景や、行事、歴史、地名、人物、事件、文化、精神的な風土、伝承、神話、   民俗、風習などあらゆるものを対象にした詩を対象にする。名前にこだわって狭い意  味の「風物」に限定しない。

4.本の内容
(1) 詩の作品が中心になるが、前回のようにスケッチを入れるか、あるいは写真を入れるかは編集段階での検討課題とする。
(2)本の体裁は前回のものをベースに検討する。総頁数は概ね100頁とし、作品数は     40~50篇とする。
(3)地域別の編集とし、方言詩やこどもの詩などを別に編集することも検討。

5.作品の選考
(
1)理事を中心とした選考委員会を作り、応募・推薦作品の中からふさわしい作品を選考する。
(2)選考作業期間は、平成25年10月~11月(予定)とする。

6.刊行予定       刊行時期は平成26年2月(予定)とする。

 

総会では、いかにして若い人を増やすかも議論しました。インターネットに自由に詩を書く若い人から、高いお金を出して同人誌に書く意味があるのか、といわれると明快な言葉は返せません。どの文化団体でも切実な問題です。発行毎に一編の詩のために5千円、8千円という負担を若い人に要求することは無理です。難しい問題ですね。

 

詩「空にそびえる草原」

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空にそびえる草原   

洲 浜 昌 三

広大な草原の海原が 目の中に飛び込んできたとき
山育ちのぼくの世界は砕け散った
ー草原(くさはら)が空までつづいているー
昭和三十年高校生の時のこと

その後この山は国立公園に指定された
「全山が芝 根笹でおおわれわれ
世界的にも貴重な草原風景の美しさ」
それが指定の根拠になったという
昭和三十八年のこと

この美しい山を再び訪れた
国立公園指定審議委員の沼田氏は
「昔の面影はまったくない 指定を外すべきだ」
と語ったという
平成三年のこと

30年の間に何があったのか

牛の姿が広い草原から消え
雑草や雑木が自由に伸び伸びと育ち
山頂近くまで杉やカラ松が植えられ

貧しかったこの国は
世界第二位の経済大国になった

牛の放牧は江戸の初期に始まるという

明治元年 3000頭
昭和33年 1766頭
昭和41年 743頭

標高1126メートル 山頂までつづいた
美しい風景は
牛と大地が生み育てた草原だったのだ
350年の歳月をかけて

写真は北ノ原です。後ろの親三瓶は木が密集していますが、昔の三瓶の写真をみれば一面きれいな草原です。

島根県詩人連合では、続「しまねの風物詩」刊行を計画しています。平成25年5月26日の総会へ提案します。島根の風物や歴史などを詩にし一般の人たちに読んでもらおうという企画です。誰でも応募できますが編集委員会で審査します。

短詩 急流を遠くに眺め

急流を遠くに眺め

久利町  洲 浜 昌 三

「おかえりなさい ごくろうさん」
明るい声で玄関まで出迎え
「きょうもがんばったね」
と高々と抱き上げる

おしめが汚れると
「またでたねぇ よかった よかった」
歌うように話しかけて取り替える

広告の紙が鶴になり
空を舞って雪のヒマラヤを越え
風呂の船で銀河を渡る

外へ出ると靴が鳴って歌になり
手をつないで野道を行くと
二羽の小鳥になり
夕焼けの空が歌になる

「はやくはやくはやくはやく」
あのころそれが子供たちへの言葉ではなかったか

時間の激流の中であえいでいたころ
流れに沿って共に泳ぐのが精一杯だった

今 急流を遠くに眺め
じいちゃん ばあちゃん と呼ばれる
遠く離れた丘の上に立ち
見えてくる時間と景色がある

 

大田市文化協会が発行している会報「きれんげ」106号に掲載された詩です。

我が子を育てるときにはいつも時間に追われていました。特に朝は戦争です。食べさせながら「はやくはやく」、着替えをさせながら「はやくはやく」、靴をはかせながら「はやくはやく」。

退職し、孫との距離になると、まったく違う時間が流れます。ワイフさまが一歳の孫のオシメを替えながら、ウンチがでているのを見て「よかったね、よかった、よかった」と言っているのを聞いたとき、感動が走りました。こんな豊かな言葉があるとは!

お互いに勤めながら4人の子供を育てていたころは、「またウンチをして」という言葉が出ていたんじゃないだろうか。

自分が書いた詩は見る度にいやになるところがあり、削除修正の手がでます。困ったものです。上の詩も少し手が入っています。次に見ればまた手がでそうです。

詩誌でもないのに詩を載せてくれる会報や雑誌はほとんどありません。「きれんげ」はその点で編集者の見識を感じます。読んで見たい人があれば送ります。8ページの冊子ですが、大田市の文化行事、石見銀山の歴史などとても読み応えがある会報で好評です。

高田賴昌さん『埋み火』を刊行

島根県益田市で発行されている「石見詩人」の編集者・高田賴昌さんが本を出版されました。2012年(平成24)11月です。今までに新聞や雑誌などに書いてこられたものをまとめたものです。たくさん写真もあり、貴重な記録なども載っていて参考になります。

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あとがきの冒頭に「自らのパソコンで試行錯誤しながらも、75年の記憶の断片を小冊にすることができた。不思議な気持ちで眺めている。採録できなかった貴重な資料がある。出来得ることならばこの小冊をもとにさらなる夢を広げてみたいと思う」とあります。2弾、3弾がありそうです。

目次は次のとおりです。

1.田畑修一郎(作家)
1.赤川武助(児童文学作家)
1.右田朝子(日本初の眼科女医)
1.折戸徳三郎(小泉八雲のアシスタンツ)
1.大谷嘉助(歌人)
1.高田敏子(詩人)
1.キムラフジオ(詩人)
1.岡崎澄衛(詩人・医師)
1.益田糸あやつり人形
1.アメリカ東部とパールハーバーの旅 (176〜191ページ)

高田敏子さんは昭和49年11月23日に斐川町の「湯の川温泉」にお招きして懇親会が開かれたとき、ぼくも参加したことがあります。高田正七さんが中心になって第一回の「島根の詩祭」を企画された時のことです。昭和52年12月には高田賴昌さんなど石見詩人同人が中心になって高田敏子さんをお招きしたそうです。三度目は昭和54年で益田市の仏教会が招待し、賴昌さんの自宅で歓迎会を開いたそうです。

この本の中に高田敏子さんの言葉として次のように書かれています。
「いい詩ね、といわれる詩には何があるかと言えば、ほめることばがあること。しっかりとものをみて、そのものの中からどこがいいかを探し出す。そのいいところを引き出し、また作り出して、よい思い方をして、ことばにしたとき、よい詩が生まれる。〜もののよさを引き出すのが詩です。以下略」

とても参考になります。現在こんな姿勢で詩を書いている現代詩人はほとんどいないでしょう。一般の人が詩から離れてしまったのもここら辺に一つの原因がありそうです。高田敏子さんが朝日新聞に詩を連載されていたとき、いつも目が洗われるような思いで愛読していましたが、こういう姿勢で書いておられたのでしょうね。

この『埋み火』では高田敏子さん以外は益田に関係のある有名人です。いい本を出されました。長い間文章を書いているとたくさん溜まります。正式な本にして出版すれば金がかかります。記録として本にして残すことに徹して最小限の費用で実現する。一つの方法ですね。ぼく自身も以前からその点で考えることがあります。参考になりました。

本に定価は書いてありませんが、欲しい人は益田市東町17-15へ問い合わせてみてください。

H25 第25回中四国詩人会理事会

1月12日、岡山市の岡山国際交流センターで、平成25年最初の理事会が開かれました。岡山市駅の西口は整備されてスッキリしました。DSC04299            (岡山市駅の西口)

会議は1時15分から始まりました。議長は島根の川辺さん。山本衛会長のユーモアあふれる挨拶のあと、新役員の承認、香川から新会員の加入(吉本有紀子さん、藤原綾乃さん)の紹介、があり岡山大会の経過報告、会計の中間報告、13回中四国詩人賞の募集、選考委員について話し会いました。
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(岡山国際交流センター)

DSC04308            (事務局長 萱野さんと議長の川辺さん)

今年の大会は香川県で10月5日(土)に開催されます。香川の宮本光さんが挨拶をされました。会場は高松市のリーガホテルゼスト髙松です。

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(次回の大会を案内する香川の宮本さん)

講師は香川の笹本正樹さんへお願いすることに決まりました。笹本さんは香川大学名誉教授、四国新聞の詩の選を長い間やっておられるそうです。翌日は観光ですが、面白い歴史的な場所が見られそうです。

今回の理事会では、会長の任期の問題、詩人賞の選考委員の問題でかなり時間を費しました。一年交替という案もあり、そうすると事務局は毎年代わることになり、対外的に毎年案内をする面倒なことや事務処理に慣れないうちに交替するという問題も生まれます。事務局と理事長は岡山に固定したらどうかという案も出ました。会長問題については岡さん、長津さん、事務局などを中心に検討し次回に諮ることになりました。

会議は5時ごろおわり、新年の懇親会へ参加しました。家へ帰ったら22時過ぎでした。

次回理事会は7月6日(土)です。

H24 第12回中四国詩人会 岡山大会

充実した岡山大会と牛窓の旅     ー第12回中四国詩人会ー                        洲 浜 昌 三

(島根県詩人連合の会報に書いたものです。ここでは写真をつけて紹介します)

平成二十四年度の中四国詩人会大会は岡山市の「ピュアリティまきび」で10月13日に開催されました。岡山駅の改札口で、「中四国詩人会」の看板を持って立っておられた高田千尋さんたちの姿を見て驚くとともに、熱い思いが湧きました。
DSC04048                (蒼わたる実行委員長のあいさつ)
総会には来賓招待の山陽新聞編集局文化部長、毎日新聞岡山支局長、岡山県生活環境部長を含め約80名が出席。岡山からは50名近い参加者で、岡山の詩人の層の厚さと積極的な協力姿勢にいつものことながら圧倒されました。 実行委員長の蒼わたるさんをはじめ27名もの会員で実行委員会をつくり、万全を期して準備されたことが端々から覗える大会でした。
DSC04071       (まきび会館から岡山駅方面をパチリ。大きな建物が解体され整地中でした)

総会は山本衛会長の挨拶のあと、役員や決算、予算を承認し、中四国詩人賞表彰式が行われました。受賞詩集は河邊由紀恵さんの「桃の湯」。選考委員長の井上嘉明さんの評の一端を紹介します。  「独自性のある言語感覚で紡がれた世界に惹かれた。言葉はふくらみを持ち、しなやかで豊かな想像力をひそませ、芳しい匂いすらした」  河邊さんは倉敷市在住、4人の子育てが終わってカルチャーセンターに通い、詩を書きはじめたそうです。「クラゲのように透き通るようなしなやかさの中に、ほの暗い生がどこかで息づいている」感覚的な世界が浮かび上がってきます。
DSC04055                          (受賞詩集から詩を朗読する河邊さん)

自作詩朗読では各県から八人が朗読。島根からは久しぶりに閤田さんが参加し、存在感のある詩「星明かりの道」を朗読しました。  今年の講演は会員で岡山の岡隆夫さんで、「英米現代詩とわたしの詩論」と題して話されました。岡さんは岡山大学名誉教授で、ディキンスン研究の第一人者。今年一月に刊行された「岡隆夫全詩集」は第二十詩集になるというエネルギッシュな実作者でもあります。とても示唆に富む講演でした。特に印象に残ったことを二つだけ挙げてみます。  「リアリズムとモダニズムは日本にはない。いきなりポストモダニズムの波を受けた」  「詩の存立の主な要件ー第一、作品のキーワード(イメージでもいい)がクリエイティヴな想像力によって新たなものに変質しているか。第二、既存の歴史的文化的価値観に新たな理念。第三、前者に相応しい独自の詩型・リズムがあるか」  後半は対談で、相手は岡山の詩人・くにさだきみさん。詩集や評論集が二十冊を越えるというこれまた実績のある詩人。朗読での美事なエロキューションに感銘を受け、明晰で的確なやり取りに知的爽快さを覚えました。後で知れば80歳とか。
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(立石さんの語り「桃太郎」)

アトラクションは立石憲利さんの語りで、「桃太郎」。岡山民俗学会理事長で採集した民話が7000話以上。自ら方言も駆使して「語る」という役者でもあり、表現が巧みで惹きつけられました。後で聞くと、「桃太郎」は時代や地域により様々な要素が加わりそれぞれ違うそうです。  10年前、立石さんの民話を新聞で読み、それをヒントに石見銀山の庶民と重ねて「出口がない」という民話劇を創作し、大森で上演したことがあります。10年たってやっとお礼を言いました。  懇親会は約60名。重光はるみ大会事務長の司会ではじまり、チェロ演奏、高田千壽岡山詩人協会長の挨拶、歓談、最後は中桐美和子大会副実行委員長の閉会のことばまで、あっという間の時間でした。
DSC04079                                          (竹久夢二の生家の前に立つ島根の川辺さん)

翌日は貸し切りバスで竹久夢二郷土美術館、夢二の生家、正富汪洋詩碑、牛窓オリーブ園、牛窓神社を訪ね、牛窓の町を散策しました。
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大会副事務長・森崎昭生さんのガイドで初めて見る風景や名所を楽しみました。瀬戸内海を見下ろす眺望は心身を解放してくれました。  来年は香川県です。香川は会員7名で開催にも苦労が伴うと思いますが、宮本光さんは別れ際に、「ぜひ来てください。歓迎します」と力強い言葉を残して帰って行かれました。
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みなさん、おつかれさまでした。岡山のみなさんお世話になりました。

井上嘉明著 評論『鳥取の詩人たち その他』

鳥取のの詩人・井上嘉明さんが2012年7月に詩の評論集を出されました。258ページ、1500円、発行所は流氷群同人会(鳥取市生山54 井上方 0857-51-8459)。10月14日の山陰中央新報、読書蘭で書評を書きましたので紹介します。井上さんは詩誌「日本未来派」「菱」の同人、文芸同人誌「流氷群」編集同人、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、中四国詩人会に所属、現在は鳥取県現代詩人協会会長です。

 

井上嘉明著「鳥取の詩人たち その他」         隙間を埋める綿密な評伝  

この本は、著者が所属する詩誌「菱」、「日本未来派」や「鳥取文芸」「流氷群」「日本海新聞」などに五十年間にわたって執筆した詩人の評伝や詩人論、詩論などを一冊にまとめたものである。  多数の詩人や詩集が長短様々な評論で取り上げられ、詩人の未知の部分が明らかになり、生き様が浮かび上がってくる。  本は二章で構成され、第一章は「鳥取の詩人たち」で十七本の評論がある。冒頭は伊良子清白。「伊良子清白の岳父・森本歓一のこと」「清白の義母しまとその周辺」「清白と千代川」「清白終焉の地へ」など。

清白は詩集「孔雀船」で有名な詩人。明治十年鳥取市河原町で生まれ、生後母と死別、義祖母に預けられ、九歳のとき医者の父と大阪へ移り、京都医学校を卒業。その後は横浜、大阪、島根(浜田)、大分、台湾、三重県と漂白を余儀なくされた。著者は清白の家族関係や土地との関係を綿密に調べ、足跡をたどり、終焉地の大紀町を訪ねる。清白に関しては多くの著書があるが、欠落していた細部を埋める貴重な評論である。

つづいて「尾崎翠と高橋丈雄の周辺」「尾崎放哉と定型詩」。山下清詩集「白銀の大山」、清水亮詩集「軍歌時代」、田熊健、小寺雄造の詩人論。いずれも端正な筆運びで詩の特徴と詩人の拠って立つ基盤を浮き彫りにする。

第二章は二十本の評論や詩論から成る。「朔太郎と〈防火用水〉」「三好達治と〈馬〉」「金子光晴と〈水〉」、さらに中野重治、木原孝一、石垣りん、田中房太郎、西岡光秋、などの著名な詩人たちの面白いエピソードや著者との交遊などが伸び伸びと書かれ楽しい。

この章の最後には「戦後詩に出会うまで」「詩とカフカ」「あるがままの〈物〉」など著者自身の詩歴や詩論などが置かれている。どのように詩と向かい合ってきたか。十冊の詩集がある井上詩の核が垣間見える。

あちこちに書かれた貴重な評論をまとめて読めるのはありがたいことである。   (日本詩人クラブ会員 洲浜昌三)


2012年10月、中四国詩人会・岡山大会で、中四国詩人賞選考経過を発表する井上さん。受賞は岡山、河邊由紀恵さんの詩集『桃の湯』。とても深い読みでしかも的確な評価を端的に紹介されました。河邊さんの詩集についてはこのブログでも紹介しています。

岡山大会についてはそのうちこのブログで紹介します。