季刊 『高校演劇』214号紹介します

「高校演劇劇作研究会」は130人くらいの同人からなる季刊の高校演劇脚本誌です。全国で創作を手がける有力な高校演劇の顧問や like me  のようにモトコもなどが同人です。全国大会前には分厚い全国大会号が出て同人の創作脚本が掲載されます。今年(平成24年)は同人である島根の亀尾佳宏先生の『異伝 ヤマタノオロチ』も載るはずです。今までの高校演劇で例のない出雲神話を素材にした意欲的な作品です。楽しみです。

読みたい人はこの『高校演劇』を買って読むしか手がありません。定期購読は1年分で6000円。色々な脚本が掲載されるのでとても勉強になります。1冊は700円、全国大会号は1500円。送料は別です。

2月のある日、事務局長の柳本博さんからメールがあり、213号の読後感を書いてほしいとのこと。了承したものの、書棚から取り出してみればベテランの脚本が並んでいる。恐れ多かったけど何度も読んで感想を書きました。字数が少ないので十分意を尽くせないところもありましたが、メールで原稿を送りました。先日214号が届きました。この本を読む人は限られていますので、本のPRを兼ねて、写真などとともに紹介させて戴きます。

『『高校演劇』213号 読後感                                   洲浜 昌三

『無心駅』                           宮島 宏幸  
無人駅で三人の女学生ギャルが体を売って稼いだ金を計算している。会話も露骨。真面目な奈美を仲間に誘う。父との不和で投げやりになっていた奈美は誘惑に負け、男と関係する寸前に逃げてくる。ヴォランティァで駅を守っている老女が、むかし家が貧しく売春をしていたと語り奈美を慰める。改心したかに見えたが…。場の設定もいいし方言も生き劇の組み立てもいい。売春問題に突っ込んだ勇気も買いたい。だがあちこちで人物が作者に都合よく動かされている印象が残る。他人に売春の経験を語るには血を吐くような必然性を仕組まないと「激」が額縁の風景になる。独創的な切り口がほしい。


『ビミョー』                         若林 一男
   「一秒先は闇」。そんな舞台を創ってみたい。それは無理でも作者はそれに近づこうとしているかのようだ。そのためにはあらゆる方法で観客のイマジネーションを搔き立て掻き乱し揺さぶる。異化、変化、落差、笑いは最大の武器。行動を先行させ台詞は説明臭抜きで短く即物的。複眼どころかこの作者は超複眼。脚本を読んでいるだけでも面白い。作者が演出すれば更に面白い舞台になることは過去に見た劇で立証済み。不登校の娘が吉川レンタルのバイトで家族を演じ、担任に語る言葉や祖父の言葉には深い真理が覗く。十一の場面から成る劇だが、観客にバラバラの印象を残す可能性はある。インパクトのある一つの宇宙を舞台に現出するためには各ピースを貫く透明な太い棒が欲しい気がする。

『ソフトなんか大嫌い』        市村 益宏  
脚本だけでは特に面白いとは思わなかったが、舞台で元気な高校生が演じるのを見たら間違いなく楽しいだろう。力強い合唱が何度もある。打順紹介も歌形式。ソフトボールの試合場面もある。きびきびしたリアルタイムの動きやテンポのいい会話の交錯。ダイナミックな動と静。幽霊になった三人の昔のソフトボール部員がいつも出てきてちょっかいを出し昔の部のことを語り単調になる流れを止め劇に奥行き出す。淡い恋もある。演じる者も楽しいだろう。最後の顧問の台詞は劇を平板化したかもしれない。幽霊さんを生かして劇を立体化できなかったか。(言うのはいつも簡単だ)


『みんなでロミオとジュリエット』   淺田 太郎  
名作の枠を利用して創作するのは面白い試みだけど難しい。枠を越える肉盛りに力量がいる。この劇はよく健闘していると思う。モンタギュー家とキャビュレット家の対立を、富丘高校演劇部と聖キャビュレット高校演劇部の対立に置き換え、台詞も重要場面ではシェイクスピアの台詞を再現して面白おかしく劇を展開する。枠の中に巧みに両校演劇部の対立や人物を融合させている。意外なストリー展開も面白く楽しい。高校演劇とは何か。それがテーマだが、大会にこだわり過ぎたり審査をやり玉にあげるなどは面白いが通俗に流れる気がする。

 

4つの舞台写真は『高校演劇』のグラビアから紹介させていただきました。最近はこのようにカラー写真が掲載されるので舞台のイメージが具体化されていいですね。

ホームページもありますので検索してください。本を注文したり問い合わせをされる場合は次のFaxでどうぞ。03-3930-8477  高校演劇劇作研究会事務局 柳本博

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